GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 3
2019 AUTOBACS SUPER GT Round3 SUZUKA GT 300km RACE
会期:2019 年5 月25 ~ 26 日
場所:鈴鹿サーキット( 三重県)
天候:晴れ
観客:5 万7000 人(2日間)
予選:6 位
決勝:4 位
獲得ポイント:8P
シリーズ順位:6 位(14.5P)
■FreePractice_QF1-2
2019 年SUPER GT、シーズン前半の勢力図を占う第3 戦が5 月25 ~ 26 日に鈴鹿サーキットで開催され、週末を通じて今季初となる完全ドライ路面で争われた。
GOODSMILE RACING & Team UKYO の谷口信輝選手/片岡龍也選手は、マシンの性能調整や寒い時期のタイヤ発動に苦しみながらも、開幕から2 戦連続のシングルフィニッシュを決めており、ここ鈴鹿ではさらに上位を目指して雪辱を期す決意で臨んでいた。
また、その戦いを後押しするかのように、鈴鹿のグランドスタンドやピットウォークにもいつものように大勢のGSR ファンがドライバーとチームに声援を送るべく詰めかけ、こちらも暑さに負けじとピットウォークは大盛況。
サイン会の列整理や、ステッカー配布なども、ミクサポのみならず参加したファンが自主的にボランティアを買って出るなど、” ともに戦う” 姿が見られた。
また走行セッション中はピット前グランドスタンドで大きな応援旗が揺れ、Twitter で急遽の募集が掛かったGSR 自作の” オリジナルパネルプレゼント” の企画には、一瞬にして多数の応募が殺到するなど、熱のこもった応援が届けられた。
その気持ちに応えるかのように、上空熱波の影響で5 月下旬としては記録的な猛暑の週末に。土曜午後に向けては真夏のような日差しが路面温度を50 度近くまで押し上げることも予想される中、まずは午前に行われる95 分間の公式練習へ。
気候が暖かくなり好転するはずだったタイヤ発動の課題は、季節外れの猛暑のせいか想定していたようなバランスが得られず。セッション開始時の34 度からの路面温度上昇とラバーインによる改善を狙って10 分ほどステイしてからのコースインとなるも、「朝イチはフロントが入りすぎ、セッティングを変えると今度は入らない。そのバランス調整の繰り返し」(片岡)でショートランを重ねてのセッティング変更が続き、「ミーティングで予定していたメニューがまったくこなせない」(谷口)状況となるなど、前戦に続き苦しい出だしに。
いつもどおり走り出しを担当した片岡選手は、途中赤旗中断を挟みながら20 周を走行して1 分59 秒605 を記録。続いてGT300 クラス占有走行を前に乗り換えた谷口選手は、ソフト側のタイヤで1 分58 秒294 のタイムを記録し、セッション3 番手に食い込んだ。
そんなリザルト上のポジションとは裏腹に、予選Q1 通過も「危ういライン」だと判断したチームは、午前の最速タイムをマークした谷口選手をQ1 に起用。このセッションで初めて履くハード側コンパウンドで「乗る前に『あんまり変わらない』って言われたけど、乗ってみたら全然違った」とボヤきながらも、気温31 度、路面温度48 度の条件下でセッション早々の5 台目にコースインすると、1 分58 秒997 を記録する。
午前時点では1 分58 秒フラットも想定していたチームだったが、9 号車(PACIFIC MIRAI AKARI NAC PORSCHE)のクラッシュによる赤旗中断後もタイヤセーブのためアタックせず、なんとか14 番手でのQ2 進出を手にした。
するとここからQ2 担当の片岡選手が午前の鬱憤を晴らすスーパーアタックを披露。路面温度も考慮して早々にアタックラップへ入ると、「思いの外、路面コンディションが良くなっていた」と、ウォームアップ1 周でいきなり1 分57秒909 を叩き出し、GSR のメンバー誰もが「性能以上の位置」という予選6 番グリッドを獲得してみせた。
