GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 8
2023 AUTOBACS SUPER GT Round8 MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL
会期:2023年11月4日~5日
場所:モビリティリゾートもてぎ(栃木県)
観客:予選15,600人 : 決勝30,000人
予選:10位
決勝11位
獲得ポイント:0Pt
シリーズ順位:14位(20Pt)
SUPER GT 2023シーズンの最終戦がモビリティリゾートもてぎで開催された。レース距離は開幕戦岡山、第6戦SUGOに続いて今季3回目の300kmだ。シリーズ全戦に参加した車両には累計獲得ポイントに応じて課されるサクセスウェイトを積載しないルールとなっている為、このレースは全車ノーウエイトでの勝負となった。
また今大会でのMercedes-AMG GT3に課されるBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)はエアリストリクターは変わらず34.5mm、ウェイトは前戦オートポリスより-5kg減り40kg搭載となった。
第7戦終了時点で、GOODSMILE RACING & TeamUKYOには残念ながら今シーズンのチャンピオンの可能性は無くなっていたが、なんとかして表彰台に乗ってシーズンを締めくくることを目標に、谷口信輝選手/片岡龍也選手をはじめチーム一丸となって勝負に臨んだ。
11月4日(土)【公式練習、公式予選】
天候:晴れ
コース:ドライ
気温/路面温度 GT300 Q1開始時 23℃/29℃、Q2開始時 23℃/27℃
公式練習前に行われたサポートレースの予選では、サーキット周辺を覆う濃霧の影響によりセッションディレイがあったが、SUPER GTの公式練習が始まる午前9時25分までには視界はクリアになり、走行は予定通りに始まった。気温15℃、路面温度18℃のコンディションの下、セッション開始と共に多くのマシンがコースへ向かったが、片岡選手がステアリングを握る4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは、路面コンディション改善を10分ほどピットで待ったのちコースへ向かった。
6周目にまずは1分47秒724とクラス6番手のタイムをマークし、その後は持ち込みセットのバランスとタイヤの状況を見極めながらショートランを繰り返す。片岡選手が17周を終えたところで谷口選手にバトンタッチ。ここから4号車はレースペースの確認を行い1分48~49秒台で周回を重ねる。セッション開始時は20℃にも満たなかった路面温度はGT300クラス占有走行枠の10時50分を前に28度まで上昇していた。
谷口選手は占有走行前に一旦ピットへ戻りタイヤを替え、予選シミュレーションに向かう。計測4周目に1分47秒775を記録し、さらにアタックを続けセクター1で全体ベストを記録するが、セクター2以降が伸びず1分47秒901と自己ベスト更新はならず。4号車は片岡選手が序盤6周目に記録したタイムがベストタイムとなり、12番手でセッションを終えた。
直後のFCYテスト枠では片岡選手が再び乗り込み最後のバランス確認を行い、午後の予選に備えた。
午後2時20分、予選が開始された。路面温度は午前のセッション終了時からほぼ変わらず29度。今回もGT300クラスのQ1はランキング順に2グループに分けられ、4号車はB組で出走する。
今回チームは、予選Q1に谷口選手、「”もて”ぎが得意な片”岡”」こと『もておか』選手をQ2アタッカーにアサインした。
午後2時38分Q1B組コースオープン。谷口選手はコースインから2周のウォームアップを経て、最初のアタックを行い、1分48秒291でその時点の4番手へ。さらにタイムアップを狙うべくセクター自己ベストを重ねていく。谷口選手はこのアタックで1分47秒257までタイムアップし、7番手でQ2進出を決めた。
続いて午後3時13分Q2がスタート。片岡選手はセッション開始と同時にコースへ出てタイヤへの熱入れを進める。Q1を走った谷口選手と同じく計測2周のウォームアップでアタックを試みるも、グリップピークが来ていないと感じセクター1でアタックを止め、翌周のアタックに切替えた。片岡選手はチェッカーラップに渾身のドライブを披露し、1分46秒270をマーク。公式練習のタイムより1秒以上縮め上位グリッドが期待されたが、ライバル達もタイムアップした結果1分46秒代前半に7台がひしめく接戦となり、結果10番手で予選を終えた。
