GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 6
2020 AUTOBACS SUPER GT Round6 FUJIMAKI GROUP SUZUKA GT 300km RACE
会期: 2020年10月24日(土)~25日(日)
場所: 鈴鹿サーキット(三重県)
天候: 晴
観客: 2万8500人(2日間)
予選: 14位
決勝: 3位
獲得ポイント: 11P
シリーズ順位: 10位(21P)
<Sat.>
■FreePractice_QF1-2
富士・鈴鹿・もてぎの3サーキットのみで開催される2020年SUPER GTシーズン。第6戦は10月24~25日に今季2度目となる鈴鹿で開催された。
F1トラックとして世界的に有名なこのサーキットとは、なぜか相性に恵まれなかったGOODSMILE RACING & TeamUKYOの谷口信輝選手と片岡龍也選手。過去の鈴鹿での戦績を振り返ると、2019年に記録した4位がチーム史上最高位と表彰台経験は無い。
しかし今シーズンも残り3レースでシリーズランキングは13位、トップとは40点差でこの地に立ったチームにとって、シリーズチャンピオン獲得には大量得点以外に道が残されていない状態だった。自ずと鈴鹿でのリザルト最上位更新の意気込みで挑むレースとなった。
2020年開幕戦から投入された新型Mercedes-AMG GT3は、依然として厳しい性能調整が課されており、車両重量はFIA GT3で最重量級の1340kgである一方、リストクターは最も細い34.5mmが義務付けられている。
しかし4号車は前半の戦績が奮わなかったために、成績に応じて搭載されるウエイトハンデが30kgと比較的軽量だ。第7戦では搭載ハンデ半減、最終戦ではハンデ消滅のルールとなるため、全車両ともこのレースがハンデ最高値となる。上限の100kgを搭載する車両が5台もいる中での30kgは、反転攻勢へ向けた数少ない好材料だ。
気温18度、路面温度24度という爽やかな秋晴れのコンディションで始まった午前9時20分からの公式練習は、片岡選手の走り出しでスタートした。前戦富士で大幅に見直したセットアップの流れを持ち込み、この高負荷サーキットの鈴鹿でどのような挙動を見せるか、片岡選手はショートランを繰り返しながら身体中のセンサーを動員して掴み取っていく。
セッション終盤、244号車(たかのこの湯 RC F GT3)がシケイン進入でコースオフし、バリアに激しく激突したことにより赤旗中断に。再開後の短い走行機会でアタックした片岡選手のタイムは、1分59秒146。ハンドリングには好感触を得ているがタイムが伸びない。
片岡選手は合計19周を走破し谷口選手へと交代、ステアリングを引き継いだ谷口選手は、GT300クラスの占有走行枠でもレースペースの確認作業を進め、2分フラットの安定したドライビングを披露した。
セッションリザルトは片岡選手のベストタイムで22番手に留まるも、新しいセッティングには手応えを得て、午後の予選に向けた戦略を練ることとなった。
来シーズンから導入予定のFCY(フルコースイエロー)訓練セッションでの走行を経て、午後2時から開始された組み分け予選では、今回も4号車は成績順によりB組での出走に。午前の公式練習でセットアップを担当した片岡選手がQ1突破の任務を託された。
B組セッション開始直後、4号車のはるか前方を走行していた22号車(アールキューズ AMG GT3)がヘアピン出口でスピン、コースインサイド寄りにストップして赤旗中断となる。これにより、この時点でタイヤウォームアップを進めていた各車の状況により、再開後のグリップに差が現れることが予想された。この状況に、赤旗が出ることを予見してタイヤをいたわって周回していた片岡選手は、再開後8分間の短いセッションですぐさま熱入れを完了させ、ワンアタックで1分57秒522をマークし、コントロールライン通過時点で3番手のタイムを叩き出す。
その後、60号車(SYNTIUM LMcorsa RC F GT3)や、360号車(RUNUP RIVAUX GT-R)、そして100kgのウエイトハンデを搭載するJAF-GT車両の61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)にタイム更新されるも、6番手でQ1突破を達成した。