■Race
迎えた日曜も午前から気温上昇が進み、300km、52 ラップの決勝を前に気温は29 度、路面温度は42 度という真夏のコンディションに。
土曜時点での感触から、この猛暑によりマシンバランスとタイヤグリップの変化が読みにくいことを踏まえて、チームはファーストスティントをミニマムにする戦略を採用。早めのピットでさらにライフの期待できるよりハード側のタイヤに履き替え、先頭集団のいない” 裏側” を走ることでクリーンエアのなかタイムとポジションを稼ごうという狙いだ。
しかし14 時30 分決勝スタート直後のオープニングラップから、依然としてGT3 最重量の1330kg、そして開幕戦と同じ空燃比・吸気制限が加えられたマシンの「戦えなさ」が露呈する。6 番グリッドから発進した4 号車片岡選手の2 台後方、8 番手からスタートした360 号車(RUNUP RIVAUX GT-R)が、ダンロップからデグナーまでの区間で並びかけるだけでなく、「あんなところでまったくブロックしようもないぐらい速度差がある」(片岡)という圧巻のパワー差で進入までに完全に前に出られると、7 番手スタートの34 号車(Modulo KENWOOD NSX GT3)もバックストレート後半の伸びで明らかな差を見せつけられ、オープニングラップで8 番手にまで後退してしまう。
周囲のライバルたちもタイヤのフレッシュな序盤では、いくらコーナーで稼いでもストレートで離される厳しい状況が続き、周回を重ねて相手が落ちてきたところでも、直線の伸びが足りない4 号車は前に仕掛けるシチュエーションにまで持ち込めず。さらに前に追いついて車間が詰まり、後ろのマシンが迫ってくると速度の違いで飛び込まれる……という、ドライバーにはストレスのたまる展開が続いていく。
そんな苦しみのなか、ピットウインドウが開こうかというレース距離約3 分の1 を迎える15 周目に、GT500 クラスの23 号車(MOTUL AUTECH GT-R)が130R でスポンジバリアにクラッシュする事故が発生。このアクシデントでセーフティカーが導入されることになり、20 分ほどの回収作業を終えて21 周目にリスタートが切られると、当初の戦略どおり早めにピットへと飛び込んだ4 号車のみならず、360 号車や5 号車(ADVICS マッハ車検 MC86)など、ポジションを争うライバルたちも同様のタイミングでドライバー交代を行う状況になり、後半を戦う谷口選手にとっては、狙いとは異なる混雑した状況でのレースとなってしまう。
10 周を過ぎた頃からトラックの温度は38 度前後に落ち着き、谷口選手もコースイン直後の23 周目に2 分1秒451 の決勝ベストをマーク。その後も2 分1 秒台を連発して前を狙うも、やはり34 号車NSX、360 号車GT-R の攻略には至らず。我慢のレースが続いていく。
するとチームから「リスクを冒せば前に追いつける」との許可を得た谷口選手は、「タイヤはまったく喰わないけど、俺はズルズルが得意ってだけで」と技を繰り出し、曲がらないマシンを曲げようと、フロントに荷重を掛ければリヤが出る状況を逆手にとり、進入リヤ荷重のままフロントを縁石に引っ掛けて曲げる” 秘技” でギャップを詰め、37 周目に34 号車とともに2 台揃って360 号車GT-R をオーバーテイク。
しかし4 号車の直線速度のなさは決定的な弱点となり、鈴鹿の勝負どころである1 コーナーやシケイン進入などでブレーキング勝負を仕掛けるのは夢のまた夢。そこで狙いを「逆バンク」に定めた谷口選手は、S 字から逆バンク手前の左コーナーで裏技を駆使して34 号車のアウトに並ぶと、「引っ掛けないと曲がらないマシンだけど、なんとか真横でついて行って」ダンロップ進入で技ありのパッシングを披露する。
