GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 3
2023 AUTOBACS SUPER GT Round3 SUZUKA GT 450km RACE
会期:2023年06月03日~04日
場所:鈴鹿サーキット(三重県)
観客:予選11,000人 : 決勝22,000人
予選:17位
決勝:18位
獲得ポイント:0Pt
シリーズ順位:21位(2Pt)
平年より1週間ほど早い梅雨入りが発表された6月初週末の鈴鹿サーキットで、2023年SUPER GTの第3戦が開催された。この週は非常に強力な勢力を持つ台風2号が日本列島を南から襲い、チームがサーキット入りする金曜日は西日本で大雨となっていた。雨量は朝から昼にかけて急激に増大し、午後からは東海道新幹線が運休、主要高速道路が軒並み通行止めになるなど交通網は大混乱に陥った。金曜にミーティングがあったドライバーや監督はその混乱の直前にサーキットに到着できたが、翌日も交通網の混乱は続き、予選日朝のサーキット入りを予定していたミクサポ達がサーキットに辿り着いたのは予選がとうに終わった夕方近くというありさまだった。
鈴鹿サーキットでのMercedes-AMG GT3へのBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)は厳しく、エンジン出力を左右する吸気リストリクター径は、開幕戦同様の34.5mm×2。BoP重量は『+35kg』となり、車両総重量1320kgとNissan GT-Rと並んで全車両で最重量となる。
戦績に応じて追加されるサクセスウエイト(SW)は、開幕戦で得た2ポイント分の6kgとまだ影響は少ない。しかし、鈴鹿サーキットはコース幅が比較的狭く、非常に抜きにくいコースとして知られており、同時に”タイヤに厳しいサーキット”ととも言われる。その為このレースは、予選で少しでも上位を取り、決勝レースをできるだけ前からスタートする事が肝心だ。
今大会は前戦同様、レース距離450kmで争われ、決勝スタートからフィニッシュまでに『最低2回の給油』が義務付けられる(セーフティカー運用中の給油は認められるが、義務回数にはカウントされない)。2回の義務をどのタイミングで消化し、それぞれのピット作業の内容をどう組み立てるか、ピット戦略もレースの行方を大きく左右する。
6月3日(土)【公式練習、公式予選】
天候:晴れ
コース:ドライ
気温/路面温度
Q1開始時25℃/40℃
Q2開始時25℃/38℃
予選日の朝、鈴鹿サーキットのある三重県では夜中のうちに雨が上がり、早朝まで残っていたコース上のウエットパッチも朝から行われたサポートレースの走行でほぼ解消されていた。しかし前日の強い雨によりコースに載ったラバーは洗い流されておりグリップレベルが低い”グリーン”な路面になっていた。
サポートレースで起こったクラッシュの影響で、予定より5分遅れた午前9時15分に公式練習が始まった。走り出しを担当する片岡選手は、気温23度、路面温度26度のコンディションの中、コースオープンと同時にピットを後にした。
片岡選手のドライブする4号車グッドスマイル初音ミクAMGは5周目に1分58秒674を出して2番手に立つと一旦ピットへ。持ち込んだタイヤの評価の為、異なるセットに履き替えてコースへと戻る。
11周目には1分58秒082までタイムを詰め、ここからは断続的にピットでの作業を繰り返し、セットアップを詰める作業を進める。片岡選手が21周を走ったところで、谷口選手にステアリングを託す。
ここから2分01秒台で周回し、車両の感触を確かめた谷口選手は、午前10時40分からの占有走行を前に一度ピットへ帰還。本来なら予選シミュレーションを実施したいその10分間の枠でも、タイヤ評価を軸に決勝を見据えたロングラン重視のメニューをこなし、谷口選手の自己ベストとなる1分59秒560を記録してセッションを終えた。
4号車は序盤に記録したタイムがベストタイムとなりクラス8番手。しかし片岡選手は「感触は芳しくない」と語った。午前11時10分からのFCYテストと、同11時40分からのサーキットサファリ枠も片岡選手が担当し、予選に向けて更にセットアップを詰めていく。
サーキットサファリでは新幹線の運休の為に、サーキットに到着できなかったミクサポ達に代わって安藝代表と右京監督が乗り込んだ。思わぬゲストの登場でサファリバス参加者は多いに盛り上がった。FCYテストでは10周を走りトップタイムながら、サファリは7周を走って16番手となった。
午後の予選はいつもどおりGT300クラスのQ1はA組とB組に振り分けられる。4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは今回はA組となり、午前のセットアップを担当した片岡選手が担当した。
