GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 7
2019 AUTOBACS SUPER GT Round 6 AUTOPOLIS GT 300km RACE
会期:2019 年9月7日~8日
場所:AUTOPOLIS(大分県)
天候:晴れ/雨
観客: 27,310 人(2 日間)
予選:6位
決勝:4位
獲得ポイント:8P
シリーズ順位:7位(26.5P)
<Sat.>
■FreePractice_QF1-2/現状1626w
2019年のSUPER GTシーズンもいよいよ終盤戦に突入。ここまでマシンの競争力や性能調整などで苦しい戦いが続くGOODSMILE RACING & Team UKYOは、谷口信輝選手/片岡龍也選手ともに挽回を期して九州を代表するサーキット、2019年第6戦オートポリスに乗り込んできた。
昨季はシリーズ全8戦のうち天王山となる第7戦に設定され、ウエイトハンデ半減のラウンドとして開催された大分県日田市のサーキットは、年間の走行機会も少なく例年タイヤへの攻撃性が高い路面として知られる。事前にここで開催されたテストでも「セッション開始、走り始めの1時間はまったくラバーインが進まなかった」(谷口選手)というほどタイヤ負荷の高い、厳しいトラックとなる。
昨季の戦いでは逆転タイトルに向け「ギャンブルに出た」ウルトラソフトタイヤを投入も、決勝では裏目に出る受難のレースを経験していたチームは、今回、通常レベルのコンパウンドでグリップアップを狙ったソフト側、ハード側、2種類のタイヤを持ち込んだ。
9月7日土曜、午前8時50分開始の公式練習では、その路面コンディション改善を狙って10分ほどピットで待機してから、4号車グッドスマイル 初音ミク AMGはいつもどおり片岡選手のドライブでコースイン。しかし、気温24度のドライながら雲の多い空模様も相まって、予想どおりラバーインが進まないままセッションが進んで行く展開に。
「結果としてタイヤの磨耗も激しく、路面状況が改善したときにタイムが良くなるかどうか、手応えとして掴みづらいフリー走行だった」と振り返った片岡選手だが、それでも担当終盤に1分46秒139のベストタイムを記録し、谷口選手にバトンタッチ。37kgのウエイトハンデを搭載するメルセデスAMG GT3で、そのままレースペースの確認とGT300クラス占有走行でのアタックシミュレーションをこなし、クラス8位でセッションを終えた。
午前を通じて26度から30度前後へと上昇していた路面温度は、午後14時30分開始の予選Q1時点で32度前後まで上がり、Q1アタッカーに選出された片岡選手はハード目をチョイスしてコースイン。チームとは「上手くハマれば44秒台には入れられる」と想定し、2回アタックの計画で挑むと、最初の計測周で1分44秒934といきなりの好タイムをマークする。さらなるタイムアップを狙った2度目のアタックでは、他車に引っ掛かり「Q1通過確定なら」とクールダウンラップに切り替えピットへ。実はそのベストタイムの計測周も「他のクルマに阻まれていて、戻ってきて確認したら『それがなければトップタイム?』という数字(コンマ1秒差)だったので、余計に悔しくて……」(片岡選手)というほどのラップを刻んでいた。
予選カットラインの16位に対し、ゆうゆう4番手通過で臨んだQ2では、満を持しての谷口選手が登場。「気合いを入れてQ2に臨んだんですが、上手く曲げれず俺の思うタイムを出せず。僕的にはチームに『すいません』って感じです」と反省の弁を述べながらも、タイムは1分45秒378で6番手と決して悪くなく、さらには公式練習で「履いていない方のコンパウンドで、初めて履いた柔らかい側」だったことも考慮すると、見事な3列目確保と言えた。
この予選ではコースレコードホルダーの25号車(HOPPY 86 MC)と、52号車(埼玉トヨペットGB マークX MC)のマザーシャシー(MC)勢がフロントロウを独占し、下馬評どおり軽さと運動性能を武器とするMCに大きなアドバンテージがあることがはっきりしたが、予報では決勝中に『雨』と出ていたことや、予選Q1、Q2ともに各陣営ともアタックの切り上げが早く、ライバル陣営のダンロップ、ブリヂストンともに「どのメーカーもタイヤが厳しく、硬めを選択したのではないか」との想定を持ちながら、翌日の決勝へ臨むことになった。