その直前に88 号車(マネパ ランボルギーニ GT3)がトラブルで戦列を去ったこともあり、終盤に向け5 番手を走行した谷口選手は、47 周目に2 分02 秒615 のラップタイムを記録するなどまったく衰えないペースで前を追う。するとチェッカー目前ファイナルラップのシケインで、優勝争いを展開していた25 号車(HOPPY 86 MC)が燃料系トラブルで突如スローダウンする幸運も拾い、GSR 史上鈴鹿最上位となる4 位でチェッカーを受けた。
前日土曜のピットウォークでは片山右京監督とともにサプライズ誕生パーティが催され、ファンとともに「初めての48 歳」を祝った谷口選手。夕刻キッズウォークでも片岡選手、右京監督とも遅くまでサインに対応するなど、ともに戦うサポーターとのつながりを力に、この週末も「できることをやりきって天命を待つ」、GSR らしいレースを披露してくれた。この姿勢と経験が必ず、灼熱の第4 戦タイ・ブリーラムでも運を引き寄せるに違いない。
■チーム関係者コメント
最後は周囲が苦しむ状況になると谷口が強い、っていうことに尽きる。チームも含めて全体でミスのない動きができましたが、性能調整のせいで簡単に抜かれすぎです。外から見ると「結局4 位でしょう?」とか言われますが「いやいや、全然無理ですから」っていうのが現実。周囲のミスや脱落に救われてるところがあるわけで、もう少し戦わせて欲しいです。「振り向けば4 号車」という格言はいいんですが、トップ争いのできる勝負権がすべてのクルマにある必要を感じますね。タイに向けてはドライバーふたりとも暑さに強いですし、夏は僕らにとっていい時期だとは思ってるんですよ。昨年はトラブルもありながら強いレースができて、まともに戦っていれば表彰台のチャンスはあった。それが再現できればと思います。
どうしてもストレートが遅いのもあり、周囲がタレたところで挽回して、苦しい中でもベストなリザルトを残してくれた。でも同時に、やっぱり勝つには課題は大きいな、とも痛感しました。マシン性能を考えても、予選ではもうTK(片岡選手)がスーパーアタックをして。ちょっと上に来すぎたから、序盤はコーナーでいくら稼いでもストレートがあるたびに抜かれちゃう。それで案の定順位は落としたけど、でもまわりのタイヤがタレてきたら、そういう泥仕合はウチが強いから(笑)。最後は欲を言えばもう1~2 周あれば面白かったかな、と思いますけどね。今日はドライバーを褒める内容で、次のタイはGSR がすごい得意なサーキット。今回のようにやれることをやって、相手の脱落を待つレースになりそうです。
現状のメルセデスAMG は性能調整が苦しすぎて、レースでどうしても飲まれてしまう。直線が厳しいと言いつつコーナーで頑張れるかって言ったらそうでもない感じで、ただただ苦しい。直線が遅いから抜きにくい、周りのペースに付き合わされる。それで500 クラスもコーナー入り口で入ってくる。追いつくから進入で行きたくなっちゃう。正直、今日のレースは4 位なんて行けるレースじゃなかったけど、苦しいときになんとか踏ん張って、今日もよく耐えたなと思います。その我慢の中で落とさないようには出来たかと。ドライではっきりしたのは、まだまだヨコハマタイヤはレースペースでもライバル陣営に負けていて、でも同じタイヤを履くGT3勢のなかでは自分たちが最上位だった。今は我慢の時期ですね。
パフォーマンス自体はあまり感じられない週末で、結果としては予選だけが少し良かった。それで順位はちょっと上に行けたけれど、決してその順位で戦うような準備はできていない。僕のスティントでも前のペースが落ち始めれば、こちらの方が多少ラップペースは速い。ただ、追いつくことはできても、抜くまでのパフォーマンスはない状態。戦略もSCのせいで周りも同じようなタイミングになり、作戦自体に違いのないスタンダードな感じになっちゃいました。でも、後半クリアになってからの谷口さんのペースを見れば、タイヤ選択は良かったし少なくともノーミスのレース。まあ内容的には4 位じゃなかったけど、この順位は上出来ですね、ただ、基本的にはディフェンスしかないレースでしたね。