GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 2
2021 AUTOBACS SUPER GT Round2 たかのこのホテル FUJI GT 500km RACE
会期:2021年05月03日~04日
場所:富士スピードウェイ(静岡県)
観客:発表なし
予選:11位
決勝:8位
獲得ポイント:3P
シリーズ順位:13位(3P)
【5/3(月)】公式練習、ノックアウト予選
天候:曇り
コース:ドライ
気温/路面温度 Q1開始16℃/24℃、Q2開始17℃/29℃、Q2終了16℃/28℃
2021年のSUPER GT第2戦は、2年ぶりの開催となる500kmレースが富士スピードウェイで行われた。開幕戦岡山では苦戦を強いられたGOODSMILE RACING & TeamUKYOの谷口信輝選手と片岡龍也選手だが、長丁場のレースにめっぽう強い安定感抜群のコンビだけに、今シーズン唯一の長距離レースでの好成績が期待された。
今大会のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)は、昨シーズンと同様に高速サーキットである富士スピードウェイに合わせて緩められており、リストリクター径が通常34.5mmのところ、36mmの物を使用する。これに加えてセッティングの見直しによって、3月に同サーキットで行われた公式テストでは最高速度に大幅な改善が見られたこともあり、チームとしては今回のレースを浮上のきっかけとしたいところだ。
土曜日午前の公式練習は、まず谷口選手がステアリングを握りコースへ。富士山の山肌が美しく見通せる快晴で、気温16度、路面温度22度のコンディションの中、持ち込んだセッティングとタイヤの確認を進めていった。
序盤は他車のトラブルによる赤旗中断を挟みながらショートランを繰り返した。谷口選手は、20周目に1分37秒636の自己ベストを記録。この時点でクラス16番手とし、22周の走行を終えて午前10時を回ったところで片岡選手へとマシンを託した。
片岡選手も、まずはショートランで車両のフィーリングを確かめた後、決勝レースのペース確認をすべくロングランを行った。途中、今大会より採用されたFCY(フルコースイエロー)の掲示を挟んで、そのまま10分間のGT300クラス占有走行まで連続走行を続けた。タイムは決勝を想定した1分38秒台前半のペースを刻み、18周の走行を終えた。
公式練習全体では、前半の谷口選手のベストタイムにより18番手となった。
公式練習でのフィーリングを踏まえ、さらにセッティングを変更し、続いて行われたFCYテストを走行した。ステアリングを握った片岡選手が良いフィーリングを得ていた為、当初の予定とは異なりそのまま予選Q1でのアタックを担当することとなった。
今シーズンの予選も組分け方式が採用されており、全29台のマシンが前戦までのシリーズランキングを元に振分られ、4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは予選Q1をB組での出走となった。
午後2時30分、予選Q1のA組。路気温ともに公式練習開始時点からほぼ横ばいの気温16度、路面温度24度というコンディション。
A組セッション終了後8分間のインターバルを挟み、午後2時48分、B組セッション開始。コースオープンと同時にコースへ飛び出していった片岡選手は、まずはウィービングを繰り返し、タイヤへの熱入れを進める。そして計測4周目で1分39秒796を記録して10番手に。続く周回で1分37秒067を記録しその時点で6番手に浮上した。予選Q1残り時間1分を切り、カットラインの8位を超えるべくライバル勢も次々とタイムを更新していった。
片岡選手もさらにタイムアップを図りアタックを続けるが、続く周回ではグリップのピークが過ぎてしまいタイム更新はならず。残るライバル勢の動向次第ではQ1落ちが危ぶまれたが、なんとかカットラインギリギリの8番手に留まり、前戦の予選Q1落ちの雪辱を果たすことができた。
片岡選手からバトンを繋がれた予選Q2担当の谷口選手も、開始と共にコースに飛び込んでタイヤへの熱入れを始めた。最初の計測で1分37秒120のタイムを刻み11番手。今回もチェッカーギリギリまでライバルたちのタイムアップが見込まれるため、谷口選手もアタックを続けた。チェッカーラップでもタイムを更新して1分36秒795と、この日の4号車自己最速タイムをマークした。しかしポジションは変わらず、翌日の決勝は11番グリッドから巻き返しを狙う状況となった。
