GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 1
2020 AUTOBACS SUPER GT Round1 たかのこのホテル FUJI GT 300km RACE
会期:2020 年07月18日~19日
場所:富士スピードウェイ(静岡県)
天候:雨/晴
観客:無観客
予選:18位
決勝:9位
獲得ポイント:2P
シリーズ順位:9位(2P)
<Sat.>
■FreePractice
異例の形で幕開けとなった「初音ミク GTプロジェクト」13シーズン目。世界が新型コロナウイルス(COVID-19)感染症に揺れる2020年は、各国のモータースポーツ・シーンと同様にSUPER GTも開幕延期を余儀なくされた。そしてやっと決まった第1戦は、当初のカレンダーより約4カ月遅れとなる7月18~19日、それも恒例の岡山国際サーキットではなく富士スピードウェイが舞台となり、感染症対策のために無観客での開催となった。
2011年に初タイトルを獲得して以降、2014年、そして2017年のGT300クラスチャンピオンであるGOODSMILE RACING & TeamUKYOは、今季も谷口信輝選手/片岡龍也選手と不動のダブルエース体制を継続し、マシンは今年デビューの新型メルセデスAMG GT3を投入した。チームのジンクスである”3年周期チャンピオン・イヤー”に向け、昨季の雪辱を果たす戦いが始まった。
進化を遂げた2020年型メルセデスAMG GT3は、フロント開口部やバンパーコーナーに位置するカナード類、さらにリヤディフューザーの改良などで安定したダウンフォースを確保。また、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)やTCS(トラクション・コントロール・システム)の制御がより高精度化したことで、一層ドライバビリティが高められている。
しかしながら、GT300クラスに車種別で課せられるBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)はメルセデスに対して相変わらずの厳しさで、基本となる1285kgの車両重量に対して+65kgもの重石を課せられ、総重量は1350kgと今季もGT3勢でNo.1の最重量級マシンとして君臨。
エンジン側でも、高速サーキットの富士スピードウェイ用に吸気制限がわずかに緩和されてはいるものの、最高速ではターボ勢に明らかに劣る。また自然吸気エンジン車のなかで唯一、燃料を絞ることでパワーを抑える制限も引き続き残るなど、基本性能の高さ故に大幅な調整を受けており、依然として苦しい状況が続いている。
そしてはじまった土曜16時からの公式練習は、濃霧のためディレイとなり、最初の走行を担当する片岡選手はピットに足留めされた。その霧も17時過ぎに引き、17時15分、WET宣言下でセッションが開始された。少しでも走行時間を稼ぐべく各車一斉にコースインする。
気温20度、路面温度22度という、この時期としては異例の低温コンディションの中、精力的に連続周回をこなした片岡選手は、それぞれ9周、8周、7周のショートラン3本をこなして、1分38秒157のタイムを記録して18時過ぎに谷口選手に交代した。谷口選手が7ラップほどを消化したところで18時25分からのGT300クラス占有走行枠へ。
翌日の予選に向けた公式通知では、「悪天候により公式予選開始時間が当初の予定より30分以上遅れた場合は、公式予選をキャンセルする。なお、その場合の決勝グリッドは、本日の公式練習で達成されたベストタイムを採用する場合がある」と案内されていた。これを受け、ここで再びステアリングを握った片岡選手は予選キャンセルを想定して本番さながらのアタック走行を敢行する。結果、1分37秒864の自己ベストをマークするも、ライバル勢も同様にアタックしていたために、ポジションはなんとクラス19番手に沈む。
このセッションでクラス最多周回となる39周を走破したが、トップから約1.1秒遅れて後方順位でセッションを終える事になった。今季も高いコンペティションレベルを実感させられる。
<Sun.>
■QF1-2/現状1109w
