GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 8
2021 AUTOBACS SUPER GT Round8 FUJIMAKI GROUP FUJI GT 300km RACE
会期:2021年11月27日~28日
場所:富士スピードウェイ(静岡県)
観客:公式予選23,200人 : 決勝35,300人
予選:7位
決勝:4位
獲得ポイント:8Pt
シリーズ順位:10位(33Pt)
2021年のSUPER GTも、ついにシーズンフィナーレを迎える。秋深まった11月27日~28日、シリーズ最終戦となる第8戦が今シーズン2回目の富士スピードウェイで雲ひとつ無い快晴の下、開催された。
SUPER GTの最終戦は、シーズンの戦績により搭載されるサクセスウエイト(=SW/旧称ウエイトハンデ)が免除されるルールとなっており、ノーウエイトで車両の性能をぶつけ合うガチンコ勝負となる。また、この最終戦で各車両のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)が見直された。谷口信輝選手/片岡龍也選手がドライブするMercedes-AMG GT3は、エンジン出力を左右する吸気ストリクターのサイズが第2戦と同様に通常の34.5mm×2から36mm×2と拡大され、BoP重量も第2戦より5kg減の55kgとされた。それでも他車のBoP見直し幅に比べると渋めとなっており、車両総重量はやはりFIA GT3車両”クラス最重量”の1340kgと、楽なコンディション……とは決して言えない状況であった。
【11月27日(土)】公式練習、公式予選
天候:晴
コース:ドライ
気温/路面温度:
Q1開始前(14:20)10℃/13℃
北寄りの風が吹く肌寒い気候のなか、午前9時に公式練習がスタートした。セッション開始時点で気温9度、路面温度13度という低温コンディションでライバル各車がコースへと向かうなか、今回の基本セットアップ作業を担当する谷口選手は路面改善が進む事を狙って、約10分ピットで待機した後、クラス最後にコースインした。
しかし4周を走行したところで急遽ピットイン。「走ってたらとんでもなく『重てぇ!!』って状態で」(谷口選手)戻ってきた4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは、パワーステアリングにトラブルが発生していた。チームはすぐさまパワステポンプを交換し、30分弱で谷口選手をコースに戻す。
貴重な走行時間をロスしてしまったが、ここからは順調にショートランを繰り返し、谷口選手はすぐに1分36秒179の好タイムを記録する。そのまま連続して36秒台を記録してピットへ戻るとリヤウイングの角度を調整。ストレートスピード最優先のセットで1周だけ感触を確かめ、片岡選手にステアリングを引き継いだ。
短いながらもロングラン用のセットを試した片岡選手は、1コーナー手前の最高速計時で270km/h台後半を記録するストレートの伸びも見せつつ、1分38~39秒台の安定したラップを刻んでいく。そのまま10分間のGT300クラス専有枠で予選シミュレーションも担当する。セッション終了のチェッカーラップでは1分36秒418までタイムを伸ばすが、しかし混走時間帯の自己ベスト更新はならず、谷口選手のタイムで全体11番手としてセッションを終えた。
その後のFCY(フルコースイエロー)システム確認用となる20分間の走行枠でもアタックを敢行した片岡選手は、時速80km/h制限の隙間を縫いながら1分36秒596という全体最速タイムを記録。予選に向け期待を抱かせる速さを披露した。
そして迎えた午後2時30分開始の公式予選Q1。GT300クラス参戦28台をランキング順で組分けしたうち、今回4号車は強豪揃いのA組へと振り分けられていた。チームはこのQ1を谷口選手に託す。谷口選手は大会前には「正直、Q1A組の出走リストを見たときに突破は無理だなと思っていた」と振り返るが、午前の走行でQ1突破に十分な手応えを感じていた。
全車一斉にコースイン。気温10度、路面温度12度という午前とほぼ同じ条件に合わせ、谷口選手はタイヤのグリップ発動を得るべく入念な熱入れを進めていく。計測5周目で1分36秒141、この時点で4番手のタイムを記録。そのまま続けてアタックに入った谷口選手は、1分35秒867までタイムを更新し、6番手でQ2進出を決めた。
