GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 1
2022 AUTOBACS SUPER GT Round2 FAV HOTEL FUJI GT 450km RACE
会期:2022年05月03日~04日
場所:富士スピードウェイ(静岡県)
観客:予選29,000人 : 決勝44,000人
予選:9位
決勝:16位
獲得ポイント:0Pt
シリーズ順位:10位(4Pt)
2019年以来3年ぶりとなる行動制限のないゴールデンウィークに、2022年SUPER GT第2戦が富士スピードウェイで開催された。
シリーズ随一のハイスピードコースである富士スピードウェイに合わせて、Mercedes-AMG GT3のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)は昨年同様に変更され、エンジン出力を抑制する吸気リストリクター径は前戦の34.5mmから、36mmへと拡大される一方、前戦より10kg増しとなる55kgのBoP重量が搭載された。これにより合計重量は1340kgとなる。
さらに今大会は従来ゴールデンウィークに行われていた500kmレースでなく、完全新フォーマットの450kmレースとなった。従来の500kmレースでは最低2回のドライバー交代が義務付けられていたが、この450kmレースの競技規則では最低2回の給油作業のみが義務付けられているが、ドライバー交代に関する条件は通常の300kmレースと同じ。つまり2回のピットインのうち1回はドライバー交代を行わないダブルスティントが可能となるなど、取りうる戦略の幅が広い。
ライバル達がどんな戦略で臨んでくるか予想しづらいが、4号車グッドスマイル初音ミクの谷口信輝/片岡龍也の両選手にとっては、サバイバル能力の高さが活きる長丁場のレース、しかも波乱の可能性もある新フォーマットとあって、開幕前から狙いを定めていた1戦だった。
【5月3日(火)】公式練習、公式予選
天候:晴れコース:ドライ
気温/路面温度 GT300 Q1開始時16℃/23℃
Q2開始時14℃/20℃
終了時14℃/19℃
午前9時より公式練習がスタートすると、まずは谷口選手がマシンへ乗り込む。前日まで降った雨で荒れた路面状況の改善と路面温度の上昇を待つ為、セッション開始後5分ほどをピットで待機した後、コースへと入っていく。
タイヤに熱の入った5周目に1分36秒758でクラス2番手へ上がると、一旦ピットに戻り微調整を施す。その後10周目に再びアタックして1分36秒228を記録、クラス全28台中のトップに躍り出る。そのまま連続して1分36秒台で周回を重ねた谷口選手は、13周を終えたところでピットへ帰還し片岡選手へと交代した。
片岡選手はまずは3周して一度ピットへ戻ると、車両バランスを調整した。自身9周目に1分37秒016の自己ベストを記録した後ピットへと戻ると、ロングランに向けて燃料を補給して連続周回に入り、持ち込んだタイヤの走行可能距離数を確認していく。
時折1分37秒台も叩きつつ、安定して1分38~39秒台で連続周回を終えた片岡選手は、そのまま午前10時25分からのGT300クラス専有走行へ。4号車グッドスマイル 初音ミク AMGはここでも予選アタックのシミュレーションではなく、ロングランのペース確認に専念し43周したところでチェッカーを受けた。
全体では10周目に谷口選手が出した1分36秒228により、5番手でセッションを終えた。
引き続き行われたFCY(フルコースイエロー)のテスト枠も片岡選手が担当し、公式練習でロングランを行ったタイヤで更に周回を重ねて長丁場のレースに備えた。
午後3時からの公式予選はランキング順に振分られ、GSRは今回A組からの出走となる。予選Q1のアタックドライバーは公式練習でチームベストを出した谷口選手。気温16度、路面温度23度の中、コースオープンと共に全車一斉にコースイン。
谷口選手は車列中盤でウォームアップを続け4周目にアタックラップに入る。前にいた65号車と同時にアタックに入った為、常に目の前に65号車が走っている状態ながら、ストレートスピードとエンジンパワーが重要なセクター1と登り勾配が続くテクニカル区間のセクター3でともに全体ベストを叩き出し、1分36秒295をマークしてこの時点のタイムボード首位に立った。
残り時間は約2分あったが、決勝レースを見越してタイヤの温存を優先し、早々にアタックを切り上げてピットへ。ライバル勢のタイムアップで7番手まで下げるものの、無事にカットラインをクリアしてQ2進出を決めた。
GT300B組Q1、GT500Q1を挟み、午後3時53分に決勝のスターティンググリッドを決めるQ2が始まる。サーキット上空は雲に覆われ、Q1開始時よりも気温、路温共に低下している中、片岡選手がコースへと向かった。
ここでも早めの仕掛けでタイヤへの熱入れを進めた片岡選手は、谷口選手と同じく4周目で1分35秒621までタイムを縮め、コントロールライン通過時点で2番手のタイムを記録する。
これ以上のタイムアップは期待できないと判断したチームはタイヤ温存を選び、片岡選手をピットへ戻す。その後ライバル達がタイムを更新したためにポジションを下げるものの、最終的に9番手グリッドを獲得。翌日の長丁場に向け、シングルグリッドを確保して初日を終えた。
