GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 4
2024 AUTOBACS SUPER GT Round4 FUJI GT 350km RACE
会期:2024年08月03日~04日
場所:富士スピードウェイ(静岡県)
観客:予選20,600人 : 決勝31,600人
予選:3位
決勝:2位
獲得ポイント:16Pt
シリーズ順位:5位(28Pt)
SUPER GT第4戦『FUJI GT 350km RACE』が今季2度目の富士スピードウェイで開催された。
今大会はレース距離が通常の300kmよりわずかに長い350kmに設定された。このレース距離に合わせて今大会の持ち込みタイヤ数は1セットずつ追加され、ドライタイヤが5セット、ウェットタイヤが6セットとされた。
今回のMercedes-AMG GT3のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)は、車両のBoP重量が35kg、速度抑制策として搭載する追加重量が39kg、ともに前回の富士同様となる計1359kgとなった。さらにエンジンの出力面では高速サーキット用BoPの吸気リストリクター径が、昨季までのΦ36mm×2から35mm×2へとサイズダウンされたため、夏場の影響によるパワーダウンの幅が例年より一層増すものと予想された。なお、4号車に搭載されたサクセスウエイト(SW)はここまでの獲得ポイント分×2kgの24kgだ。
8月3日(土)【公式練習、公式予選】
天候:晴れ
コース:ドライ
気温/路面温度
GT300:Q1開始前33℃/54℃
Q2開始時32℃/53℃
終了時31℃/51℃
午前9時の時点で気温29度/路面温度38度に加え、猛烈な湿気による厳しい暑さの中、公式練習が始まった。4号車グッドスマイル 初音ミク AMGには片岡選手が乗り込むが、セッション開始から6分ほどをピットで待機してからコースへと向かった。
片岡選手は、まずは計測6周目に1分38秒939を記録すると、2度のピット作業をはさんで再び1分38秒9台を3度記録する精度の高いドライビングで、持ち込みセットの確認とタイヤ評価を進めていった。
公式練習が始まって45分を過ぎたところでGT500クラスの車両がトラブルによりコースサイドへマシンを停めた為、赤旗が掲示された。このタイミングで谷口選手へと交代し、ここからロングランの確認を進めていった。谷口選手は15周近くを連続周回し、ウォームアップを除いてほぼ全てのラップを1分39秒台でまとめた。計測27周目には決勝レースを想定した燃料搭載状態で1分38秒923まで詰める力強い走りをみせた。
さらに午前10時25分から10分間のクラス専有走行でも、谷口選手が引き続きステアリングを握った。予選シミュレーションを行い1分38秒394とべストタイムを更新し、クラス4番手タイムと期待の高まる位置でセッションを終えた。
続いて午前10時55分からのFCYテストでは、片岡選手がクルマの仕上がりを確認。計10周を走破して1分39秒000の2番手タイム。午前11時20分からのサーキットサファリでは、最終ラップで1分39秒466としてセッション首位で午前を締め括り、手応えを掴んで午前の走行を終えた。
午後の予選では今大会でもGT300のQ1はチームランキング順に2組に分けられた。今年から採用されたQ1とQ2のタイム合算式では、前戦優勝チームがくじを引き、Q1を先に走る組が決められるが、先に走る組に比べて後に走る組は路面コンディションが向上するため、後に走る組が圧倒的に有利で不公平なルールだと各所から不満の声が上がっていた。これを受けてGTAは第5戦から予選ルールを変更する事を決定していたが、今回のレースまでは従来ルールが適用される為、GOODSMILE RACING & TeamUKYOを含むB組は前戦優勝チームによるくじ引きの結果に従い、不利と言われる先の出走組となっていた。