午後3時23分、久々にQ2を任された片岡選手は、コースインするとハイペースで熱入れを進める。計測5周目に1分35秒822、続くラストアタックで1分35秒645とタイムを削り取り、第5戦SUGO以来のシングルグリッドとなる7番手で予選を終えた。
【11月7日(土)】決勝
天候:晴
コース:ドライ
気温/路面温度:
スタート前(12:50):13度/23度
中盤(14:00):14度/14度
終盤(14:40):11度/19度
終了(15:00):11度/18度
天気は前日に続き富士山がきれいに見える快晴。2021シーズン最後のレースが始まる。
この日、コロナ禍後のSUPER GTでは恒例となった『PIT VIEWING』が催されるなか、午前9時40分から2021年にスーパーGT参戦100戦を迎えたドライバーや、メインスポンサーを対象とした表彰式が実施された。SUPER GTへ関わりはじめて今年100戦目のレースを迎えた株式会社グッドスマイルカンパニーもここで表彰されることに。グッドスマイルカンパニー代表取締役社長であり、チーム代表の安藝貴範、監督の片山右京、このチームでペアを結成して10年目になる谷口信輝選手、片岡龍也選手の4名が表彰台に登壇し、GTアソシエイションの坂東正明代表から表彰状と記念品を受領し、観客からは祝福の拍手を受けた。
その後、エアレースパイロットの室屋義秀氏によるフライトパフォーマンスが行われ、サーキットに集まった観客を盛り上げると、午前11時40分、ウォームアップ走行が始まった。
このセッションでチームは、「今後を見据えたテストとして、データ採りをメインに」(片山監督)据え、片岡選手によるタイムアタックを行う。結果、1分36秒079のセッショントップタイムを記録して、決勝レースに向けて期待が高まるパフォーマンスを披露した。
午後1時、気温は13℃、路面温度22℃。300kmの決勝レースがスタートした。スタートドライバーの片岡選手は、「正直、スタート位置の7番手からポジションを上げることは難しいと思っていた」と振り返る通り、順位は挙げられないまでも7位を維持したままコントロールラインを通過。その後ウォームアップ走行で他車に接触したペナルティを課された2号車(muta Racing Lotus MC)が3周目にドライブスルーを消化したことで6番手へと順位を上げる。
6周目、ダンロップ・コーナーでのアクシデントにより車両回収が必要との判断からセーフティカー(SC)が導入される。ホームストレートでクラス別に隊列を整えたのち、13周目にリスタートが切られると、片岡選手はセクター1全体ベストを刻みながら前を行く65号車(LEON PYRAMID AMG)を追走する。
その後18周目に65号車、続くラップで3番手にいた52号車(埼玉トヨペットGB GR Supra GT)がレース距離3分の1消化時点でドライバー交代を行うミニマム戦略を採ってピットへ向かう。これで4号車は4番手に浮上。更にその2周後にはFIA GT3車両予選最上位だった88号車(JLOC ランボルギーニ GT3)もドライバー交代に向かい、片岡選手はピットイン未消化ながら、表彰台圏内の3番手まで上がった。
25周目、片岡選手がピットインし、谷口選手にドライバーチェンジ。このレースは全車4輪交換が義務付けられているが、前半のコンディションやレースペース、そして片岡選手の判断により同じ種類のタイヤをチョイスして、15番手でコースに復帰する。
周囲のピットイン消化に合わせて徐々にポジションを回復した谷口選手は、88号車やシリーズランキング首位の61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)の猛追を背後に抑えながら1分37~38秒台の安定したペースで周回を重ねていく。
40周目に360号車(RUNUP RIVAUX GT-R)が、43周目には9号車(PACIFIC NAC CARGUY Ferrari)、25号車(HOPPY Porsche)がそれぞれピットインして全車のピットインが完了すると、4号車は5番手に。その直後、ホームストレート上のデブリ除去でこの日初めてのFCYが宣言される。
