GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 5
2019 AUTOBACS SUPER GT Round 5 FUJI GT 500mile RACE
会期:2019 年8月3日~4日
場所:富士スピードウェイ(静岡県)
天候:晴
観客:6万 600人(2 日間)
予選:9位
決勝:8位
獲得ポイント:4P
シリーズ順位:12位(18.5P)
■FreePractice_QF1-2
2019年のSUPER GTシーズンも後半戦に突入し、真夏の新耐久決戦となる富士スピードウェイでの500mile RACEが8月2~3日に開催された。
チームは、第4戦タイが終了した後、谷口信輝選手/片岡龍也選手と共にGT3車両にとって世界最高峰の1戦、トタル・スパ24時間レースに2017年以来となる再挑戦を果たした。今回はメルセデス・カスタマーレーシングのトップチーム、ブラックファルコンとの共闘体制で、マシンデザインは『Fate』の誕生15周年を記念し、TYPE-MOON RACINGとコラボレーションした。またブラックファルコンの他の2台はそれぞれ『プロメア』、『初音ミク』のカラーリングを採用し、”ジャパン・アートカー”3台体制でのエントリーとなった。結果は途中リタイヤと厳しいものとなったが、厳しいコンペティションレベルのなかで貴重な実戦経験を積み重ねてきた。
そんな刺激を受けて臨んだ灼熱のラウンド5。
マシンは、第2戦以来の高速サーキット用BoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)が適用された。これにより、+55kgの調整ウェイトを含む車両重量1340kgとクラス最重量マシンながら、吸気リストリクター経が34.5mmから36mmへと拡大されて、中間加速が若干改善された。ウェイトハンデは前戦に引続き29kg搭載。
8時50分開始の公式練習を、今シーズン初となる谷口選手のドライブで走行を始めたチームは、持ち込んだ3種類のタイヤコンパウンド評価を手早く済ませると、ダウンフォースレベルの確認やセットアップの微調整を進め、15周目の周回で1分38秒591のベストタイムをマーク。
さらにセッション中盤の9時40分を過ぎて片岡選手に交代すると、決勝を見据えたロングランでも1分40秒台前後の安定したペースを刻む。GT300クラス専有走行でも引き続き片岡選手が予選シミュレーションをこなし、異なるプランを試しながら1分38秒930を記録した。
「スパで本当にいい刺激をもらったんでね。今回は気合バリバリ」と語る谷口選手が、柔らかめのタイヤで記録したタイムにより、最終的に4位のポジションを得て公式練習を終えた。
個人スポンサーも多数乗り込んだサーキットサファリを経て、14時50分に路面温度40度越えのコンディションで始まった公式予選では、3戦連続で谷口選手がQ1を担当。
セッション開始後早々とコースへ飛び出していった4号車は、連続アタックラップで1分37秒984から636へとタイムを縮め、タイムボードの最上位に進出。しかし直後には好調ニッサンGT-R NISMO GT3勢の360号車(RUNUP RIVAUX GT-R)、56号車(リアライズ 日産自動車大学校 GT-R)が次々とタイムを更新し、初音ミク号は3番手にダウンした。ピットからは「続けてアタックしてOK」の無線が入るも、タイヤ温存を優先した谷口選手はピットへ戻り、そのまま3番手でQ1突破となった。
15時35分、その勢いを継いでQ2の勝負へと向かった片岡選手。予想より大きく路面温度が下がったことも影響してか、全体的にタイムアップの幅が少ない。片岡選手はウォームアップ2周を経てすぐさま1分37秒848をマーク。「Aコーナーでわずかにロスをした」と言いながらも、Q1対比コンマ2差で抑えて9番グリッドを獲得し、500マイル(約800km)の決勝に挑むこととなった。
■Race
この日も前日と変わらず猛暑が続き、朝から気温30度越えの真夏日に。正午のウォームアップ時点で路面温度は60度に達しようかという過酷なコンディションの中、定刻より10分遅れの13時40分に決勝500マイルのパレードラップがスタートした。
今回の決勝はドライバー交代を伴う4回のピットインが義務付けられており、都合5スティントでの勝負となる。今回も、これまで数々のオープニングバトルを制してきた片岡選手をスターターにレースに入ると、まずは8番グリッドの34号車(Modulo KENWOOD NSX GT3)を仕留めてコントロールラインを通過していく。
しかし性能調整があったとはいえ、やはりその後はメルセデスAMG GT3の絶対的な最高速不足が露呈し、決勝最高速269.327km/hの4号車に対し、270km/h台中盤を記録する7号車(D’station Vantage GT3)や55号車(ARTA NSX GT3)にクラス違いのようなスピードでオーバーテイクされていく。片岡選手は23周目に最初のルーティンピットへと飛び込んだ。
バトンを受けた谷口選手は、27周目にこの時点の自己ベストとなる1分40秒328を記録すると、続けて40秒043、40秒054とタイムをそろえ、ルーティンピットを迎えたライバルたちを退けみるみるとポジションアップ。
「やっぱり昨日の走り出しから自分なりに好調だな、って。コース上でいっぱい抜けた」との言葉どおり、40周目にグリッドポジションの9番手まで回復すると、続く周回には55号車を抜き去り、上位勢のピットも重なり6番手、5番手、4番手とさらに上位進出を果たしていく。
そしてスティント終盤を迎えた50周目には、コカコーラ・コーナー(Aコーナー)でサイド・バイ・サイドに持ち込んだ7号車を鮮やかにオーバーテイク。優勝戦線に加わる3番手まで上げてピットへと帰って来た。
