GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 4
2019 AUTOBACS SUPER GT Round4 Chang SUPER GT RACE
会期:2019年6月29日~30日
場所:チャン・インターナショナル・サーキット( タイ )
天候:晴
観客:3万 900人(2日間)
予選:8位
決勝:12位
獲得ポイント:0P
シリーズ順位:11位(14.5P)
■FreePractice_QF1-2
2019年SUPER GTシーズンも折り返し点を迎えた第4戦が、6月29~30日にタイ・ブリーラムのチャン・インターナショナル・サーキットで開催された。
開幕から第3戦まで連続シングルフィニッシュを果たしているGOODSMILE RACING & Team UKYOの谷口信輝選手/片岡龍也選手は、タイヤ発動で不利な条件が多かった寒い時期のレースから一転。酷暑のなか4位をもぎ取った鈴鹿に続き、例年GSRチームとも相性の良いここ、亜熱帯のタイ・ラウンドから巻き返しを期す1戦に。
成績により29kgのウエイトハンデは背負うものの、マシンのBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)ウエイトは-5kg、燃料空燃比の規制もわずかに改善されるなど、性能調整もその意気込みをわずかに後押しする内容となった。
ピットには現地サポーター扮するレーシングミクコスプレイヤー達も集まり、東南アジアの地で初音ミクGTプロジェクトの人気とファンの”熱”が年々高まっているのを感じる。
現地時間土曜午前10時(日本時間:12時)からの公式練習、路面状況の改善を待ち、セッション開始から20分後にコースインした片岡選手は、ピットビルが一部停電に見舞われタイミングモニターが消えるアクシデントも発生するなか、暑さをものともせず精力的にショートランを繰り返していく。
途中、今季から使用するブレンボ製のブレーキローターなども交換し、タイヤ評価やセットアップ確認を進めると、最後のタイヤセットで1分33秒733のベストタイムを記録し8番手へ。ここまで19周を走破して谷口選手へとバトンタッチした。
乗り換えてすぐ、レースペース確認のため10周に満たないながらも連続周回をこなした谷口選手は、GT300クラス占有走行に向けピットへと戻り、タイヤを履き替え予選シミュレーションへ。アタックラップ2周目で1分33秒034へとタイムを上げ4番手をマーク。この最速周回をもって14周を走破したところで、34号車(Modulo KENWOOD NSX GT3)のコースオフによりセッションは赤旗終了となった。
この公式練習のタイムにより、鈴鹿に続き予選Q1を担当することになった谷口選手は、現地15時(日本時間:17時)からのセッションでいち早くコースイン。薄曇りで気温33度、路面温度40度と、灼熱のタイでは少し穏やかな数値のなか、いつもより5台少ない24台のコース上でいきなり1分33秒413を叩き出し、これがQ1ターゲットタイムに。
アタック2周目はわずかにタイムダウンし1分33秒6とすると、2周のクールダウンを挟んで再び1分33秒6を記録するもタイム更新はならず。それでも6番手で悠々Q1通過を果たした。
Q1では上位5台中4台がニッサンGT-R NISMO GT3という、圧倒的GT-R有利な状況の中、15時45分(日本時間:17時45分)の予選Q2は片岡選手にステアリングを託しての勝負。谷口選手同様1発目のアタックラップで32秒台突入の1分32秒767を記録すると、続くラップも1分32秒9と同じ32秒台ながら惜しくも更新はならず。
マザーシャシーの25号車(HOPPY 86 MC)が自身のコースレコードタイムを更新し、GT-R勢が躍動しホンダNSX GT3も上がってくる予選のなか、8番グリッドを獲得して、決勝での上位進出を狙うこととなった。
■Race
明けた日曜もタイ特有のスコールはなく、前日同様ドライ路面のままサーキットサファリからフリー走行、ウォームアップに臨み、片岡選手のドライブで1分34秒から35秒フラットのレースペースを確認。フリー走行では5番手、ウォームアップでは12番手としながらも、GSRチームは現地15時(日本時間:17時)からの決勝を見据えたセットアップの微調整を進めた。
ピットビル上部3階部分にグランドスタンドを設ける、ユニークなチャン・インターナショナル・サーキットの観客席には、日本国旗ととともに大きなGSRフラッグも揺れるなか、迎えた66ラップの決勝レースは気温32度、路面温度48度、湿度64%というタイらしい気候のなかでスタート。
今回もGSR安定のスターター片岡選手が前半を担当し、スタートタイヤ抽選でQ1使用のマーキングAのセットでグリッドへ。しかしオープニングラップは使用コンパウンドによるタイヤ発動条件、そしてミッドシップのトラクションなどで21号車(Hitotsuyama Audi R8 LMS)に先行を許すと、さらに翌周には33号車(エヴァRT初号機 X Works GT-R)にも前に出られ、10番手まで順位を落とす。