予選Q1は午後2時25分から開始される予定だったが、直前に開催されたFIA-F4の決勝レースでのトラブルによってコース上に撒かれてしまったオイル処理の為、5分ディレイとなった。さらにこのオイルの処理の結果、前走組と後走組の路面コンディションの差はいつも以上に大きくなる事が懸念された為、”WETフォーマット”が適用される事が決まった。WETフォーマットでは、Q1とQ2のタイム合算は行わず、Q2でのアッパー16下位4台とロワー16上位4台の順位入れ替えもない。Q1出走者は各組の上位8台に残る事にだけ集中すればいいルールだ。
午後2時30分、Q1を担当する谷口選手は、気温33度/路面温度54度まで上昇したコンディションの中、マシンをコースに向かわせた。灼熱の路面に対し丁寧にタイヤのグリップ発動を促し、ウォームアップの2周を走った。周囲のライバルが続々とタイムを更新していくなか、谷口選手は続く計測3周目も1分45秒台とまだアタックには入らない。
4周目、1分39秒254と8番手タイムを出したところで、既に残り時間が30秒。すぐにライバルがタイムアップして9番手に後退してしまった。午前の結果からは想像しなかったまさかのロワー16かとチームが慌てる中、6周目の最後のアタックで1分38秒837の6番手タイムを記録し、無事にアッパー16進出でQ1を終えた。
「実は当初想定に対して(ラップの)カウントを間違えていて、最後はもう1周行けると思っていたら、それがちょっと行けなくて……。最終アタックの前にもタイムは出しているので全然問題はないんですが、もう1周あったらさらにタイムは出るはずだった。(Q1を)通っているから問題ないけども、仮にあれがダメだったら『アブね~』と(笑)。笑い話で済んで良かった」(片山右京監督)
午後3時41分Q2スタート。グリーンシグナルと共にアタックドライバーの片岡選手はコースへ向かうと、早めの動き出しで熱入れを進める。計測5周目に1分38秒335とQ1を上回るタイムを記録してコントロールライン通過時点で4番手、そのままアタックを続けるが、その間、ライバルのタイム更新により一時6番手まで後退。しかし片岡選手渾身の最終アタックは1分38秒093とベスト更新のタイムとなり、3番手へとポジションを引き上げてチェッカーを受けた。
ポールポジションを獲得した65号車(LEON PYRAMID AMG)と、2番手の87号車(METALIVE S Lamborghini GT3)には惜しくも届かなかったが、それでも日曜の350kmレースに向けては、2列目3番手の好位置から勝負を挑むこととなった。
8月4日(日)【決勝】
天候:晴れ
コース:ドライ
気温/路面温度
スタート時(14:30)35℃/56℃
中盤(15:30)34℃/55℃
終盤(16:00)31℃/50℃
ゴール(16:40)29℃/45℃
富士で常連となった予選トップ3ドライバートークショーへは、今回片岡選手が出演。”決勝翌日からのコーチ役”の予定を明かすなど、午前からすでに猛暑のサーキットに詰め掛けたファンに、超過密スケジュール下のレースで結果を出す片岡選手の強さとタフネスぶりを印象付けた。
午後1時から行われた20分間のウォームアップ走行は片岡選手が担当。アウトインでピットへ戻りタイヤ交換を経て11周を走行。終盤に1分40秒363、40秒314とベストを連続で更新するなど、決勝に向けたレースペースの最終確認も上々だった。
午後2時30分。気温35度、路面温度は56度に達するなか、お馴染みの警察車両先導によるパレードラップから350kmのレースが始まった。4号車グッドスマイル 初音ミク AMGのスタート担当片岡選手は、オープニングラップからしばらく3番手ポジションを維持して周回を重ねていく。スタートからポールポジション65号車のペースが速く徐々に逃げられてしまうが、眼の前を走る2番手スタートの87号車には食らいつき、5周目に自己ベストとなる1分39秒892を記録しつつギャップを1秒以内にキープした。
その後も常に40秒台前半を記録する好ペースを維持して周回を重ねるが、87号車の方がわずかにペースが速くなり10周目に2秒差、17周目に3秒差とギャップが広がっていった。4号車の後ろには777号車(D’station Vantage GT3)、88号車(JLOC Lamborghini GT3)、56号車(リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R)が続いていたが、こちらはほぼ1秒差をキープしていた。
