GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 6
2022 AUTOBACS SUPER GT Round6 SUGO GT 300km RACE
会期:2022年09月17日~18日
場所:スポーツランドSUGO(宮城県)
観客:予選8,300人 : 決勝17,000人
予選:15位
決勝:26位
獲得ポイント:0Pt
シリーズ順位:8位(24Pt)
第5戦鈴鹿サーキットでGOODSMILE RACING & TeamUKYOとして5年ぶりの勝利を飾り、同時に初音ミク GTプロジェクトとしても初の鈴鹿制覇という”ダブルのブレイクスルー”を達成した。谷口信輝選手/片岡龍也選手の4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは、この勝利でドライバーズポイント20ポイントを獲得し、シリーズランキングは18位から一気に5位まで浮上、さらに上位を詰めるべく第6戦スポーツランドSUGOに乗り込んできた。
今回のMercedes-AMG GT3に課された性能調整(BoP/バランス・オブ・パフォーマンス)は、エンジンパワーを制限する吸気リストクターのサイズは変わらず34.5mm×2。BoP重量は昨年同様の35kgが載り、いつも通りFIA GT3規定モデル最多重量の1320kg。4号車には、そこに前戦の優勝で得た20ポイントによるサクセスウエイト(=SW)60kgが増え、トータル72kgを搭載する。
競技規則によりシリーズ第7戦でSWが半減、シリーズ第8戦でノーウエイトになる為、シリーズ第6戦は1年で最大のウエイトを搭載した状態での1戦となる。この週末は、ウエイトが減る終盤2戦に向けていかにポイント獲得を達成して次に繋ぐかが焦点となる。
【9月17日(土)】公式練習、公式予選
天候:曇り
コース:ドライ
気温/路面温度 :Q1開始時 25℃/36℃
Q2開始時 25℃/34℃
天気予報では台風14号への警戒が連日呼びかけられており、西日本から関東近辺が豪雨に見舞われていたが、東北地方に位置するスポーツランドSUGOへの影響は少なく、雲は多いながらも青空も見えるコンディションとなった。午前9時25分、気温24度、路面温度30度のドライコンディションで公式練習が始まった。
走り出しを担当した片岡選手は、コースオープン直後にピットを後にし、確認を進める。まずは計測7周目に1分19秒893を記録し、持ち込んだもう1種類の確認をする為、一度ガレージへと戻る。
履き替えた新たなセットで14周目に1分19秒446までタイムを伸ばし10番手とすると、ここからは「テストすべきものがいくつかあって、この週末はそのテストをするためのイベントにしようと、そういうつもりでいました。重さへの対応もありますし、このSUGO向けに新たな方向性を試しましょうということ」(安藝貴範代表)との言葉どおり、片岡選手のフィードバックをもとに、セットアップ調整を行う。
19周目に1分19秒355の自己ベストを刻むと、ここから何度も計測1周でのピットインへ繰り返し、マシンセッティングの調整を進めていく。そのまま片岡選手がGT500クラスとの混走時間を走り切り、午前10時50分のGT300クラス専有走行を前に、ようやく谷口選手にスイッチする。
谷口選手は、10分間の短い時間で車両バランスの確認を行う。さらに午前11時20分から20分間行われたFCY(フルコースイエロー)テスト枠でも引き続きステアリングを握り、午後の予選に備えた。
厳しいBoPを課せられた上、SWを72kg搭載する4号車グッドスマイル 初音ミク AMGにとってQ1突破は容易ではない。そのQ1アタックドライバーには公式練習でマシンセッティングを担当した片岡選手が担当することになった。今大会もQ1はポイントランキング順で2組に振り分けられ、4号車はB組で出走する。
午後2時48分、Q1B組セッション開始。シグナルがグリーンに変わると、片岡選手は間髪入れずにコースインした。A組より1台少ない全13台のうち、片岡選手はコース上の4台目でウォームアップを進める。そして計測4周目のアタックラップで1分18秒968を記録し、コントロールライン通過時点で暫定4番手のタイムを叩き出す。