<Sun.>
■Race/現状2243w
迎えた日曜決勝日は、正午のウォームアップ走行を経て14時30分の決勝パレードラップ開始時まで晴れ間が出て、ドライ路面でのスタートに。
さらに予選結果でGSRの目の前、5番グリッドにいるはずだった33号車(エヴァRT初号機 X Works GT-R)が”予選中の妨害行為”により2グリッド降格のペナルティを受け、65周で争われる決勝は5番手からのレースとなった。
ローリングスタートからのサバイバルに絶対の自信を持つ片岡選手は、「ウォームアップ走行から意外とタイヤが大丈夫なことは確認できたし、自信があった」との言葉どおり、オープニングラップで7号車(D’station Vantage GT3)を抜き去ると、いきなり出動のセーフティカー(SC)先導中には61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)がトラブルで戦列を去る好機もあり3番手へ。
リスタート以降もショータイムは続き、7周目には1分47秒091のベストタイムを刻んで前を追うと、1コーナーから3コーナーへかけての前半区間、そして上り複合コーナーからファイナルコーナースタンドへと、誰よりもコンパクトなラインで旋回姿勢を描き、12周目には25号車を、続く17周目には52号車を仕留めて、堂々の首位浮上を果たす。
しかしここから予報どおりの天候がレースを翻弄し始め、1コーナー付近を中心にコース上をシャワーが濡らしていく。各陣営ともスリックからウエットタイヤへの交換時期を見定めるべく、なるべくルーティンピットを引き伸ばしたい思惑があるも、20周目、27周目と立て続けにMC勢がピットへと向かい、52号車、25号車それぞれ4輪、リヤ2輪を”スリック”へと交換。これで戦前の「タイヤ無交換予想」も覆り、俄然4号車グッドスマイル 初音ミク AMGに勝利の光が差し込んでくる。
その後はセクター3にもまとまった雨が降り、路面コンディションがめまぐるしく変化する中、片岡選手は安定したドライビングを披露し、後方から猛然と迫る55号車(ARTA NSX GT3)もがっちりと抑えてトップランを堅守。するとここで運命の分かれ道が訪れる。
32周目、コース上にストップした87号車(T-DASH ランボルギーニGT3)や22号車(アールキューズ AMG GT3)のスピンでこの日2度目のSCが導入されると、GSR陣営は「入らない」(片岡選手)ことを選択。今後のさらなる天候変化や首位走行中のアドバンテージも考慮してステイアウトすると、38周目のリスタートで悲劇が……。
「セーフティカーで一旦ペースが落ちてからは、タイヤの温度が復活することがなくて。今回選択してるタイヤが一度冷えちゃうと、濡れたタイルにさらにローションを撒いたくらい滑る感じで、もうどうにもならなくて……」と、最終セクターでは後続を巻き込んだ大渋滞に。
40周目に「もうスリックでは無理」と判断し、たまらずピットへと飛び込んだ4号車は、ウエットタイヤを装着した谷口選手がコースイン。この時点で12番手にまでポジションを落とす、苦しい展開となる。
しかし、ここでもまだ天は見放さず、1コーナーで52号車がスピンを喫し3度目のSCに。ホームストレート上でのリグループを経て、前を行くマシンとのタイム差が縮まる状況になると、お膳立てを整えられた谷口選手が真骨頂を見せる。
「ドライ、ウェットの両タイヤが入り乱れててもうグチャグチャでしたが、そこで3~4台は仕留めた」と、リスタートの一撃で視界が開けると、まだウエットの路面で勢いをキープした65号車(LEON PYRAMID AMG)が迫り、一旦は前に出られてしまう。
「でも『思ったよりは離れていかないな』と。1周コンマちょっとずつ程度」と、ライバルとの戦力差を見極めると、コース上の水量が減ってきたドライアップの後半戦で「なんせこのレースの前々週は(ワンメイクタイヤを使用した鈴鹿10hで)さらにズルズルの状況で鈴鹿をずっと走ってたんで、苦しい条件はお手の物」と、10号車、65号車を立て続けにパスしていく。