赤旗の影響で開始時間が遅れた予選Q2。谷口選手はウォームアップ周回を経て最初のアタックラップで1分57秒564を記録し、この時点で7番手になると、続くラップもタイムアタックを行うが、S3でタイム更新がなかったことを受けてアタックを中断し、タイヤを温存した。
その後、ライバルのタイムアップにより、最終的に14番手でQ2を終え、明日の決勝に臨むこととなった。
<Sun.>
■Race
この週末を通じて鈴鹿サーキットの気候は穏やかに安定していた。日曜には山からの風がやや強まったものの、終日晴れてトラックコンディションもドライ。シーズン前半は雨が絡んだレースばかりだったが、後半に入ってドライレースが続く。後半戦幕開けの第5戦から観客動員が許可され、この第6戦鈴鹿の決勝レースには1万9000人のファンが詰めかけた。
決勝スタートドライバーの片岡選手は、11時40分からのウォームアップ走行でも精力的に周回を重ねる。しかし2分01秒084とタイムは伸び悩み、前日から続く「僕らの直線の遅さはどうやっても苦しい(谷口選手)」という状況を再認識することとなった。
13時、気温は20度とほぼ前日同様ながら、日差しの影響か路面温度は31度まで上がった中、52周300kmの決勝レースがスタートした。
片岡選手は得意のオープニングラップで52号車(埼玉トヨペットGB GR Supra GT)と55号車(ARTA NSX GT3)をパスして、2ポジションアップの12番手でコントロールラインを通過していく。
4周目には前方車両の1台がストップし11番手となるも、続く7周目には背後にいた52号車に再び前に出られて12番手に戻されてしまう。しかし周囲が2分03秒台でラップを重ねる中、10週目と11周目に立て続けに2分01秒台でプッシュした片岡選手は、団子状態でトレインと化していた5番手集団に追いつき、12周目の通称”まっちゃん”コーナーで再び52号車を捉え11位。
続く13周目、三度52号車に抜き返されて12番手に戻されるも、14周目には9号車(PACIFIC NAC D’station Vantage GT3)、60号車(SYNTIUM LMcorsa RC F GT3)をまとめて抜き、10番手へポジションアップする。
さらにダンロップタイヤ装着のポールシッター、96号車(K-tunes RC F GT3)をもかわして9番手に。ファーストスティントで順位を下げないお馴染みの“片岡劇場”を繰り広げる。
この時点でも2分02秒台の安定したラップを刻んでいた4号車だったが、規定周回数でほぼミニマムとなる18周目にピットイン。ここからステアリングを預かった谷口選手は、タイヤ4本交換でロングスティントへと飛び出していく。
するとその直後の19周目。1コーナーで谷口選手が52号車をパスすると、その52号車がS字でGT500車両と絡みスポンジバリアまで弾かれストップ。このアクシデントでセーフティカー(SC)導入が宣言され、ピットレーン入り口がクローズされることに。
これでルーティンのピット作業を終えた組と、これからドライバー交代を予定していたチームとで明暗が別れる展開となり、18番手でSC先導走行を続ける4号車は、実質6番手のポジションを手に入れる。過去、SCに泣かされることが多かったこのチームがSCでメリットを得るのは、非常に珍しい光景だ。
25周目にSCが解除されレースがリスタートされると、各車一斉にピットロードへと向かう。
26周目、ペースが上がらない96号車を抜き去りこの時点で7番手、28周目、前方の50号車がピットに入り6番手、29周目には目の前の87号車(T-DASH ランボルギーニ GT3)をスプーン・130Rと追い詰め、シケインで仕留める。同時にトップの56号車がピットインしたことで4番手まで上がる。ついに表彰台が見えてきた。
その翌周に2分01秒357の自己ベストでペースを上げた谷口選手は、GT500の先頭集団を上手く前に出しつつ、35周目のダンロップコーナーで5号車(マッハ車検 GTNET MC86 マッハ号)をするりと抜き、ついに3番手に進出する。