25周目、25号車(HOPPY Schatz GR Supra GT)がトラブルでスロー走行し、ダンロップコーナーにマシンを停めた為、FROによる車両回収の為にFCY(フルコースイエロー)発動された。
このタイミングはGT300クラスのピットウインドウが開くか開かないか、レース距離3分の1を超えるギリギリの境界線で、ここでピットインしてもレース後半の状況によっては2度目のピットが必要になるかもしれないという難しいところだったが、首位を行く65号車はここでFCY発動を予見してピットレーン・クローズの直前にピットに飛び込む判断を取った。レース後半にリスクを残すが、これで周囲が上限80km/hのスロー走行を続けるなか、ドライバー交代、給油、タイヤ交換を行うことで、ピットアウト後は後続に50秒以上のマージンを稼ぎ出す結果となった。
一方、片岡選手はFCY解除後にすぐさま1分40秒台に回復、31周目に前方の87号車がドライバー交代と給油へ向かったことで暫定首位に浮上した。それからのラップは1分40秒815、1分40秒532、1分40秒264と、スティント終盤でもまったく衰えないペースを披露してみせた。そして、4号車は35周を走ったところでルーティン作業へと向かい、谷口選手への交代、給油とタイヤ4本交換を行いピットアウト。
「今回(年間では)富士が1番、重量感度が高いという分析がHWA側からもあって。いかに”超ロング”が出来るか、燃料の軽いところでラップタイムを稼げるか。レース全体でのラップをどう縮めるか、というのはすごく意識してセットしていました。戦略も今回はそちら側に寄せていて、いつもだともっと早くピットインして、SCリスクもあるからなんとなくアンダーカットを狙いに行きがち……。なので我々としてはちょっと引っ張りました」(安藝貴範代表)
その判断も功を奏し、4号車はピットアウト後は前回の富士覇者、88号車の鼻先を抑えることに成功し、前方がクリアな抜群の条件で6番手に復帰を果たした。
ここから谷口選手がすぐさま1分40秒台で周回、40周目には1分39秒789として、ジリジリと前回ウイナー88号車を引き離し貯金を作っていった。
44周目にステイアウトしていた2号車(muta Racing GR86 GT)がピットに入ったことで3番手、続くラップで52号車(Green Brave GR Supra GT)もピットへ向かい全車ピット作業を終えたところで、4号車は65号車に続く2番手に浮上した。
その直後に谷口選手は1分39秒732とベストを更新。しかし背後からさらなるハイペースで迫るクルマが1台。予選で6番手だった56号車のJ・P・デ・オリベイラ選手が、3番手にいた88号車を難なく交わすと、勢いそのまま4号車の秒差圏内まで詰め寄ってきた。
ここで谷口選手は50周目に1分39秒959、51周目に1分39秒812と反応し、残りのレース距離やタイヤのマネジメントも考慮しながら、過去に何度もマッチアップした”因縁のライバル”に心理戦を仕掛けた。
「タイヤのフィーリング自体は落ちているけれど、いろいろ『引き出し』を開けて走れば、なんとか40秒フラットだとか、39秒台に入れたりできた。そこを上手く、巧みに使いながら、残り周回数と追いつき方で、相手も『元気になっちゃったり、諦めたり』する。そこは心理戦で、プッシュするところはプッシュして……500などの絡みで詰まったときはちょっと抑えようと」(谷口選手)
そんな”技”も繰り出しながら、56周目には1分39秒502、59周目には1分39秒498と、この日のレースベストを叩き出した。しかし一筋縄で行く相手でないのも重々承知、56号車を引き離すことはできない。
「残り7周でもうベッタリと付かれ、(そこからは)なんとか抑え切ることに徹しようと。あちらはターンインが速い、こちらはセクター3の立ち上がりが速いから、取り敢えず(1周を)守ってセクター3まで行って。最終コーナーを出ればまたちょっと距離が空いて。その繰り返しで逃げ切ろうと」。谷口選手は最後の踏ん張りを見せ、63周目、65周目、さらにチェッカー目前の69周目にも39秒台を計時するドライブを披露して2番手を死守しつつゴールを目指す。