ペナルティなどでの先行車の脱落にも助けられ残り5周で5番手に上がると、その後方から1台、ダンロップのスリックタイヤを装着するギャンブルに賭けた60号車(SYNTIUM LMcorsa RC F GT3)は、参戦100戦を迎えた”グレイテッド・ドライバー”吉本大樹選手が、ボロボロのウエットタイヤで苦戦する集団をラップあたり5秒近く速いタイムで駆逐し、トップ10圏外から一気に首位へと、まばゆいばかりの光を放ちながら駆け抜けていき、そのまま劇的な逆転勝利。
レースは残り2周。この60号車の大博打で6番手へと後退した4号車だったが、スライドコントロールの神様は前方で苦しむBSタイヤ勢、55号車を60周目、96号車(K-tunes RC F GT3)をなんとファイナルラップでオーバーテイクし、GT3のブリヂストン勢を仕留め、ドライバーの腕で4位のポジションを勝ち獲り62周のチェッカーをくぐった。
ドライ、ウエットともにコース上では最速。そんなレースを戦いながら、最終リザルトは4位と改めてレースの厳しさと難しさを体感したGSRチーム。次戦SUGOに向けては搭載ウエイトも半減され26.5kgとなるだけに、ランキング7位からの逆襲を期して、速くて強い、そんな両ドライバーの魅せ場盛りだくさんのレースを期待したい。
■チーム関係者コメント
前半の片岡はとてもよくハマって素晴らしかったですね。タイヤも思ったより保ったし、他のチームに比べて適切なレンジを選べていた。皆さんがピックアップとかグレイニングを恐れてた中、僕らは無事に攻略できて戦える状態にあったんで、気持ちよく走れてたと思います。だからこそだと思うんですけど、ここ大分の難しさ……今回は逆に、30ラップまで引っ張れたことが問題でしたよね。最初のSCでドライでもウエットでも入るべきだったんです。これはチームの弱みがちょっと出ちゃったかな。後半は、ああいうシチュエーションの谷口ですね。ツラいときの強さは特筆モノです。次に向けて、今の状況では大量得点以外は狙えない状況ですし、ギャンブルするしかないですね。
正直「なんも言えねぇ」です。前半の片岡はスタートから素晴らしくて、たくさん抜いてきてくれて。あのまま雨が降らずにチギってれば絶対勝ってたと思うけど、微妙な線で判断がちょっと遅れました。60号車ダンロップのスリックはあの雨の中でも走れてるし、僕らはウエットでも速かったけど、あのふたりがあれだけ速く走っても勝てない、ってのはほんとツイてないし、いずれにしても2位かな。天候を考えると引っ張らざるを得ないし、本当はそのあともスリックでいかなきゃいけないけど……すべての流れが悪かった。谷口はほんとああいう状況が上手いから、彼ぐらいしかあのペースでは走れないと思うし素晴らしかったけど、それでも勝てないからね。本当に、レースは大変です。
セーフティカーに翻弄され、12位という残念なポジションで僕の順番が来ましたが、とりあえず僕にできることは全力で走ることだけ。前半、片岡のレース見てて、頑張って、いい仕事していて、こちらも「うおお」って燃える状態だったのに、前にスリック勢がいたせいでリスタートで間隔が開いて「誰もいな~い」状態。正直、何がグッドチョイスだったのかは非常に難しいレースだった。いいタイミングで入ったとして、そこでウエットを履いてたら博打をしたスリックに勝ててない。周りのトラブルで運もあり、1位から4位に落ちた4位じゃなくて、1回沈んで(笑)上がったから、気持ち的には少し「俺たち、やったったぞ!」ってのはありますが、今日は吉本のためのレースでしたね。
結果からすると「なんだろう」って感じですが、レース自体はスタートから明らかに勝てる可能性を存分に感じながら走ってました。ただ途中の雨、ウエットに換えるタイミング、入るタイミング、それともスリックにするのか……あらゆる要素があって、結果的には「正直に言って何をどうすれば良かったのか分からない」というのが本音。後半の谷口さんも速かったし、ドライでもウエットでもどんな状況でも、コース上では誰よりも速く走ってたはず。なのに4位にしかなれないってのは「クソっ!」としか言いようがない。1回目のSC明けはベストが出ましたし、クルマは調子良かったですよね。だから、クルマの調子が良くても、勝つか勝たないかはまた別の問題だ、ってことですね。