ここで前を行くのはJAF-GTマザーシャシーにブリヂストンタイヤを履く6号車(ADVICS muta MC86)。スイッチの入った谷口選手は圧巻のスパートを見せ、37周目に2分01秒108で再び自己ベストとすると、続く周回から2分フラットに入れ3周連続で決勝ベストを更新、6号車との距離をみるみる縮めていく。39周目の決勝ベスト2分00秒646を記録して以降も、42周目まで2分ジャストの驚異的レースペースを維持し、7秒近くあった差を削り取って6号車のテールへと迫った。
44周目には0.346秒までギャップを詰め『あとはどこで仕留めるかだけ』という状況に持ち込むも、やはりここでBoPによる「直線の遅さ」が顔を出し、決定的なパッシングシーンを作り出すことができない。
レースはそのまま終了。GSRは3位でゴールし、今季初となる表彰台を獲得。これはチームとして鈴鹿で初めて登る表彰台でもあった。
3位で喜ぶようではいけないのだが、「今年は1回も表彰台に登れないかもしれない……」と絶望していた谷口選手、片岡選手、そしてチームにとっては十分に嬉しい結果だった。
そしてシリーズタイトル獲得に向けても希望の光となるお立ち台登壇だ。事前の意気込み通り、シリーズポイント11点を獲得して、トップの65号車に30点差で第7戦に向かうこととなった。
■チーム関係者コメント
ここまでちょっと変化がなかったですし、チームもハマってる感じがあったので、前のレースからAMGサイドのアドバイスを貰いながらセッティングをゼロベースで見直してきました。チームもスランプ脱出の手掛かりが欲しかったので、今回もドイツからの提案をベースに持ち込んで、プラクティスで煮詰めて、半信半疑の部分はありましたけどね。今回はセーフティカーも含めて賭けに勝ったような状態だと思います。直線の速さがどうしようもなく「無い」ので、レースペースは良くても相変わらず抜くのが大変。ドライバーたちはストレスがたまりますよね。全員が歳とってるチームですから(笑)。ミスしないだけじゃなくて、今後も勝つ方法論を柔軟に探さなくちゃいけないですね。
走り出しはセットアップなどを見てちょっと期待してましたが、順位があまりにも悪くて「あれ、少し厳しいな~」というところから始まりました。車のバランスやセッティングは決まってきていて、ドライバーは「フィーリングいい」って言っているのに、とにかくタイムが遅い、っていうね。それだけが問題……っていうか、それが一番問題なんだけど(笑)。レース後半のペースを見ると希望が持てるし、これで予選で前の方に出れればなんだけどその速さは無い。次戦はウエイト半減だけど、ウチは最初からあんまり積んでなかったから(笑)特にいい材料とは言えないかな。とは言え、ちょっと打開の緒(いとぐち)が見えたんで、頑張ります。
リストリクターの小ささが如実に出て、僕らの直線の遅さはどうやっても苦しいな、って。予選は僕も片岡もバッチリ決めた。ほぼ完璧に決めてるのに14番手。「いや、今年は1回も表彰台登れないなコレ」って思ったんですけど、あまりにも苦労してきたから神様が褒美をくれたのか、今回はセーフティカーが味方をしてくれた。表彰台圏内に上がってからは欲も出てきちゃって「2番手喰いてぇ~」なんて気持ちになったんですけど、基本的に僕ら直線が遅いので、抜き手に欠ける。まったく雨が絡まなかった週末なんで、その意味でも最初から運があった。今回はとにかく表彰台に登れた、ということで残り2戦に向け気持ちの弾みをつけたいですね。
今回は手応えもよく「ほぼ、ほぼ出し切れてるぞ」と。チームとしての落ち度もないし、重箱の隅もだいぶ突つき終わって、もう「98点」って言ってもいいくらい状態が決まってるのに、順位が……。レースラップはそれなりには行けるけど、なにしろ抜くのが大変で。ただチームとしては事前の持ち込みから現地でのセットアップ、とにかくやれることをパーフェクトにやった。結果として表彰台に乗れたのはセーフティカーも含めて基本的にラッキーでしかないんですけど、このラッキーも過去の失敗から学んだ上で採った作戦のおかげなので。やれることを全部やって、運まで手伝ってやっと得た3位。ツラさは続きますが、こういうこともあるんで諦めずにレースしたいと思います。