GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 5
2024 AUTOBACS SUPER GT Round5 SUZUKA GT 300km RACE GRAND FINAL
会期:2024年12月7日~8日
場所:鈴鹿サーキット(三重県)
観客:予選18,500人 : 決勝27,000人
予選:9位
決勝:10位
獲得ポイント:1Pt
シリーズ順位:8位(30Pts)
8月31日と9月1日に開催予定だった2024年SUPER GT第5戦鈴鹿サーキットが、台風10号の影響で延期され、シーズン最終戦に取って代わることになった。これによりSUPER GT史上初めて12月にレギュラー戦が設定され、『SUZUKA GT 300km RACE GRAND FINAL』と命名され開催された。
チームが使用するMercedes-AMG GT3には、今大会も性能調整(BoP/バランス・オブ・パフォーマンス)の重い足枷が課された。車両重量は、基本重量となる1285kgに対しBoP重量が60kg、速度抑制策として搭載する追加重量が39kgと、合計99kgが加算されて、トータル車重は1384kg。そしてエンジンパワーを制限するエアリストリクターにはφ34.5mmが装着される。シーズン8戦目のレースでは年間の戦績に応じて課されるサクセスウエイト(SW)が全て降ろされて、”ノーウエイト”条件になるとはいえ、やはり今回もMercedes-AMG GT3がGT300クラス最重量モデルとなった。
また4号車グッドスマイル 初音ミクが装着するヨコハマタイヤは、基本的に低温条件が苦手な傾向が強い。予定外の冬季レースになったことで今大会はタイヤの持込セット数が通常より1セット増えて、ドライ5セット、ウェット6セットとされたが、そもそも冬季向けに開発されたタイヤがあるわけではない。
近年は散発的に”ハマる(当たる)”こともあったとはいえ、本来ここ鈴鹿はGOODSMILE RACING & TeamUKYOにとって苦手と言われてきたトラックで、今回の条件もやはり厳しいレースを予感させるものだった。未経験の冬の鈴鹿でどのようにパフォーマンス向上の糸口を見つけていくか、それがこのレースウィーク最大のテーマだ。
12月7日(土)【公式練習、公式予選】
天候:晴れ
コース:ドライ
気温/路面温度 :
GT300 Q1開始時 14/24℃
Q2Gr2開始時 14℃/19℃
Q2Gr1開始時 13℃/16℃
Q2終了時 13℃/16℃。
予選日は、澄み切った青空の晴天だったが、気温11度、路面温度12度というオフシーズンテスト並みの真冬のコンディションとなった。
午前9時15分からの公式練習は片岡龍也選手のドライブで、セッション開始と共にトラックイン。このレースウィークはHWAから新しいエンジニアが派遣されており、彼の意見を元にすすめたセットアップにより、終始トップ10圏内で持ち込みタイヤの評価を進めることができた。
片岡選手は自身の計測8周目に1分58秒099を記録し、これが最終的にセッションベストとタイムとなった。
この直後のピットインでタイヤを替えたアウトラップでは、温まる前のタイヤで侵入したヘアピンでスピンしかけてしまい、コーナーにリアから侵入する形になった。しかしドリフト競技も経験している片岡選手はきれいにリカバーして何事もなかったように走行に戻る。この姿は実況放送で終始撮影されておりサーキット中に披露された。
午前10時を回って360号車(RUNUP RIVAUX GT-R)がグラベルにスタックして赤旗が出されると、24周を走破した片岡選手から谷口信輝選手に交代。
谷口選手はウォームアップ後から10分間のクラス占有走行で2分00秒328を記録する。その後今度は48号車(脱毛ケーズフロンティアGO&FUN猫猫GT-R)のスピンにより2度目の赤旗が掲示され、セッションはそのまま終了。15番手で午前の走行を終えた。
予選を前にしたピットウォークでは、ガレージがひとときの祝福ムードに包まれた。
レーシングミクサポーターズの”つっつ”こと荒井つかささんが、GT公式戦での96レースと”スパ24時間”、”鈴鹿10h”と富士スプリントカップなどを合わせて、ミクサポとして100戦に到達。シリーズ恒例の表彰にちなみ、安藝代表、片山監督に谷口片岡両選手、さらにはSUPER GT公式実況担当のピエール北川さんや各メディアまでが駆けつけて、”グレイデッドレースアンバサダー”誕生をお祝いした。