セッション開始予定時刻の午後3時05分時点で気温は25度と横ばいながら、路面温度は40度まで上昇した。しかし直前のサポートレースでサーキットの広範囲にオイルが撒かれるアクシデントが発生し、その処理に時間がかかっていたため、20分ディレイとなっていた。
午後3時25分、片岡選手はコースへと向かうとゆっくりしたウォームアップラップで高い路面温度とタイヤグリップ発動の感触に集中する。4周目、最初のアタックは1分58秒692で8番手。Q2進出カットラインのギリギリの順位な為そのまま連続でアタックに入り、次周では1分58秒442まで詰めて背後の9号車(PACIFIC ぶいすぽっ NAC AMG)に0.007秒先行するも、この時点で9番手。8番手の65号車(LEON PYRAMID AMG)に0.405秒届かず今シーズン初めてQ2進出を逃がし、翌日の決勝レースはクラス下位の17番手スタートとなってしまった。
6月4日(日) 【決勝】
天候:曇り
コース:ドライ
気温/路面温度
スタート前(13:20)28℃/41℃
序盤(14:05)26℃/37℃
中盤(15:05)26℃/34℃
終盤(15:31)25℃/33℃
ゴール(15:45)25℃/34℃。
前日に移動できなかったファン達もサーキットに到着し、晴天の下で行われた午前中のピットウォークは本来の賑わいを取り戻していた。前戦の富士では片岡選手の誕生日を祝ったが、今回は先月18日が誕生日だった谷口選手と、いよいよ還暦を迎えた右京監督の誕生日を祝い、大勢のファンがふたりを祝福した。
正午を過ぎ、決勝スタート担当の片岡選手がウォームアップ走行へ。2分1秒台から3秒台と、ロング周回のタイムとしてもあまり芳しくないペースで9周を走り21番手でセッションを終えた。
午後1時30分、気温は28度ながら路面温度はこの週末最高の46度にまで上昇。チームはこの条件で「なんとか使えそうなセット」を選択し、決勝スタートを迎える。
三重県警交通機動隊の先導によるパレードラップから、セーフティーカー先導のフォーメーションラップを経て決勝レースがスタートした。
スタート直後、予選4番手の2号車(muta Racing GR86 GT)や、目の前の16番グリッドスタートの7号車(Studie BMW M4)の他、後方グリッド車両を中心にスタート直後に給油作業へ向かい、早めに義務を消化しようとするチームが動きを見せ、相対的に4号車はラップごとにポジションを上げていく。
6周目、給油義務を消化する為にピットに入った18号車(UPGARAGE NSX GT3)がタイヤ交換時のミスにより、ヘアピンで右リヤホイールが脱落し、コース上にマシンを停めてしまう。車両回収の為、FCY(フルコースイエロー)の宣言からすぐにSC(セーフティカー)へと切り替わる。
チームは、SC中のピットレーンオープンとともに片岡選手を呼び戻す。前述のとおり”SC運用中の給油は認められるも、義務回数にはカウントされない”が、給油とタイヤ交換のフルサービスを実施する。コース上の隊列はSC先導でスローペースなことから、次回のピット作業時間を減らすことが可能となる。再スタートが切られた2周後の14周目には義務消化を狙った”スプラッシュ&ゴー”を敢行。最小のロスでコースへ復帰する。
これで4号車は22番手までポジションを下げたが、周囲のライバルも1回目の義務給油に向かいだし、ジリジリとポジションを上げていく。しかし、ラップタイムが2分2秒から5秒ぐらいとペースが上がらず、コース上では26周目には20号車(シェイドレーシング GR86 GT)、28周目には10号車(PONOS GAINER GT-R)と、ダンロップタイヤを装着する2台に先行を許してしまう。
30周目、4号車の目の前にいた88号車(JLOC ランボルギーニ GT3)が130Rで高速スピンを喫するが、かすめるようになんとか回避する。その後もペースは変わらず、56号車(リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R)や、31号車(apr LC500h GT)にも先行される苦しい展開が続く。
周囲も2回目の義務給油とドライバー交代を見据えて動きを見せ始めた40周目、チームは片岡選手を呼び戻し、谷口選手へとスイッチし、フルサービスでコースへ送り出す。
25番手でレースに復帰し、45周目に2分01秒099とレース中での自己ベストラップを更新するなど、中盤までの苦しいペースから若干の回復を見せて前を追う。谷口選手はコース上で5号車(マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号)を仕留め、周囲のピットインもあり20番手圏内まで浮上した。しかし54周目、重大アクシデントが発生する。