11月5日(日)【決勝】
天候:晴れ/雨
コース:ドライ/ウエット
気温/路面温度 スタート前(12:50):23度/28度>中盤(14:00):21度/25度>終盤(14:30):20度/24度、ゴール(15:00):20度/23度。
抜きどころが少なく、ストップアンドゴーが多くて燃費にも厳しいもてぎでは、中段グリッドからの上位浮上は困難というのが定説である。そのためチームは、『タイヤ無交換作戦』というギャンブル性の高い作戦を用意していた。また、FCY(フルコースイエロー)やセーフティカー(SC)発動リスクも高いと考え、決勝は「ミニマム&ロングで、後半は片岡に。もてぎが得意な”もておか”さんに賭けよう」(安藝代表)と、スタートドライバーに2013年第2戦以来10年ぶりとなる谷口選手を起用した。
これにより谷口選手が午前11時30分からのウォームアップ走行でもステアリングを握る。そして普段とは逆になる谷口選手から片岡選手へのドライバー交代の確認も行い、決勝に備えていた。
スタート進行が行われる中、サーキット上空は黒い雲に覆れメインストレート上こそ雨にならなかったものの、サーキットの離れた場所では小雨がぱらついていた。グリッドにウェットタイヤを用意するチームもいたが、幸い本降りにはならず、ドライコンディションでパレードラップ&フォーメーションラップが始まった。
シグナルがグリーンになり、10番手からスタートを切った谷口選手だったが「週末にタイヤを2種類持ってきたうち、土曜時点でもう『硬い方一択だろう』ということでそちらになりましたが、結果やってみると……温まりが悪い(=グリップの発動が遅れる)。こういうちょっとした雨が降ったときには、もう全然ダメ」と、オープニングラップで周囲の先行を許してしまい一気に15番手までポジションを下げた。
さらに5周を前後してサーキット全体に雨粒が落ち始めたことで、路面コンディションが変わるほどではないが、路面温度は下がり出す。これにより4号車は、タイヤが充分に機能する温度に達するまで実に10周以上を費やすことになってしまった。
12周目にようやく11号車(GAINER TANAX GT-R)をパスして反撃の狼煙を上げると、14周目には50号車(ANEST IWATA Racing RC F GT3)を、15周目には60号車(Syntium LMcorsa GR Supra GT)を、そして16周目には7号車(Studie BMW M4)と、立て続けにオーバーテイクを決めていく。これで順位は11番手。谷口選手は予定どおりレース距離3分の1想定の周回を終えた19周目にピットへ戻った。
ここでチームはトラックポジションを挽回すべく事前の作戦通り”タイヤ無交換”を実行して片岡選手を送り出した。この時点で路面温度は24度まで低下。19番手でのコース復帰以降、周囲のルーティン作業もあり23周目に13番手、25周目に12番手までカムバックした4号車は、続く26周目に10番手へと返り咲いた。
前方を行く今季のチャンピオン候補である52号車(埼玉トヨペットGB GR Supra GT)や、同じくGT300規定の31号車(apr LC500h GT)を追う展開のなか、29周目には20号車(シェイドレーシング GR86 GT)のピットで9番手に浮上。32周目にはタイヤ交換を行い作業ミスも重なった61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)と、34周目には50号車のピットで7番手にまで上がってくる。
しかし35周目のターン1で、4号車に文字どおり”衝撃”が走る。ここで18号車(UPGARAGE NSX GT3)に体当たりを受けた4号車はダメージを負いつつ失速、6号車(DOBOT Audi R8 LMS)にも先行を許してしまう。