その後ライバルのタイムアップと共に順位がじりじりと下がる中、片岡選手は連続してアタックを続けるが、すでにタイヤのピークが過ぎたか自己ベスト更新には至らない。しかし最終的にカットラインギリギリとなる8番手でQ1突破を達成した。
「これまで、僕のやりたいこととエンジニアたちが『やるべきだ』と思うことの溝が大きかった。今回もセッティングを詰めていく中で意見の相違があり、僕なりにいろんな部分で自信があるところも多かったから、結構な部分で僕の意見を押し通した。多分エンジニアたちがデータからでは気づきにくい……乗っているからこそ感じられるその部分で、ある程度の方向性は示せたから良かったなと思います」と語った片岡選手。自ら押し通したセッティングのマシンを操り、72kgのSWを跳ね除ける、まさに有言実行の走りでQ2進出を決めてみせた。
そんな相方の好パフォーマンスを受け、谷口選手も午後3時23分からのQ2で奮起。午前はまったくニュータイヤを履いていない”ぶっつけ本番”の状態にも関わらず、全16台中コース上2番目で早めの仕掛けを進める。そして計測3周目には1分18秒867で通過時点3番手、続く4周目でさらに自己ベストを更新し1分18秒653で、通過時点9番手のタイムを記録する。
しかしその後はわずかな路面状況の差や軽さで秀でるライバル車がタイムを更新し、15番手まで後退する。その後、予選後に行われた車検で、トップタイムを出していた96号車が不合格でタイム抹消となった為、4号車は14番手スタートで上位を狙う。
【9月18日(日)】決勝
天候:曇り/雨
コース:ドライ/ウエット
気温/路面温度 スタート前(13:55)28℃/36℃
序盤(14:30)27℃/32℃
中盤(15:30)26℃/30℃
終盤(15:58)25℃/28℃。
予選を終えた土曜の晩。チームのメンバーが仙台市内で夕食をとる中、谷口選手を異変が襲う。「あまりに元気がなかったし、かなり痛そうだったから『早く帰りなさい』って帰したんです。でもそのあとに、やっぱり耐えられなかったようで……。」と安藝代表が明かすように、谷口選手を襲った腹痛は深夜に悪化し、ついに救急病院に搬送される事態となった。医師による診断は『虫垂炎』。手術の上、数日の入院が必要との判断が下された。
明けた日曜の午前10時30分を回り、チームは公式Twitterを通じてリリースを発表し、決勝は片岡選手ひとりで参加することが出来るよう、シリーズを運営するGTA側と調整に入る旨をすべてのファンに伝えた。
ただし競技規則ではドライバーの最大走行可能距離はレース距離の3分の2が上限と定められ、この時点で代役ドライバーの登録も期限的に不可能なことから、自動的に「レースでの完走は果たせない」ことが決まってしまった。
それでも「サーキットに逢いに、レースを観に来てくれたファンに。そして画面の前で応援してくれるすべての人たちのために」4号車グッドスマイル 初音ミク AMGを走らせる準備を進めたチームは、午後0時40分からのウォームアップ走行でいつも通りのプログラムを進め、決勝レースに向けタイヤの摩耗度合いやマシンバランスの確認作業を進めていく。
レーススタートが近づくにつれ、黒い雲が現れ、スタート進行中ときおり雨粒が落ちきたが、なんとか持ち堪え、ドライ路面のまま各車がグリッドを離れ、宮城県警先導のパレードラップへと向かう。
すでにスタート前からリタイア予定が確定していたGSRは、レースリザルトへの影響を最小限に抑えることを考慮し、フォーメーションラップ中にピットレーンへ戻り、隊列との距離を置き、最後尾からのスタートを選択する。
レース距離84周に対し3分の2となる56周を目標に、ピットロード出口のシグナルがグリーンになるとスタートする。オープニングラップの2コーナーで9号車(PACIFIC hololive NAC Ferrari)のクラッシュによるいきなりのセーフティカー導入で集団に近づく展開となったものの、混雑した状況のなか1分21秒〜23秒台で周回し、一時20番手までポジションを上げる。