130Rでバトルを繰り広げていた87号車(Bamboo Airways ランボルギーニ GT3)と30号車(apr GR86 GT)のさらに内側に、GT500の23号車(MOTUL AUTECH Z)が飛び込み、バトル中の30号車と接触してしまう。世界的に有名な鈴鹿名物の超高速コーナーで最高速に近い車速のまま23号車はスピンするとアウト側にいた87号車にも当たり、完全にコントロールを失ってシケイン手前のタイヤバリアに激突。マシンはバラバラになりながら勢いを失わず、更に舞い上がってその上のキャッチフェンスにも激突した。弾き飛ばされた87号車はタイヤバリアに激突後、スピンしながらコース上をシケインまで滑走してストップする。見ていた誰もがドライバーの生命の危険がある事故だと分かる大クラッシュに、速やかにSC導入が宣言され、その後すぐにレッドフラッグが出されてレースは中断となった。
サーキット中が緊張して見守る中、87号車のドライバーは自力で車を降り無事を確認、23号車のドライバーも救助活動の結果、無事が確認されサーキットは安堵に包まれた。しかしフェンスやバリアなどの安全設備はすぐには修復不能と判断され、レースはそのまま終了となり、その時点での順位がレース結果となった。この結果、4号車グッドスマイル初音ミクAMGは18位完走でレースを終えることとなった。レースは序盤のピット戦略が奏功した7号車Studie BMW M4が優勝した。
■チーム関係者コメント
現時点では伝え聞いた情報でしかありませんが、とにかく今日は(事故を起こした23号車の)松田選手が無事だったということが何よりです。我々の週末としては、タイヤがハマりませんでした。それに尽きますし「それですべてです」という感じですね。土曜の午前から(ピットに)出たり入ったりを繰り返して、それが週末の最後までずっと続いたようなイメージで、本当に苦しい状況でした。事前のテスト(第2戦富士直後に開催の鈴鹿テスト)では、ちょっと良い感触もあったような気がしたんですが……どうやら幻だったようです。昨年は初めて優勝もできて、長年のジンクスを打破できたサーキットだったんですが、状況の厳しさは相変わらずでした。次はまた富士に戻りますし、カレンダーの中で”唯一”と言っていい可能性のあるコース。前回の反省も踏まえて、また頑張ります。
まずは松田次生選手が無事であるということを聞いて、ホッと一安心ですね。
レースに関しては使う道具の中でさらに性能調整があって、その上で「どうやったらコンマ3を削ってこれるか」ってことを、本当に重箱の隅を突く思いでやっていましたが、結果はこの通りでした。問題は簡単に改善できるわけではなく、まず理解をチームで共有して深めて、それからどうやって解決するのかという議論をしてという、なんだか数年前の状況に戻るようですが、スタート地点からもう1回ちゃんと掘り返す必要があると痛感する週末でした。レースでは周囲のグリッド状況や、本来のターゲットなど諸々を踏まえてハードタイヤでスタートしましたが、全くペースが上がらず……。自分たちはまた高い山を超えなきゃいけないな、と思っています。
本当に大きなクラッシュにはなりましたが、とにかく松田次生選手が無事でいてくれて良かったと。仲間から送られた映像も見ましたが、フェンスがあって本当に良かった。
鈴鹿に向けては前回のテストでも良さげな気はしてなかったですが……それがそのままの状況。用意されたモノの中からチョイスしてきて、どれも美味しくはないから「コレとコレんなかじゃ、コレ」っていう消極的選択をせざるを得ませんでした。でもそれって何も解決になってないでしょ、と。今回また公式YouTubeの密着撮影班がついていたとしたら(Rd2/FORMATION LAP: Episode 2『果敢なる冷静』)、今回も公開ナシでお願いしたいくらいダメだった。「速い遅い、本当に勝ってる負けてる」を考えないといけないし、使いこなすこなせないというレベルのタマではない。自分たちの弱点を補完してもらわないといけないんでけどね。
とりあえず今日は、松田選手が無事で良かったなと。それに尽きます。あれを見たらそれまでの記憶が全部飛んでしまって、その前まで何をしてたのか覚えてないくらいの……。
ともあれ、今回は選んだタイヤがまったくマッチせず。予選に向けてはもともと「苦しいかも」とは思ってましたけど「思っていたよりはるかに」苦しく。じゃあせめて、それを選んだ価値が決勝で見い出せればと思ったら……。まあ我々がタイヤを上手く使いこなせなかったんだ、と。決勝はピックアップもしませんでしたし、ただただ淡々と走ったような感じで。SC中のロス削減とかやれることはやりましたが、勝負の輪に届く感じはまったくなく。次の富士では、そこがなんとかなっていることを願って。唯一の武器になりそうな直線速度を活かして、前を抜いていけるレースがしたいです。