午後の予選は、本来ならGT300クラスのQ1が公式予選のオープニングを飾ってきたが、今回は冬場の低気温コンディションを想定して、より車重の軽いGT500クラスが条件的に温度の高い時間帯で先行する順序となった。また、タイヤのグリップ発動時間もいつも以上に時間がかかる事を見越して、各セッションとも5分間延長された。
午後2時13分、GT300のQ1が開始されると、Q1担当の片岡選手は一度コースへ出てアウトインでタイヤの皮むきと路面の状況を見極めてピットに戻る。ライバル各車がさらに走行を重ねた約5分間をピットで待機し、再びコースへと向かってアタック開始。計測6周目で1分56秒437のタイムを記録し、10番手でQ2のUpper 14進出を決めた。
Q2を担当した谷口選手は、午後3時34分のセッション開始とともにコースへ向かうと、計測5周目で1分57秒572、続く6周目ではこの時点で6番手となる1分56秒383までタイムを縮めた。
この予選では、今シーズン後半から採用されていたものの、その後のどのレースも悪天候で実施できなかった予選”改訂版”フォーマットが初めてその内容通りに運用され、Q1とQ2のタイムを合算した合計タイムでグリッドが決まった。
これにより4号車は合計タイム3分52秒820と前方の6号車(UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI)までわずか0.003秒差の9番手から、今シーズン最後のレースに挑むこととなった。
12月8日(日)【決勝】
天候:晴れ
コース:ドライ
気温/路面温度:
スタート時(12:50)13℃/21℃
中盤(13:20)12℃/19℃
終盤(14:20)12℃/18℃
ゴール時(14:40)12℃/17℃。
中盤戦以降悪天候に祟られ続けた2024年シーズンだったが、この最終戦は快晴に恵まれた。唯一の懸念点となる冬のコンディションも、前日同様の気温11度前後という寒さながら、陽射しのおかげで朝から路面温度は幾分上昇傾向となっていた。
午前11時10分、20分間の決勝前ウォームアップ走行セッションは片岡選手がステアリングを握り走行が開始された。しかしセッション開始直後に60号車(Syntium LMcorsa GR Supra GT)と39号車(DENSO KOBELCO SARD GR Supra)がデグナー進入で接触し、赤旗が出されてしまった。午前11時25分から走行時間は15分間に短縮し再開され、以降のスケジュールはすべて10分ディレイとなった。
片岡選手は、セッション再開後の計測3周目から2分フラットのペースを8周目まで並べてクラス15番手で走行を終え、連続周回でのグリップダウンの兆候やタイヤの振る舞い方を確認した。
今大会も三重県警先導パレードラップで決勝レースが開始された。低気温対策で1周追加された2周のフォーメーションラップを終えると、セーフティーカーがピットに入り決勝レースがスタートした。スタート担当の片岡選手は背後の65号車(LEON PYRAMID AMG)を引き離し、前方の6号車フェラーリに喰らい付いていった。
しかし5周目を過ぎると、タイヤメーカーごとのウォームアップ性能の違いが顕著に見られるようになり、その周にはダンロップタイヤを装着する77号車(D’station Vantage GT3)に、続くラップでは同じMercedes-AMG GT3ながらブリヂストンタイヤを装着する65号車にと、立て続けにオーバーテイクを許す事になってしまった。
その後は、56号車(リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R)がマシントラブルでピットへと戻ったことでポジションを上げたが、ブリヂストン陣営の52号車(Green Brave GR Supra GT)には抜かれてしまった。しかしFCY(フルコースイエロー)解除直後に52号車を抜き返すなど、ポイント獲得の入賞圏内トップ10の範疇で一進一退の攻防が続いた。
11周目、ダンロップの96号車(K-tunes RC F GT3)にも先行を許し10番手へ。15周目にレース最低義務周回の3分の1を超えてピットウインドウが開くと、4号車グッドスマイル 初音ミクも17周目を終えてルーティンピットへ飛び込んでいった。
ここでチームはトラックポジションと、タイヤのウォームアップにかかる時間を考慮し、タイヤ無交換作戦を選択。給油作業のみで谷口選手に交代し、最小限の静止時間でクルマを送り出した。これにより、復帰後は10番手だったトラックポジションも周囲のルーティンが終わるごとにジリジリと上がっていき、25周目には5番手浮上に成功した。