すると12周目を前後してコース上に雨粒が落ち始め、周囲がたまらずウエットタイヤへの交換を強いられるなか「ここまで懸念事項があったところも……このチョイ濡れだとか、乾きかけのウエットだとか、いろんな条件でのパフォーマンスも確認出来て、しかもそれが『高そうだ』ってところも確認出来た」という片岡選手が、スリックタイヤのままステイアウトして貴重なデータ収集に励む。
87号車(Bamboo Airways ランボルギーニ GT3)がグラベルに捕まりFCYが出る間も、トップ10圏内をスリックタイヤで走り続けた片岡選手は、雨脚が強くなってきた為、26周を終えてピットに向かう。ここからはウエットタイヤのテストとばかりに1分31秒台を並べ、上位グループと同じタイム推移で周回を重ねていく。
雨が弱まり、コース上の水の量も減ってきたことから41周目にライバル勢より一足先にスリックタイヤへ戻す。コース復帰後の46周目には1分26秒341と、この時点でコース上最速の1台となる。48周目にはレインボーコーナーでGT500の車両と交錯し、スピンを喫する場面もありつつ、53周目には1分21秒116、55周目には1分21秒201と、序盤8周目の自己ベストである1分21秒107に迫るラップタイムを刻み、予定どおり56周目にはピットへとマシンを戻した。
最終的なリザルトは、規定周回数の70%(トップは79周チェッカー)を超えたことで完走扱いとなり、26位でチームランキングでの1ポイントを獲得した。
続く第7戦オートポリスは、昨季はオーバーテイクショーを披露してシングルフィニッシュを成し遂げた相性の良いトラックでもある。SW半減の条件も活用し、谷口選手とともに復活のレースを期待したい。
■チーム関係者コメント
谷口は全然大丈夫。無事決勝レース前に手術も終わって、本人から『終わりました』って連絡も入ってました。お腹は痛かったみたいですし、心配しましたが、取り敢えずひと安心です。ということで、週末は全般に良いテストになりました。決勝を使ってテストが出来ることなんてあんまりないですし、本当にそういう意味では良かったかもしれない。手応えもありましたしね。ただこれ、レース出来てたら良い位置にいましたね。ペースも結構良かったですし、5~6番手は行けたな~と。この週末に向けては、当初からそれこそ『レースを捨てる』ではないけれど、レースよりもテストが大事、という姿勢でいたところ。そのなかでちょっと光明は見えて『戦い方を変えましょう』という判断が出来た。結果Q1も通ったし、レースでもペースが良かったので、収穫は多かったかな。
谷口は昨日、運ばれる前に仙台市内の某有名イタリアンで『サラダのL』を食べてたから、そのせいだと思いますよ、多分(笑)。だけど、まさかの盲腸になってたとは……。多分、食べ過ぎだと思ってたから、胃薬はあげたんですけどね。と、冗談はさておき。土曜は本当によく走ったと思います。谷口本人はそれまでニュータイヤも履かないで予選1発に行ってね。そういうのはやはり、さすがですね。出走に関してはレギュレーションどおりで、ちゃんと2/3走るのも確認して。スタート直前に坂東さん(正明GTA代表)が「最後まで全部走れば良いじゃないか」って言ってくれたけど、審判団からしたら当然無理ですし。今回は新しいテストを予定するなか、谷口がもう走れないから決勝はテストに徹して。そういう意味ではすごく収穫はあったから、良かったですよ。
谷口さんの手術も上手くいって安心、とりあえず良かったなと。今回は練習走行から新しい試みもあって、セットアップも探って。良くはなったものの、日曜も「まだいろいろ試したいよね」と。ただふたりで乗るし、あまり思い切ったことはせずに行こうとしてたんですが、今回は谷口さんが体調不良で乗れない、となったので、逆に「完全にテスト」と割り切って。やりたかったことも試せたし、結果それに良い感触もあったので、乗れなかったことを無駄にはせず。レースも邪魔しちゃいけないと思ってピットからスタートしたり、96号車に譲ったりしてましたけど、もし今日、本気で戦っていたとしても、結構良いレースが出来たなって。イレギュラーだけどそのなかでやるべきことはやれたし、このチームだからどんな状況にも対応出来るかな、と。パンク、優勝、盲腸ですから(笑)。