【5月4日(水)】
天候:晴れ
コース:ドライ
気温/路面温度 スタート前(14:25)20℃/33℃
中盤(16:05)20℃/33℃
終盤(17:15)20℃/27℃
ゴール前(18:15)17℃/22℃
快晴に恵まれ前日に比べて気温も高く過ごしやすい陽気となった決勝日、44,000人の観客を迎え入れた富士スピードウェイは、久々に観客でごった返して活気に満ちていた。
午前9時30分開始のピットウォーク。大勢のファンがピットロードを埋め尽くす中、谷口選手、片岡選手が今シーズンから始まったSUPER GT公式YouTubeのライブ配信を担当し、ネット越しにファンからの質問に応えながらピットウォーク参加者達を楽しませた。ピットウォークでは、5月1日に43歳の誕生日を迎えた片岡選手の為にチームがバースデーケーキを用意し、3年ぶりにファンの前でのお祝いが叶った。
午後1時10分、決勝前ウォームアップ走行開始。初開催となる450kmレース、未知の勝負に向けて片岡選手がマシンバランスの確認を入念に進める。強い日差しの影響で路面温度が38度に上昇する中、終始1分38秒台でラップし、終了間際の12周目には1分38秒062の自己ベストを記録した。
午後1時48分、決勝スタートに向けてグリッドの出口が解放されると同時に4号車グッドスマイル 初音ミク AMGはピットを離れ9番グリッドへ向かう。だが、ピットを離れてすぐに片岡選手から、マシンに異常を感じるとの無線が入る。河野チーフエンジニアは片岡選手に症状を聞きながらピットへ戻すかそのままグリッドへ向かうべきかを協議し、スタートまでに解決できると判断して慎重にグリッドへマシンを運ぶよう片岡選手に伝える。
グリッド上ではマシン到着と同時に待ち構えていたメカニックが作業を開始、無事にトラブルを解消しスタートさせることが出来た。
レース距離450km、給油義務2回の決勝レース。長距離レースで起こりやすい荒れた展開によるFCY、セーフティカー出動も考慮する必要がある。チームは、スタート担当の片岡選手を最初のGT500隊列がオーバーラップするよりも早くピットへ呼び込み、給油作業のみの”スプラッシュ&ゴー”で送り出し、最初の義務給油を消化しつつコース上のクリーンエリアに戻し、他車のペースに合わせることなく周回を重ねて、引っ張れるようなら折り返しとなる47~48周まで走って谷口選手にスイッチ、2度目の給油義務とタイヤ交換を済ませて上位浮上を狙うというトリッキーな戦略を用意していた。
午後2時30分。気温20度、路面温度は33度と少し下げてきた中で決勝レースがスタートした。片岡選手はスタートラインを超えるとすぐに88号車(Weibo Primez ランボルギーニ GT3)に並び、1コーナーのブレーキングで難なく仕留めて8番手へ。続く周回のコカ・コーラコーナーでは52号車もかわし、早くも7番手へ進出する。得意とするスタートダッシュが成功してポジションを上げた片岡選手は、作戦どおり5周目でピットロードへ向かい、約10秒の短い給油作業のみでコースへと復帰した。ここから同じ周回でピット入っていた52号車を背後に従え、1分38秒台の想定ラップで1対1の熾烈なバトルを繰り広げる。
20周を過ぎた頃、ライバル陣営のルーティンピットインが始まり、片岡選手がコースに復帰した時に23番手だったポジションは、ジリジリと上昇し始める。24周目にはダンロップコーナーで25号車(HOPPY Schatz GR Supra)の前に出て18番手まで戻してくるが、想定より早くタイヤの摩耗が進んでしまっていたため、「グリップが保てば抜かれなかったでしょうが、タイヤが厳しくなったので(タイヤを労わる為に)52号車に譲りました(片岡選手)」と、27周目にはここまで抑えてきたライバルの先行を許した。
その後片岡選手は、52号車のスリップストリームを活用してタイヤを労りつつ粘り続けて31周目にはトップ10圏内まで復帰した。しかしいよいよタイヤの摩耗が進み、更にペースが大きく落ち込んでいったため、35周目に限界と判断してピットへと向かう。
レースは1/3を少し超えたところ。タイヤ4輪交換、給油のフルサービスを行い、谷口選手にレースの残り2/3近くの距離を委ねる。
ステアリングを握る谷口選手は23番手でコースに復帰したが、その直後の38周目、100Rからヘアピンへ向かう地点で22号車(アールキューズ AMG GT3)がスピンをしながらコースイン側に激しく衝突、タイヤバリアを破壊し、パーツが一帯に飛び散る大クラッシュとなる。すぐにFCYが導入されるが、バリアの損傷が大きく、修復の必要ありと判断されてセーフティカー(SC)が導入されることになった。41周目にはホームストレート上でクラス別に並び替えが行われるが、これによってライバルに先行して2回のピットインを済ませていた4号車は周回遅れになってしまう。
午後4時01分、45周を終えたところでレース中断を示す赤旗が掲示され、車両回収とタイヤバリアの修復作業が行われた。