それでも忍耐強くタイヤを労わりつつ、3周目から1分35秒台をキレイに並べた片岡選手は、5番グリッドから後退してきた55号車(ARTA NSX GT3)を7周目に仕留めると、さらに勢いを増して21号車を追い、13周目にはターン3へのブレーキングで鮮やかにパッシング。グリッドポジションを回復して、タイヤへの万全なケアをしつつ前方を目指していく。
一時は4秒ほどあった7番手33号車GT-Rのテールに迫ったところで、6番手を走行中だった65号車(LEON PYRAMID AMG)がいち早くピットへと向かい、フロント2輪交換の奇策で34.1秒の制止時間でピットアウト。この間に33号車GT-Rをオーバーテイクし6番手にまで浮上した4号車 グッドスマイル 初音ミク AMG号は、ライバル陣営が続々とピットへ飛び込むのを尻目に、前が開けたスペースを利用してファーストスティントを長く取り、給油時間を短くすべく片岡選手が懸命の走りでロングスティントを進めていく。
すると33周目を過ぎ2番手にまで躍進したところでGT500クラスにアクシデントが発生し、NSX-GT同士3台が絡むマルチクラッシュが発生。この時点でトップだった7号車(D’station Vantage GT3)はピットクローズを嫌ってすぐさまドライバーチェンジへと向かっていく。
一方GSRチームは、ここまでの開催5年間でセーフティカー(SC)出動実績が一度もない事と、クラッシュ車輌が停車した場所が広いランオフエリアだったことなどから、ステイアウトを判断、しかし無情にもレースコントロールはSC導入をコールした。
これが勝負のアヤとなった。SC中は首位を走行する事になったGSRは、リスタート後のドライバー交代がルール上マストだったことから、大幅なポジションダウンが確定。41周目にピットロードへと飛び込んだ4号車は、谷口選手にチェンジすると同時にスプラッシュ的な短い給油のみでピットアウト。タイヤ無交換でロスタイムを最小限に留め、後半スティントでの浮上を期すことになった。
14番手でコース復帰した4号車初音ミク号と谷口選手は、直後の45周目に1分34秒464の決勝自己ベストをマーク。約35秒前方の61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)を追いかけ1分34~35秒のペースを披露するも、そのまま62周のレースを13位でチェッカーを受けた。レース後、9位フィニッシュの21号車がペナルティで降格となったことで、12位でタイの週末を終えることになった。
東京渋谷で開催された個人スポンサー向けのパブリックビューイング会場は満員御礼だったが、残念ながらタイから上位フィニッシュを披露することはできなかった。
鈴鹿同様にSCの判断が戦略を左右し、プラスとマイナスで両極端なレース結果となったが、同じく真夏の富士決戦。8月3~4日の第5戦では、500マイル(約800km)の長丁場を逆手に取り、GSRらしい逆襲のレースを披露してくれるに違いない。
■チーム関係者コメント
今シーズンここまでのレースでもそうでしたが、現状では十分に戦える強さが無いので、戦略で上位を狙うしかありませんでした。具体的には、比較的ロングに強いタイヤをチョイスし、ステイアウトしてオーバーカットを狙う作戦だったわけですが、我々にとっては悪いタイミングでセーフティーカーが入ってしまった事で、完全に勝負権を失ってしまいました。悔しいですが、今の我々はこういう戦い方しかできないというのが実情です。シーズン後半に向けて強さが欲しいですね。
公式練習走行から「勝てる」という感触はなく、我々ができることは少しでも多くのポイントを奪って帰りたいということだけでした。タイヤ無交換作戦を視野に入れて、レース展開次第で前に詰まってペースを上げられないようだとミニマムで入れよう、逆にペースが良く、前が空いてたら引っ張ろうと考えていました。実際ペースは良かったのMAXまで引っ張っろうと決めたところでセーフティカーが出てしまった。まだ残り25周ぐらいを残したまま勝負権を失くし、そのまま僕も交代して走りましたが、順位を挽回することはできず。あんなに遠くまでオシリを割りながら行ったのに、残念だなと。でもシーズンは残り4戦ありますので、まだまだ諦めずに頑張っていきたいなと思います。
週末を通じてクルマの調子自体は悪くなったのですが、スタートで少し失敗をしてポジション下げしまった後に、前方のクルマに少し引っ掛かってしまいました。その後、ペースが戻って3台を抜き返してからは、ペースも良かったので(担当スティントを)引っ張る作戦に切り替えました。GT500のアクシデントでARTAのNSXが止まっているのは見えましたが、特別セーフティカーが入るような状況には見えなかったので、そのまま頑張っていたら勝負権を失ってしまった。クルマの調子は悪くなかっただけに、作戦ミスというか。タイミングの図り方、バッドラック、という言い方もできると思います。それがすべてだったな、というレースでした。