GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 3
2021 AUTOBACS SUPER GT Round3 FUJIMAKI GROUP SUZUKA GT 300km RACE
会期:2021年08月21日~22日
場所:鈴鹿サーキット(三重県)
天候:曇り/雨
観客:1万8500人(2日間)
予選:6位
決勝:3位
獲得ポイント:11pt
シリーズ順位:9位(20pt)
第4戦に遅れること約1カ月、スケジュール変更により今年4回目のレースとなった2021年SUPER GT第3戦が、8月21~22日に鈴鹿サーキットで開催された。
依然、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の猛威は衰えず、会期直前の金曜には開催地の三重県にも『まん延防止等重点措置』が適用される中でのレースウィークとなり、関係者はもちろん観客に対しても厳重な感染対策が施されての開催となった。
本来、この週末はSUZUKA 10 HOURS(通称テン・エイチ)が開催されるはずだった。GOODSMILE RACING & TeamUKYOは例年テン・エイチのイメージキャラクターを用意しており、今シーズンも『レーシングミク 晴着Ver.』を準備していたが、残念ながら同大会は中止となった為、同じ週末、同じサーキットで開催されるこのSUPER GT第3戦で、『レーシングミク 晴着Ver.』が描かれたボンネットを披露した。
今大会、Mercedes-AMG GT3に課されたBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)は、ウエイトが+55kgと前レースよりも10kg厳しく、車重は合計1340kgといつも通りクラス最重量。さらに4号車は成績によって搭載されるサクセスウエイト(=SW/旧称ウエイトハンデ)27kgを積んで臨む。
【8/21(土)】公式練習、公式予選
天候:曇り
コース:ドライ
気温/路面温度 Q1開始27℃/31℃、Q2開始27℃/32℃、Q2終了27℃/32℃(GT300のもの)
午前9時、気温26℃、路面温度28℃、ときおり小雨の舞うコンディションの中公式練習が開始された。セッション開始時点からWET宣言が出されていたが、レコードライン上はなんとか”ほぼドライ”で、ウェットタイヤを履くチームは見当たらない。
最初に走行を担当した片岡選手は、走り出しから2分を切る好タイムを記録しつつショートランを繰り返し、持ち込みのセッティングとヨコハマタイヤの新スペックの感触を確認していった。片岡選手は常にトップ5以内のタイムでセッションを進め、9周目には1分59秒173を記録。「持ち込んだタイヤも、クルマのバランスもそれほど悪くない。それなりに予選は行けるだろう」という手応えを得て、早めに谷口選手へとステアリングを引き継いだ。
谷口選手は、まとまった周回数をこなし、雨脚が変化する難しいコンディションのもとでロングランシミュレーションを実行。セッション中の自己ベストは9周目の2分00秒102。「マシンのフィーリングはそんなに良いわけじゃない。でも、他のチーム(のタイム)も良くなさそうだな」と一定の手応えを得てピットに戻った。全体では片岡選手のタイムによる12番手でこのセッションを終えた。
午後2時30分、公式予選Q1。空を雲が覆っており、日差しはない。路面はドライ。気温27℃、路面温度31℃と、事前の想定より低めのコンディションで10分間のセッションが始まった。
4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは今回も組み分け方式によりQ1A組での出走となった。Q1担当は片岡選手。まずは慎重にタイヤに熱を入れ、計測4周目に1分59秒051を記録。コントロールライン通過時点で5番手に。そのまま連続アタックに入るが、1分59秒399と惜しくもタイム更新はならなかった。しかし、この時点で7番手となっていた4号車を上回るマシンが現れず。片岡選手は無事にQ2進出を決めた。
不安定な空の下、公式予選Q2がスタート。なんとか雨は免れ、引き続きスリックタイヤ装着での勝負となった。谷口選手は、完璧なウォームアップでタイヤの性能を引き出し、最初のアタックでここまでのチームベストを更新する1分58秒722を記録して5番手に付ける。
セッション終了間際に9号車(PACIFIC NAC CARGUY Ferrari)にかわされ1ポジションダウンとなったものの、前戦もてぎでの5番グリッドに続き、期待を上回る好グリッドを獲得した。
【8/22(日)】決勝
天候:曇り
コース:ドライ
気温/路面温度 スタート前:31度/43度>序盤:31度/39度>中盤:30度/35>終盤:29度/35度、ゴール:29度/35度
前日に続き高確率での雨予報が出されていたが雨らしい雨は降らず、午後1時10分開始のウォームアップ走行でも路面はドライ。このウォームアップセッションでは18号車(UPGARAGE NSX GT3)が高速コーナー130Rの直前でタイヤが外れるトラブルに見舞われ、そのままコースバリアに突っ込む大クラッシュを引き起こす。ドライバーは無事だったが、バリア修復作業などで全体の進行が10分遅れる事態となった。
午後2時40分フォーメーションラップ開始。気温31℃、路面温度43℃とこの週末一番の温度の中、300kmの決勝レースがスタートした。
ファーストスティント担当の片岡選手は得意とするオープニングラップでのオーバーテイクを狙いスタート直後から積極的に仕掛けるがならず、6番手キープのままコントロールラインに戻ってきた。