午後4時25分、セーフティーカースタートでレースが再開される。谷口選手は51周目に1分37秒652の自己ベストをたたき出すと、52周目にストレートで30号車(apr GR86 GT)のスリップに付き、そのまま1コーナーでかわして18番手へポジションを上げる。この周回でも1分37秒927を出し更に前を追う。54周目には4号車と同じくピット義務完了組の5号車(マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号)を1コーナーでオーバーテイクし、そのままヘアピンでアウトラップの60号車(Syntium LMcorsa GR Supra GT)も仕留めて16番手までポジションを回復した。
しかしその直後、ホームストレート上でスロー走行していたGT300車両を避ける際にGT500車両のトップ争いをしていた車両がほぼ最高速度の状態でバランスを崩してスピン、ストレートアウト側のフェンスに激突する大クラッシュが発生。
マシンは粉々に飛び散り、ガードレールは激しく損傷し、その破片が観客席にまで飛び込む大きなアクシデントになってしまう。
これにより、この日2度目となる赤旗が即座に掲示され、GT300のトップが55周、GSRが54周を走ったところでレースは再び中断される。幸いクラッシュ車両に搭乗していた選手は無事で、その後オフィシャルにより車両回収とコース修復の作業が行われるが、中断は1時間半に及び、事前に設定されていたレース最大延長時刻である午後6時20分までにレースを終了することが絶望的となっていた。
午後6時10分、レースが再開される。しかし気温が下がり、長時間の中断でタイヤやブレーキも冷え切った状態だった事もあり、セーフティーカーによる先導での再開となった。そのまま午後6時20分を迎えて実質パレードランによるチェッカーとなってしまった。競技規則では、2周以上、規定周回の75%以下の場合、レースは成立するがポイントは半分付与という事だけが決められている。しかし今回、同時に給油回数義務も無効となる事が特別な判断として決定された。これにより、上位はピットを1回しか済ませていなかったチームが締め、既に2回のピット義務を履行していたGSRは16位でレースを終えることとなった。
■チーム関係者コメント
もう少しタイヤが保っていれば面白い展開になったはずでした。本来なら谷口への交代はもっと後でしたし、そのタイミングだとセーフティカーに合わせて入れたでしょうし、とても良い位置にいた可能性はありますよね。前日午前は(低気温で)グレイニングに苦しみ、決勝は暖かかくなる予報でタイヤが保つ……と思ったのが失敗でした。なので今日は、早めに入らざるを得なかった時点で、実質的な勝負は終わっていました。レース自体もあまり良い終わり方じゃなかったですね。それと2回義務……最後に無くしてしまうなら義務にしなきゃよかったのでは? 秒加算するか、ペナルティにした方がスッキリしましたよね。次の鈴鹿もタイヤが保てば良いですし、あとはリストリクター次第ですね。
前日からロングランもきちんとこなし、各温度のタイヤライフも確認できていて、すべきことを全部やれた。そこまで悪い要素はひとつもなかったのに、少し1セット目のスタートタイヤが……というところですね。ドライバーも(予選から)本当に丁寧にやってくれていたのに、なぜか保たなくて。スタート進行のグリッド上では、クルマが何か壊れたのかと思ってチェックしました。幸いにして全員の勘違いで壊れていなくて、全然大丈夫。それでスタートして『なんともないかな』と思ってたら『タイヤが厳しい。もう、オーバーヒートしてる』ということになり、それでペースを落とすしかなくなった。ちょっと暑過ぎましたかね……。性能調整の面でチャンスのある富士で結果を出したかったけど、残念です。
開幕から2戦連続で荒れたレースになり、決勝直後で詳細は分かりませんが、ドライバーやファン、お客さんに大きな怪我なく大惨事には至らなかった。その点だけは不幸中の幸いではありますが、ここ数戦、ちょっとエキサイトし過ぎてるところはあるかもしれないですね。我々のレースとしても、周囲のみんなは「可能性あるかも」と淡い期待を抱いていましたが、普通に考えれば厳しいのは明らかで。予想どおりラップタイムが良いわけでもなく、タイヤの保ちが良いわけでもなく。セーフティカー頼みのプランでも、我々が願う作戦に届かない。本来なら残り45周を担当するはずも、給油量を含めて保たないことが前提で、もう1回タイヤ交換をするしかない。その時点で勝負権なし……でした。
基本として、単純に”攻めた作戦”を採りました。でもそれぐらいしないと、なかなか良い結果や大量得点は狙えないんじゃないかな、ということ。練習走行で(タイヤライフの)裏付けは一応……取ってはいたんです。でも5周目給油の時点で『もうヤバいな』という感触で、コース復帰後も自分の理想としているペースにもそうだし、フィーリングもそうだし、とにかくタイヤを保護して走らないと『ヤバい』という状態。結局、前後とも(グリップが)無くなり、そのまま走ってもどんどん戦況が悪くなるだけ。いずれにせよ、タイヤとコンディションのマッチングが想像と外れていたことが最大の敗因です。正直、どんな内容のレースだったとしても、多分、今日の我々はポイントを獲ることも難しかったんじゃないかな。