【5/4(火)】決勝
天候:晴れ
コース:ドライ
気温/路面温度 スタート時:21度/35度>中盤:20度/28度>ゴール:16度/23度
全国的には新型コロナウイルス(COVID-19)の猛威が続き、緊急事態宣言が発令される地域があるなか、開幕戦の岡山と同様に観客を入れてのレースが実現した。前日に引き続き快晴に恵まれ、絶好の観戦日和となった富士スピードウェイ。人数制限いっぱいの観客が見守る中、決勝前最後のウォームアップ走行が始まる。
このセッションを担当したのはいつも通りスタート担当の片岡選手。6周目に1分38秒502のベストタイムを記録した。
今大会の決勝では2度のドライバー交代を含むピット作業が義務付けられている。その為ここでドライバー交代の練習を兼ねて谷口選手にチェンジし、チームとして万全のシミュレーションを実施した。
前日の結果や事前の公式テストの結果から、「レースラップはある程度の自信があった(安藝貴範代表)」GSRチームは、セーフティカー(SC)出動の混乱やコース上での混雑を嫌って、ファーストスティントを短く取る作戦を採用。コース上でのラップタイムを優先して出来るだけ走りやすい場所を狙う”裏へ裏へ”の戦略を採った。
午後2時30分、気温21度、路面温度35度と、前日よりも暑くなったコンディションのなか、2周のフォーメーションラップが始まった。シグナルグリーンと共に1コーナーへと向かった片岡選手と4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは、そのままポジションを守ってオープニングラップを終えた。
3周目、GT500車両のトラブルで早速セーフティーカー(SC)が導入された。7周目にリスタートすると前を行く2号車(muta Racing Lotus MC)がピットへと向かったことで、ひとまずトップ10圏内に入っていった。
15周目、5号車(マッハ車検 GTNET MC86 マッハ号)がピットインをした為9番手、17周目に31号車(TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT)もピットインして8番手までポジションアップした。
4号車も18周目にピットへ向かう。チームは、このピットインではタイヤ交換せず、給油とドライバーチェンジのみで、4号車をコースへと送り出した。
バトンを受けた谷口選手は「ウォームアップ走行から片岡が『良さげな雰囲気』だとは言っていたけど、無交換で満タンにしてコースインしたアウトラップから、さほど良い雰囲気じゃないわけですよ。曲がらないし、立ち上がりで滑るし……」とこぼしながらも、ここから40周近いミドルスティントを走破。
28番手でのコース復帰から、ライバル勢がルーティンピットへ向かうのを横目にジリジリとポジションを回復していった。前を行く5号車や、後ろを走る2号車など、車両の圧倒的な軽さで優位に立つマザーシャシー勢と遜色ないレースペースを維持していった。
その後、28周目GT500車両にストレート上でタイヤが外れるトラブルが発生。これにより今大会導入開始のFCYが、決勝レースで初めて掲示された。全車一斉に80km/hに減速し、ギャップは変わらないままコース上に留まり周回を重ねる。
31周目にFCYが解除されレースが再開されると、追い上げてきた65号車(LEON PYRAMID AMG)とのバトルとなった。43周目、コース上の落下物回収の為、再びFCYが導入。解除後も65号車とのバトルは続き、谷口選手は巧みなライン取りでポジションをキープしていたが、しかし51周目、ついに65号車とその後ろにいた2号車に立て続けにオーバーテイクを許してしまい、11番手までポジションを下げてしまった。
FCYが入ったことでタイヤの温度が一旦下がってしまった上に、50周を過ぎたころには路面温度も27度へと下がるなどコンディション変化も大きい状況で、それでも谷口選手は安定したラップタイムを記録し、精度の高いドライビングを続けていった。
59周目、2度目のピットイン。チームは、タイヤの状況次第では左側2輪交換を選択するつもりであったが、ピットインしたマシンのタイヤでは残り周回を戦えないと判断し、4輪交換を選択した。フルサービスを受けた4号車のステアリングは再び片岡選手に預けられ、最後のロングスティントへと向かっていった。