次は前方の4番手にいる65号車追撃態勢へ……と思ったのも束の間。48号車のGT-Rがデグナーをスロー走行で通過し、立体交差の先でストップ。これで2回目のFCYが発動した。この厳寒の時期に、新品コールドタイヤでのピットアウトを避けタイヤのウォームアップ時間をも稼いだ4号車だったが、この80km/h定速走行による温度低下は「ああ、効いた。やっぱり苦しい」(谷口)条件へと追い込まれることに。
ここからFCY解除後のリスタートでも、いちど冷えてしまったオールドタイヤはグリップ回復にも時間を要し、このラップでは6号車フェラーリに。続くラップでは777号車アストンマーティンと61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)にもパスされ、これで8番手まで後退してしまう。
ここから2分03秒台、さらに36周目からは2分02秒台とアベレージラップを上げ、タイヤマネジメントに専念してきた谷口選手だったが、39周目にはダンロップを履く11号車(GAINER TANAX Z)に陥落。そして44周目にはふたたび96号車RC-Fにも捉えられ、からくも1ポイント獲得の10位フィニッシュで今季最後のレースを終えた。
■チーム関係者コメント
ダメだとわかってはいたんですが。万が一『タイヤが持てばいいな』と思ったけれど……ダメでしたね(苦笑)。もう少し、あと少し持てば良かったのに……。我々としても、今週は絶対にグレイニングするし、苦労するだろうと思っていたんですが、今回はHWA AG.から新しいエンジニアが来てくれた。ある種の穿った見方(の払拭)であるとか、準備であったりとかも手順よく出来ましたし、我々も再現性あるノウハウが手に入った……ような気はしています。やはりタイヤの使い方の面でパフォーマンスをいかに出すか。そこでちょっと有益なアプローチを、もしかしたら彼が持っているのかな、という気がします。予選1発なんかは「抜群に良かった」とドライバーたちも言っているので、今までとは方向性が違いますし、そこは光明でポジティブだったとは思います。ただちょっと……ストレートの遅さは如何ともし難いですよね(苦笑)。
歴史上、こんなに寒いなかでやったことはないから「タイヤが無いだろう」と思っていた割には上出来で。温めだけは問題でしたけどね。ただ今回は、HWAから新しいエンジニアが来て、タイヤのピークを引っ張り出す手法というのは、とても勉強になった。いろいろ正しいアドバイスもしてもらって、クルマは機能していましたよね。順位的には10位という……ベストリザルトではないけれど、運で獲ったものではなくて、自分たちが組み立てて獲ったものだから、そこはすごく建設的で勉強になってよかったな、と。今季も数々のHWAメンバーが来てくれて、様々なアドバイスをくれたけれど、今回の彼の引き出しは”次元が違うな”というレベル。まだまだ勉強させてもらえるし、こちらは”幼稚園”だけど、それが中学、高校ぐらい成長したら、本当にヨーロッパで戦っているワークスチームだとか、まだまだ彼らみたいになれる、というのは改めて思えたかな。
後半スティントは無交換で行きました。今回、交換するかしないかは非常に難しい判断だったと思いますけど、やはり交換しなくて”微妙に正解”だったんじゃないかと思います。やはりペースは悪くて、一旦5番手にいたのが最後はポジションが落ちて10番手になってしまいましたけど、交換していても上がってはいけなかったと思うので。あとはもうゴールまでを貯金を使いながらなんとかポイント圏内で終わりたいな、という『損切り作戦』だけでしたね(苦笑)。スタートの頃に雨雲が来ていて「雨が降りそう」 という情報もあって。もし降っていたら”地獄絵図”だっただろうけど、現状の我々はこんな位置でしょう。でも今回来てくれた新しいエンジニアは非常に良い刺激になったというか、少し明るい雰囲気にはなったし、その点は変化の兆しで面白そうかなと思っています。
今回はHWAから新しいエンジニアが来て、クルマもいろいろと見直してもらってポテンシャルもきちんと出て。予選に向けては非常に良いパフォーマンスが出た……出たというか、手応えのある、ひさびさにポジティブな内容でした。とはいえ、メルセデスのBoPじゃ全然……あんなに良い状態でも「9番手にしかなれないのか」という状況で。正直「こんなに良い状態でコレなら、レースはキツいだろうな」と思っていました。レースの方も、スタートで一斉にヨーイドンしてみると、周囲のクルマの加速が良過ぎて、全然。まったくレースができないし、こちらのやることはやっているけど、条件的にまったく同じ土俵にいる感じはなく、ただ走っているだけに。今回HWAのサポートがあって、クルマのパフォーマンス面で発見があったというのは、そこだけが週末を通して得られたもので。規則含め、現状ではなかなか厳しいなあと、感じるばかりですね。