5周目、GT500クラスで大きなアクシデントが発生し、この日最初のFCYが掲示。スポンジバリアの修復が必要となった為、そのままセーフティカー(SC)が導入された。
ホームストレートでの隊列整理を経て、12周目にSCが解除された。レースリスタート後は、5番手にポジションを落としてきた88号車(JLOC ランボルギーニ GT3)の徹底したディフェンスラインにより、4号車はペースを上げられないまま周回を重ねさせられる事になった。
この状態を打開する為、チームはドライバーの義務走行距離を終えたほぼ”ミニマム”となる20周目時点でピットインを決断。前戦と同様に、前を塞がれた状態から脱し、コース上のクリーンな位置で良いラップタイムを刻む”アンダーカット”の戦略を採る。さらに、後方の何台かが序盤のSC中にタイヤ交換や給油を済ませてルーティンピットの時間を削る作戦を採っていたことを受けてピッ作業も作戦変更した。
「片岡から(無線で)『リヤが落ちてくるから、リヤ2本交換もアリかもしれないよ』っていうアドバイスもあったからね。(今回のタイヤで)それが行けるかどうかなんてデータは何もないので博打だったんだけど、でもやるしかないっしょ!ってことで」気合を見せた谷口選手にすべてを託し、チームは予定していた4本交換も取りやめ、リヤ2本交換でピット作業時間を短縮。後方集団に飲み込まれない位置に谷口選手を送り出すことに成功した。
トラック上では、同様の考え方で一足先にピット作業を終えていた予選7番手の2号車(muta Racing Lotus MC)に先行されたものの、25周目のS字コーナーで抜き返してポジションを回復。そして、ポールポジションスタートから順位を落としていた61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)を27周目の1コーナーでオーバーテイク。更に5番手グリッドから一時2番手まで浮上していた9号車(PACIFIC NAC CARGUY Ferrari)を31周目のデグナーで仕留めるなど、立て続けにポジションを上げて暫定9番手へと進出する。前を行く全ての車両がピット作業を終えると4番手まで順位を上げていた。
35周目、西コースに雨が落ち始めて路面のμが下がると”ちょい濡れ”が得意な谷口選手が本領を発揮する。
38周目に3番手にポジションを下げた5号車(マッハ車検 GTNET MC86 マッハ号)に対し、谷口選手は39周目で2.581秒、40周目に1.595秒、そして41周目では0.980秒と、異常な速さでテールトゥノーズまで迫ってプレッシャーをかける。
42周目、デグナー進入で5号車が単独スピンを喫すると、4号車はついに表彰台圏内の3番手にポジションアップ。
そのまま49周目まで走り切ってチェッカーを受け、今季最高位となる3位を獲得し、谷口・片岡両選手は2021年シーズン初のポディウム登壇を果たした。
この結果11ポイントを獲得しシリーズランキング9位に浮上。トップまで14ポイントという接戦状態でシーズンを折り返し、2年ぶり開催となるSUGO戦に臨む。
「(SUGOは)振り返っても3位だったり2位だったり、僕的に相性は悪くない」と谷口選手。9月のSUGO、10月のオートポリスでの躍進を期待したい。
■チーム関係者コメント
今回はライバル勢がタイヤ選択で『ハズし』てくれていた印象でした。我々は、レースを想定して固めのタイヤで予選に臨んだのですが、それでも6番手という結果は望外でしたから。これが今回一番大きな要因だったかもしれないですね。
序盤は88号車のガードでペースを抑えられてしまって、なんとか並んでも加速では全くかなわず、どうにも抜けませんでした。それで、雨も気ににしながら早めにピットへ呼ぶ決断をしました。(雨が降り出した)終盤は『いぶし銀』の谷口さんが頑張ってくれました。無線で「いくらでも曲がってやるからもっと(ステアリングの)切れ角くれ」って(笑)。
それから、谷口さんの腕に加えてAMGのエンジニアとレース中もリアルタイムに連携して車の設定を細かく調整したことも良かったと思います。今回はこれらトータルの成果だったと思います。
本来は僕らも4本交換のつもりだったけれど、セーフティカーが入ったタイミングで後方のマシンが一斉にピットに入って、2回目のピット時間を短くしようとする人たちがたくさんいたんでね。そこの何台かに飲まれたらいけないから急遽、リヤ2本に作戦変更した。(コースに)復帰したら数台は前に行かれていたけど、なんとか追い上げて4台程度はキャッチ出来たから個人的には楽しかったね。いつも追われることも追うことも出来ないような位置を走ってたのが、今回はレースができた上での久しぶりの表彰台。3位表彰台圏内に上がってからは、普段なら望まないのに、あのときばかりは「ちょっと雨降らないかな~」なんて思ったり。ウエットを履くまでもない状態で「スリックで泥試合しようぜ」と(笑)。結果的にリヤ2本交換で良かったかな、って思ってます。
持ち込んだタイヤは硬めの方しか使えなさそうな感じもあったので、そこに迷いはなかったですね。予選6番手から「どうやってレース出来るのかな~」と思って走ってみたら、僕のスティントに関してはすべて引っ掛かるだけで終わってしまう状態でした。相手が「抜かせない」と思っちゃったら厳しいですし、ストレートスピードもこちらの方が遅い。どれだけ合わせても追い越せない。ただフェアではあったので、やれることは我慢だけでした。
もてぎからの新スペックタイヤが、現状この2戦はレースでの強さ……みたいな点では確認が取れたし、全体的にグリップが落ちなくなりました。
これで前半戦終了、次からの後半戦に繋がる形になったと思います。速いハズのクルマたちがちゃんと速く走ったら、太刀打ちするのは難しいと思いますが、少しづつ積み重ねていきたいと思います。