55周目に自身のセカンドスティントへと向かっていった片岡選手は、ふたりのファーストスティントで使用したソフトではなく、路面とのマッチングを考慮してハードをチョイスしてコースイン。そのままピット作業で先行された7号車の背後でじりじりとポジションを回復し、100Rで発生したGT500クラスの単独クラッシュによりセーフティカー(SC)が導入されて以降も追撃の手を緩めることなく前を追う。88周目に今度はストレートエンドのTGRコーナー(1コーナー)で7号車をかわして2番手にまで浮上、久しぶりに勝利の手応えを残して、97周目に第4スティントの谷口選手にバトンをつないでいく。
するとその直後、ピットロードエントリーのコース側でGT500車両が炎上するトラブルが発生し、この日2度目のSCピリオドに。この時点でコース復帰後10番手だった4号車は、リスタート直後の105周目に1分39秒888と決勝自己ベストを更新する怒涛のラップを記録。
しかし2度目のSCによって逸した上位進出の希望は遠のき、前を行く88号車(マネパ ランボルギーニ GT3)、61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)のストレートスピードに行く手を阻まれたことから、チームは120周時点でアンダーカットを決断。
終盤ロングスティントを見据え、引き続き耐久性の高いハードタイヤをチョイスして16番手で復帰した片岡選手は、1分40秒台の粘り強い走りでジリジリとポジションを回復。しかし17周後にライバル勢がコース復帰したタイミングには路面温度も40度を切り、先行する2台をかわすことはできず。
さらに終盤に向けて気温が落ち込む中、必死に喰らいついていく片岡選手は後方から迫る11号車(GAINER TANAX GT-R)を巧みに抑え込む老獪なディフェンスを披露。TGRコーナーやダンロップ・コーナー(Bコーナー)でラインを入れ替えてのバトルを展開すると、その11号車と同じダンロップタイヤを装着する前方の61号車に近づき、161周目の高速Aコーナーでアウトから並びかけBRZをパッシング。
レース最大延長時間となる18時40分に残りあと3分と迫ったところで華麗なオーバーテイクシーンを演じ、162周に到達した決勝は8位でフィニッシュラインをくぐることとなった。
1周のアウトインでドライバー交代義務のみを消化し、4スティントで勝負した優勝マシンや、BoPでウエイトを30kg軽減され3スティントタイヤ無交換の2位表彰台獲得マザーシャシー勢など、そうした”奇策”に対し、またもSCに翻弄された感のあるGSR。続く第6戦オートポリスは再び運動性能に優れるマザーシャシーが優位に立つ予測もあるが、その直前開催の鈴鹿10h(第48回サマーエンデュランス『BHオークション SMBC 鈴鹿10時間耐久レース』)で弾みをつけて、シーズン後半戦の巻き返しに挑みたい。
■チーム関係者コメント
違う判断はあったと思いますが、自分たちのルーティン部分にミスはなかったので、その点で満足はしています。ただ久しぶりに勝負権がありそうな雰囲気だったので、表彰台ぐらいは行きたいな、と思ってました。義務だけ消化する4スティントも検討しましたが、3スティント無交換、そこらへんは今の僕らにはできないことだし、唯一最後のピットをどうすべきだったか、という反省はあります。あの時点でもう少し冷静に路気温の変化が見れていれば、アンダーカットを狙わずに引っ張った上で柔らかめのタイヤを、という元の戦略が活きたかもしれないですね。ただあそこでああいう(勝ちにいけそうな)雰囲気があると、作戦も欲しがっちゃう(笑)。そこが我々の弱点です。
なんだか狐につままれたようなレースでした。ペースも悪くなかったし、チームもメカニックもミスはないし、セーフティカーで仕方なしに得しているクルマはあったけれど、僕らは損もしないし得もしなかった。最後はアンダーカットに行ったらオーバーカットされ、動くと裏目に出る、非常に寝覚めが悪くなりそうな、後味の悪い、歯切れの悪い週末でした。ドライバーふたりはきっちり走ってくれて、とくに谷口なんて今は”スパかぶれ”してるから、ゾーンに入ってて異常に速い(笑)。本当に見せ場はあったけど、結果がついてこないとレースは意味がないし、結果が全てだから。その意味でも、次のラウンドに行く前に、やはり今回の敗因をもう少し分析しないとダメですね。
スパでは本当に速い奴らと走ってきて、いい意味で刺激をいっぱいもらってきたんで、僕の心はちょっと若返りました。最近はバトルも含めて少し小綺麗に走ろうとしすぎてたな、と気づいて。この週末は予選も良かったし、決勝も良かったし、いっぱい抜いたし、上位を視野に入れてたんですが、本当にセーフティカーが裏目に出る。最後の片岡の(8位を奪った)オーバーテイクが唯一の盛り上がりポイントで、グッと盛り上がりましたけど、今回僕らは速さがあったのに、結局この順位かと。レースはコース上だけじゃないんでね。選手権で直接のライバルたちが沈んだチャンスのレースだったから「今回勝たないでいつ勝つんだよ」ってぐらいチャンスだったんだけど……。
僕らが思ってた以上に、ライバルがタイヤ2本交換や無交換を選択し、セーフティカーでのタイミングも影響し、表彰台に乗れるようなレースをしてるつもりだったんですけど、結果的には8位。ほぼノーミスでレースを運んだのに、自分たちの道具では性能調整も含め勝負が難しいことがはっきりしましたね。今日は僕のスティントだけで考えても結構乗った気がするんですが(107/162周を担当)、なんだか疲れた割には残念な結果に終わってしまいました。狙っていた大量得点も取れなかったので、終盤のバトルも正直面白いものではなかったですね。残りは少なくなってきましたが、とりあえずまずは1勝。上が狙えるような感触のあるレースをしたいです。