前日時点の天気予報では、降水確率80%となっていた日曜午前。9時30分から始まった公式予選での天気は、予報に反して雨は無く、上空は曇りのままだった。しかし路面には直前まで降っていた雨によるパッチが残り、判断の難しいダンプコンディション。そのためセッションは再びWET宣言のもとで始まった。
今回は大会のコンパクト化を狙って予選・決勝をワンデイで開催する初のフォーマットを採用し、予選は朝一番の10分間1発勝負となる。またGT300クラスの予選参加全29台のマシンは、前年度の最終ランキング順にA組とB組に振り分けを受ける。前年、シリーズランキング3位だった4号車はA組で出走することになっていた。
そんな条件のなか、 予選Q1Aコースオープンとともにトラックへと飛び出していった4号車だったが、装着したタイヤは表面に溝が切られたレイン用。まだコース上のところどころにウエットパッチが残る状況ながら、コンディションを見極めたQ1担当の片岡選手はすぐさまピットへと引き返し、サスペンションの微調整とともにスリックタイヤに履き替えてコースへと戻っていく。
路面温度は29度と前日よりわずかに高い条件ながら、まだ乾ききらないコース上の水分と、わずかに1周遅れた分のタイヤウォームアップ時間の短さが影響したか、5周目に記録した1分38秒648のタイムは計時時点で8番手、Q1通過カットラインの当落線上だった。
なんとかセッション終了まで持ち堪えてくれとのチームの願いも虚しく、直後に2号車(シンティアム・アップル・ロータス)がタイムを更新し、9番手にバンプアウトされた4号車は惜しくもQ1通過ならず。午後の決勝は18番手から上位進出を狙うこととなった。
■Race
正午を過ぎても雨を堪えた上空の雲隙間から日差しも戻り、決勝前20分間のウォームアップ走行時点でも路面はドライ。このセッションでは左フロントタイヤのパンクであわやの瞬間もあった4号車グッドスマイル 初音ミク AMGだったが、幸いにしてマシンダメージはなし。15時決勝スタート時には湿度58%、気温24度、路面温度39度まで上昇して、2020年最初の300kmレースはスタートを迎えた。
18番グリッドから66周の決勝に挑んだGSR最強のスタート担当・片岡選手だったが、そのオープニングラップでGT500クラスのマルチクラッシュが発生し、いきなりのセーフティカー(SC)導入が宣言される。しかし、時を同じくして背後の19番グリッドからスタートしていた21号車(Hitotsuyama Audi R8 LMS)が、隊列をすり抜け16番手へとジャンプアップしてくる。
これにも動じずSCピリオド中にも集中力を切らさなかった片岡選手は、リスタート後の7周目に25号車(HOPPY Porsche)を鮮やかにオーバーテイクすると、多発するタイヤバーストや、SC解除後の再スタート違反でドライブスルーペナルティを課されたライバル勢を尻目に、ジリジリとポジションを上げていく。
比較的早い段階で遭遇するGT500の先頭集団も巧みに先行させながら、1分39~40秒台の安定したラップタイムで周回を重ねた4号車。22周目にはトップ10圏内へと浮上。ライバルチームがルーティンのピットウインドウを迎えると、片岡選手は毎周のようにポジションを上げ、最後までラップタイムを落とさず実に15ポジションアップの3位まで進出していた。31周目にピットへと向かっていく。
今回はセオリーどおりのレース半分のタイミングでドライバー交代を行ったGSRチームだが、後続との距離も考慮してマシン左サイドの片側2輪交換を選択。ピット滞在時間をわずかにでも削る努力をして、谷口選手がコースへと復帰していく。
すると13番手でコース復帰したその2周後、33周目にGT500と接触した360号車(RUNUP RIVAUX GT-R)がターン13で進行方向とは逆向きになり、コース真ん中に立ち往生。これでこの日2度目のSC導入となる。
その直前に11番手となっていた4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは、ホームストレート上でのリグループを経て先導走行を続ける間も、路面温度が40度を越えるほど上昇する中で谷口選手はタイヤのケアに全神経を集中。40周目のレース再開で前方3台がピットへ飛び込み8番手へと浮上すると、44周目には1分39秒290と、このレースでの自己ベストを更新してさらに上位進出を目指していく。