徐々に気温が下がっていくコンディションと新品タイヤがマッチしたこともあり、時折1分38秒台を記録しながら前を追った4号車と片岡選手は、70周目には18号車(UPGARAGE NSX GT3)をオーバーテイク。74周目には360号車(RUNUP RIVAUX GT-R)も仕留めて、再びトップ10圏内に。
さらに、この日3度目のFCYを挟んだ94周目から、片岡選手は1分38秒340、1分38秒195、そして決勝自己ベストの1分38秒129を記録してラストスパートを掛けた。
すると上位を走っていた52号車(埼玉トヨペットGB GR Supra GT)と11号車(GAINER TANAX GT-R)がフィニッシュを目前にしてトラブルで脱落し、最終的にグッドスマイル 初音ミク AMGは8位でチェッカーフラッグを受け、今季初のポイント獲得となった。
次のレースは鈴鹿のはずだったが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、無期限延期が決まった。
次のレースは初音ミクGTプロジェクトにとって記念すべきSUPER GT参戦100戦目。チームでも盛り上げるべく準備を進めて来たが、ブレーキをかけられてしまった。
次戦のレースがはっきりしない状況ではあるが、記念すべきレースに好成績を収め華を添えたい。
■チーム関係者コメント
前回よりはずいぶん、セッティングの詰め方など上手く出来たとは思うんですが、まだ攻撃的に詰められるところが残ってるなぁ、と思ってます。給油のタイミングや、FCYの(速度制限の)セッティングも、まだ攻める余地があると思うんですよ。
でもそれら全てを攻め切れたとしてもトータルでのゲインは良くて20~30秒程度で、それでは上位陣には届かない。速いJAF勢やライバルタイヤに対して、もっとチャレンジングなことをしないといけない。
我々が速さを持ってるのであれば王道のプランでも良いですが、速さが足りなくて相手が圧倒的に速い今は何をすべきか。次の鈴鹿は(※)では高負荷でハイダウンフォースですけど、タイヤには優しい。もっとリスクを取り、タイヤ選択とセッティングを反射神経で合わせていかなきゃいけないですね。
みんな同じ気持ちだと思うけれど、開幕よりは良かったかな。でもまだ修正すべき点も一杯あって、そこを詰められないと残念だけど本当の意味ではレースに参加できないなってところですね。今はまだ上位勢が速いから、みんながウエイトを積んだぐらいのところで、結果が出せる位置にいないといけない。
予選もQ1を通るか通らないかのギリギリラインで、今回はたまたまた運が良かっただけだから、それじゃ全然ダメなんだよね。スープラやBRZのJAF勢や、ブリヂストンは依然として速い。
次の鈴鹿(※)はタイヤ選びが難しいし、ペースが良いのを狙って硬いゴムで安定を求めるか、ソフト系で攻めるか。また悩みどころです。
今回はちゃんとレースができた感じはありますよね。もちろん上位陣には完全に千切られてますけど、一応「外車勢GT3」のなかでは頑張った。ブリヂストン、GT-R、BRZ、スープラ。この「4つのカード」のどれも持ってないチームとしては、ね。我々のクルマはタレが少なかっただけで、1発があるわけじゃない。それで予選11位からポイント圏内まで、ちょっとではあるけど順位を上げられた。他車のリタイヤにも助けられましたけどね。自力じゃ厳しい状況に大きな変化は無く、この状態で次の鈴鹿(※)も『勝つぞ~』とか『表彰台に乗るぞ~』とか、そんな事言えるわけもまったくなく……イスカンダルぐらい遠い目標ですけど、今回と同じように我々のなかでやれることは目一杯やりたいと思います。
いつもどおりですが、現状のレギュレーションと相対的なマテリアル戦争のなかで、我々が今持っているものの状態ではなかなか……トップを狙うようなレースをするのは難しいなぁ、っていう感じです。みんなで力を合わせて今週はセットアップ面も進んでだいぶ良くはなったし、今、自分たちの持ってるものの性能は出し切れたんじゃないかなとは思います。
今回は予選の11位も、この決勝の8位もラッキーはなかったですけど、長丁場でポイントを獲れたことで最悪の結果だけは免れたかな。終盤ベストが出たのはコンディションで、クルマが軽くなったところで、FCYによりタイヤが冷えたのでペースが上げられた。悔しいですけど、この積み重ねを繰り返して本当に来るべき時に備えたいと思います。