「まだGT500も2台いて、普通は入らないだろうというタイミングでしたけど、ただチラッと影が見えたから(インを)閉め切らずにいた。多分、閉め切っていたらもっと強い接触になってどちらも飛んだだろうし、リタイアした可能性もありました。ただ、そんなことは速ければ起きないことなので。もうそれがすべてだし、遅い理由は単純に(タイヤを)外したから」と片岡選手が語るとおり、40周目にGT500クラス車両のクラッシュでFCYが発動し、コース上が80km/h上限のスロー走行になると、無交換で大事にしてきたタイヤはふたたび冷え、グリップの回復もままならない。
42周目にレースが再開されるが、冷えたタイヤを温め戻している間に47周目に96号車にパスされ10番手へ。さらに雨が再び落ちてきたところでワイパーが動かないというアクシデントまで発生。冷えたタイヤだけでも苦戦しているところに前が見えなくなった為にますますペースが上げられず、54周目には61号車にも前に出られ11番手へ後退した。
直後にGT500先頭車両がレース終盤でコースオフし、FCY導入。約3周を消化した後にレース再開となったが、58周ですぐにチェッカーを迎え、今季最後の1戦を11位でフィニッシュした。
今シーズン、GOODSMILE RACING & TeamUKYOの最高順位は5位。優勝はおろか表彰台に登壇することも叶わない、厳しいシーズンが終わりを告げた。
■チーム関係者コメント
予選でもう少し前に居られれば、別の作戦もあったかなと思いますが、それで無交換を選び”ミニマム”で、という作戦でした。ただし想定以上にタイヤの温まりが悪く……わかってはいましたが、ピットインして給油している間にも冷えちゃうくらい温まりが悪く、ちょっとしんどかった。予選順位から長い後半を”もておか”さんに託しましたが、タイヤが反応できなかったかな。無交換自体は選択肢として悪くなかったですが、セーフティカーリスクを恐れすぎた。(ファーストスティントを)ロングで、という選択もあったので、ロングの方が結果的には良かったかもしれないですね。今回も途中でSCが入りそうな場面がありましたが、もてぎや富士はちょっとしたアクシデントではSCにならない。そのときにSCリスクをどう捉えるかも課題ですよね。
観測史上一番暑い11月だとか、天気予報では夏日だと言うものの、週末に向かってどんどん気温が下がっていき。タイヤも硬め硬めの方向で、そこで全体的に苦しんでしまった。予選こそ、ここが得意の”TK”がゴリゴリとタイムを出してくれて。もう少し『欲を言えば』っていうのはあったものの(笑)、そこは良かったけれど、やっぱり案の定というか。谷口スタートで行ったら「温まらない、温まらない」で苦しくて。SCリスクでミニマムにし、その後も満タン積んで走っててもFCYが入ってきて、冷えるとまたピックアップ。雨が降って来たらワイパーは壊れるわ、タイヤは温まらないわで……もう全然かみ合わないっていうか、ちょっと今日は何のしようもないレースになってしまいました。
持ち込んだ状態の練習走行から上位に行ける感じはなく、予選も10番手。今回10年ぶりにスタートドライバーに選ばれましたが、タイヤ選択も裏目裏目に出てて。もう1周目から温まりが厳しく、飲まれただけの”ただのダダ抜かれ役”に。追い抜きも、温まって周回数を重ねればこちらの方がちょっと調子が良くなる、ってところで。苦肉の無交換でしたが、やはり片岡も1回ピットに入ったらちょっと冷えるのか、ポテンシャルが下がってタイムが上がらず。雨が降ったら、もうグダグダ。タラレバで言えば、雨が降るってわかってれば無交換じゃなく交代のときにソフトを入れられていればと。最終的に今年は1勝も出来ず、表彰台にも乗れなかった。あの富士でのミスが今でも悔しい。自分の中ではすごく大きくて、そこの甘いワンミスに尽きるなぁ、と思います。
今回は思ったより週末が寒くなったり、雨が降って路温が下がったり、タイヤの特性が極端に合わなくなっちゃった……ことが問題で。単純に(持ち込みの)「タイヤを外しました、何もすることはなかった、ただゴールを目指すしかなかった」という状態でした。さらに雨が降って来るなかでワイパーが壊れ、ストレスが余分に溜まったところで他車にも激突され! 結構壊れてしまったという……。久しぶりに前半スティント担当じゃなかったので、スタートのドキドキもなかった。そして後半もこんな感じになると、もう何も……何もレースをした気はしないですよね。結果的に我々はハナから勝負権がないまま始まり、終わっただけで。ある意味一番……何かもう、どうにもならないというか。最終戦がこんなに不発な感じになってしまい、本当に”達成感ゼロ”です。