ここから終盤戦は表彰台と生き残りを賭けたサバイバル戦の様相となる。まず50周目に首位を走っていた52号車がバックマーカー処理のミスから左リヤタイヤを損傷し、最終コーナーでスピンアウト。これで4番手とした谷口選手は、53周目に同じく左リヤタイヤを壊した88号車がスロー走行となったのを受け、ついに表彰台圏内の3番手に。しかしすぐ背後には今シーズンのチャンピオン候補、61号車がマシンを左右に振ってオーバーテイクを伺っており、一瞬たりとも気が抜けない。
そしてチェッカーまで残り1周となった60周目。ヘアピン進入でインに飛び込んできた、こちらもバトル中のGT500車両をギリギリ回避した4号車はアウト側に膨らむようにしてラインを外してしまう。その隙をすかさず61号車に刺され、遂に4位に転落する。「(GT500車両と)お互いに当たりはしなかったけれど、どちらにとってもバッドチョイスで、ふたりとも抜かれてしまった。面白くないラスト1周だった」という谷口選手はそのまま4位でチェッカーフラッグを受けた。
表彰台をゴール目前で失う悔しい結果とはなったものの、苦難の連続だった2021年の締め括りに、ひさびさの”レース参加”が実現したGOODSMILE RACING & TeamUKYO。最終的には、ドライバーズランキング、チームランキングともに10位とシリーズチャンピオン獲得には遠く及ばない結果となってしまった。しかしセッティング面や作戦決定面で多くの試行錯誤を重ね、得るものも多いシーズンとなった。
■チーム関係者コメント
今回は36mmのリストリクターが効いてましたね。見てのとおり、リヤウイングなんて角度がほぼ付いてない、ほとんど0度ですからね。中継映像だとウイングの裏側が見える(笑)。36mmリストリクター&リヤウイングレス。これで最高速は280km/h近くになりましたが、おかげで他が苦しかったですね。今週末は谷口から走り出しましたが、またヨーロッパのエンジニアたちとやり取りをしてセットを出し、日曜のウォームアップでも来年のことを考えて、もうひとつの方向性のタイヤテストと、予選アタックに向けたセットアップに充てました。この冬から新たなシステムも本格稼働させ、データ解析をしていくつもりです。決勝で前の2台がパンクした時にはちょっと期待したんですけど表彰台には届かなかった。でも面白いレースでしたし、来年に繋がって欲しいですね。
今回は前戦もてぎのような失敗をしないように、持ち込みセットからHWA(ドイツ/メルセデスAMGカスタマーレーシング部門)やチーム、そしてヨコハマともきっちり話をしてきました。タイヤコンパウンドも本命とオプションと、それにバックアップとちゃんと分けて進めてきましたしね。練習走行ではパワステのポンプにトラブルが出て時間を失いましたが、それでもQ1を突破できてQ2でも7番手。スタートから少しずつポジションを上げていけて、終盤は一瞬表彰台に行けるかもとまで思いましたが残念でした。最後は無線にもちょっとトラブルが出て、トラクションコントロールなどの細かい指示が遅れたりして、まだ課題は一杯ありますね。
今週は土曜午前の走行からいつもより感触が良くて、これはちょっといいムードだぞと。予選Q1A組には、うちより速いのがどう見積もっても10台いるよねと思っていたけど、それもなんとか通せて片岡もQ2頑張ってくれて7番手スタートが取れた。練習走行中の(パワステポンプの)トラブル対応でロングができず、持ち込みタイヤの確認が出来ないままレースに入ったので博打要素満載だったんだけど、後半の自分のスティントは実際本当に苦しかった。それでも最後ぐらい表彰台に登りたかったけれど、あれは前2台のトラブルのお陰で表彰台が見えてきて欲が出ちゃっただけで、基本的にはあの2台よりは下だったはずだね。残り1周なんとしてもスバルから順位を守りたかったんだけど本当に残念。めげずに頑張っていきますよ。
直近2レースが全然ダメだったので、久しぶりに自分たちのパフォーマンスを出し切ることが出来たレースでした。来ると思ってたライバルが来なかったこともあって、今回は我々もそれなりに勝負権を持っていましたが、上位の数台はやはり頭ひとつ抜けてるな~という状態でした。今回セットアップでいろいろ試したいことがあったので、Q2を走ることが出来て良かったなと谷口さんに感謝してます。決勝スタート後はオーバーテイクとはいかなかったけどトップにも離されずに着いていけたので、役割は果たせたかなと思います。ライバルの脱落で表彰台圏内に入って変な色気が出た分、最後は残念な気持ちにはなったんですけどね……。ベストではないですけど1年を締め括れるレースになったなと思います。1年間、応援ありがとうございました。