70周目、ちょうど4号車がスタートラインを通過した直後にGT500の優勝車両がチェッカーを受けたことから、更にその直後を走行していた56号車の3位が確定し因縁のバトルは4号車に軍配が上がった。谷口選手は最後のもう1ラップを走って71周を走破、2位でチェッカーを受けて、2022年第5戦以来約2年ぶりとなる表彰台を手にした。
優勝は65号車で、Mercedes-AMG GT3の1−2フィニッシュとなった。一時は1分近くまで開いていた65号車とのギャップは、終盤燃費が苦しくなっていたのかペースを大きく落として走行していた為に縮まっており、ゴール時点で4号車との差は31秒647となっていた。
■チーム関係者コメント
いずれにせよペース的には65号車に及ばず、良い位置で、良いレースだったと思います。ピットにもちょうど良いタイミングで入れて、88、87号車の前に出られたのは大きかった。片岡も軽くなってきたところ、最後の3ラップぐらいで3~4秒は獲得したんじゃないかな。谷口のアウトラップも2周目ぐらいからすごく速かった。なので本当に、総合力が発揮できたと思っています。それで最後は因縁の対決でしょ? 巨人×阪神戦みたいな伝統の1戦(笑)。全体的には、この気温だからチャンスがあったと言えるし、この路気温で強さを発揮するブランド、出来ないブランド、その境界線はいつもこのあたり。合わせ込みの難しさを抱えていましたが、でも「合わせられた」ということは、これからの応用が効くということでもある。出来るだけ鈴鹿も暑くなってくれることを祈りつつ。
週末を通してフリー走行から手応えがあったし、今回は硬めのタイヤでもタイムが出ていた。Q1もね、ちょっとフルアタックではないけど(笑)、ちゃんとスピードがあるから問題なくクリアして。Q2はあとコンマ数秒足りなかったけれど、ポールを獲るより決勝を見据えての硬めだったので。あまり涼しくなると「良くないかな」と思っていたけれど、決勝後半は問題もなく。今回のタイヤは、今後の鈴鹿だとか暑いラウンドが続くときに「このタイヤは良いぞ」という感じの流れではある。ここまでは、割とピーキーな部分もあってバランスを取るのが難しかった部分が良くなって来ていて、ちょっと遅ればせながらではあるけれど、HWAから来てくれているエンジニアも含め、いろいろな分野が噛み合って来ている。取り敢えず、レースは結果が1番なので(笑)、ひさびさに良かったですね。
土曜からロングが良いとはいえ、他を圧倒するスピードはなかった。他を抑え切るぐらいのスピードしかね(笑)。コースインした瞬間から小暮(卓史/88号車)に執拗にヤラレるのを抑えて。ペースを上げて貯金を作ったら、今度はJP(デ・オリベイラ/56号車)がグイグイ追いついてきた。距離の具合も見ながら500にも助けられ、なんとか最後までタイヤマネジメントしながら行くことが出来た。僕は順位を知らずに走ってたので、3位だと思ってたんですよ。終わって「何位なの」って聞いたら「2位だ」っていうから「なんだ、教えてくれよ」と思いながら(笑)。取り敢えず、抜かれず無事に抑え切ってポジションキープして戻れたので、チームをガッカリさせずに終われてホッとしています。鈴鹿も行ってみないとわからないですが、今回の結果がいい狼煙になればと思ってます。
土曜午前は持ち込みタイヤに対する最初のセットアップで少し苦戦したくらいで。結果的に予選にはそれも間に合い、予選以降は表彰台も狙えそうだと。ただ実際にスタートしてみたら、ライバルもほぼ同じ力関係で、ほとんどのタイヤメーカーがほぼ同じようなタイムで30ラップ。なかなか最近の300では見ないようなハイペースなバトルだったし、みんなプッシュし続けて、まるでミドルフォーミュラみたいなレース。そういう意味では面白かったし、レベルも高かった。スティントの最後はちょうど前も開いてたので、フルプッシュで(ピットに)飛び込むところまで来れた。あれは結構、良かったと思いますし、88号車の前に出る上で大きな部分だったかな。周囲のタイヤも垂れないけど、自分たちも垂れないというのは重要な要素なので。そういう意味では次の鈴鹿も楽しみですね。