その後、ペナルティ消化から怒涛のチャージで迫ってきたブリヂストン装着の55号車(ARTA NSX GT3)や、今季からミシュランタイヤにスイッチした9号車(PACIFIC NAC D’station Vantage GT3)に一旦は前に出られるものの、相手の動きを冷静に観察した谷口選手は「アストンマーティンも苦しそうな姿が見えたから『あ、相手も弱ってるな』と思って。そうすると僕も元気が出てきて『絶対抜いてやる』と」奮起。
50周目以降、1分39秒台を連発して前を追うとギャップはすぐに1秒圏内のコンマ差にまで詰まり、そこからテール・トゥ・ノーズの駆け引きがスタート。ラスト2周となった60周目には、前周の最終コーナーから狙いを定めホームストレート上でロックオン。
しかし最高速で劣勢のメルセデスは、スリップストリームについてもジリジリと離されていく。それでも続く1コーナーへのブレーキングでマシンをアウト側のレコードライン上に振った谷口選手は、立ち上がりでラインクロスを狙ってアストンマーティンのイン側へと滑り込む。
お互い、タイヤグリップの余力はほとんど残っていない極限でのバトルは、リヤタイヤに全神経を集中したスライドコントロールの達人がじわりとメルセデスを前に出し、コカ・コーラ・コーナーのアウト側からクリーンにかぶせて勝負アリ。最後の最後で9位をもぎ取って2020年最初のチェッカーフラッグをくぐった。
2020年初戦、苦しいながらもポイント獲得を果たしたGSRチーム。続く第2戦も同じく富士スピードウェイでの300km戦となるも、8月第2週は気温上昇も見込まれる真夏の1戦。谷口、片岡の両選手ともに混戦乱戦をくぐり抜ける粘り強いレースを披露してくれるはずだ。
■チーム関係者コメント
待ちに待った開幕戦でしたが、天候や路面が読みきれなかったのと前回富士テストの良い結果も引きずって、予選で良いチョイスができなかった。それが大きかったと思います。決勝では最後に1台抜いてくれましたし、ふたりともよく守ってくれた。周りも開幕戦ということでバーストやトラブルも多く、それらにも助けられましたが、安定した力が発揮できるチームだということは改めて感じました。今回のようにフォーマットが変則的なのは経験豊かなチームの方が優位性がある。ただ、勝ちに行く道筋はまだ見えない。運だけでは表彰台までたどり着きそうにないから、考えなきゃ……ですよね。
予選からミスチョイスが続いてしまって、やはり最初からドライで出ていくべきだったところ、判断ミスをしました。あれがもう1周あればQ1は確実に通っていたし、Q2に行けていた。それでもう少しスタートの順位がよければ……と、いつものタラレバですけど。『このままウエットで予選をやりたいな』というのが頭にあり過ぎて、それに引っ張られて1周判断が遅れた。ちゃんと路面をチェックしてればドライで行くべきで、最初はキツイけどだんだん乾いていくわけだから。そこは最初からスリックで行かせるべきだし、もう何十年もやっていて恥ずかしいというか。強く言うべきだった、という反省があります。
今回は9位で終われましたけど、実力で9位ではなく本来はもっともっと下だと思う。トラブル、パンク、ペナルティと周りが苦労して9位という結果になっただけで、正直全然負けてますね。今回はセーフティカーのタイミングも良くて、ピットを引っ張っていたらもう勝負権はなくなるところだった。最後のバトルは、ストレートで離されるんだけど1コーナーでクロスして、2コーナーのアウトからズバッと。お互いがお互いのポジションを残してくれながら、僕も内側を残して、彼(ケイ・コッツォリーノ)も外まで追いやることもなく、クリーンな勝負でした。とりあえず『0点じゃなくて良かった~』ってところですね。
ひとことで言うと苦しい週末だったと思います。予想外の天候と気温で、持ち込んだタイヤも合わなかった。決勝に関しては比較的想定内の条件に近づいたこともあって、ペース的にはギリギリ勝負もできましたけど、果たして前からスタートしていたとして周囲のストレートが速いクルマやマザーシャシー、JAF-GTやGT-R、そしてブリヂストン、こういった非常に特徴のある強いチームと勝負できたかと言うと……。今季はここ富士で4戦、本当に自分たちとしてはやれる限りのレースができたし、今年のチャンスは周りが重くなってきたときにどれだけ点数を奪って最終戦まで望みを繋げられるか、ですね。