GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 2
2020 AUTOBACS SUPER GT Round2 たかのこのホテル FUJI GT 300km RACE
会期:2020 年08月08日~09日
場所:富士スピードウェイ(静岡県)
天候:晴
観客:無観客
予選:10位
決勝:27位
獲得ポイント:0P
シリーズ順位:13位(2P)
<Sat.>
■FreePractice_QF1-2
SUPER GT 2020、コロナ渦の影響で異例ずくしとなるシーズン第2戦が、8月8~9日に富士スピードウェイで開催された。開幕戦と同一のサーキットでの2連戦ながら、7月第3週開催の前戦よりも気温が高くなることは確実で、コンディションが異なる。GOODSMILE RACING & TeamUKYOの谷口信輝選手/片岡龍也選手は前戦のリザルトを上回る戦績が期待されていた。
チームは、2020年シーズンに向けて、空力性能をはじめ各部の性能向上を果たした新型Mercedes-AMG GT3を投入したが、GT300クラスに車種別で課せられるBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)は引き続きAMGに厳しく、車重1285kgには+65kgのBoPウエイト搭載が義務付けられる為、総重量は1350kgと、前モデルと変わらずGT3車両No.1の重さである。更に今シーズンはウェイトハンデ(WH)が1ポイントにつき3kgに増えている為、開幕戦9位で獲得した2ポイント分のウエイトハンデ(WH)、6kgを搭載しての勝負となった。
公式練習は、谷口選手のドライブでスタート。天候は晴れ。セッション開始の午前9時45分時点で気温28度、路面温度39度のコンディションでマシンセットを進めていく。
他チームのコースインとタイミングをずらしてトラックに入った谷口選手は、他車のストップによる赤旗中断を挟みながら、持ち込みのタイヤ評価と予選に向けたセットアップを進め、開始約30分経過の2セット目で1分38秒383の自己ベストをマークして片岡選手へとバトンタッチする。
10時30分を回ってからステアリングを握った片岡選手は、まず4周のショートランで各部確認とフィーリングを確かめた後、ロングランへ。10周にわたって1分39秒台を並べるいつも通りの精度の高いドライビングを披露した。GT500車両のトラブルによるこの日2度目の赤旗中断で混走時間が終了した後、10分間のGT300クラス専有走行も片岡選手が担当した。
ここで自身の予選シミュレーションに挑んだ片岡選手は、ベストを0.08秒更新する1分38秒305を記録。その前後ラップでも1分38秒台を刻み、14番手のリザルトで午後の公式予選に挑むこととなった。
このセッションを踏まえ、チームは公式練習でセットアップを担当した谷口選手を予選Q1に起用。今回のQ1も開幕戦同様の組分け方式が採用され、全30台のマシンが前戦リザルトでの振り分けを受け、4号車は前戦に続いてA組での出走に。
14時30分、路気温とも公式練習開始時点からほぼ横ばいの中、グッドスマイル 初音ミク AMGは2周のウォームアップを経た最初の計測で1分38秒017をマークし、4番手へ。さらにここから圧巻の連続アタックを見せた谷口選手は自己ベストを更新し続け、計測2周目の1分37秒台に続いてチェッカーラップで1分37秒641まで縮める。結果はQ1A組ヨコハマタイヤ装着GT3勢で最上位となる5番手でQ2進出を決め、前戦Q1落ちの雪辱を果たした。
A組B組の上位8台ずつ、合計16台での勝負となる予選Q2。担当の片岡選手は最初の計測で1分37秒387とこの日の最速タイムを刻むと、続く周回でも37秒4、37秒6と驚異的精度でのアタックを披露し、現状のマシン性能とタイヤのパフォーマンスを最大限引き出しての5列目10番グリッドを確保した。
<Sun.>
■Race
日曜は、8月の富士スピードウェイらしい熱中症の警戒が必要な暑さとなった。午前11時40分からのウォームアップ走行でマシンバランスの最終チェックをした片岡選手は、1分39秒台前半を並べてレースペースを確認した。気温は前日と変わらずも、日差しの影響で路面温度が42度まで上昇する中、午後1時、300km、66周の決勝レースがスタートした。
今回の第2戦では、イベント開催直前の7月末に「GT300クラスのすべての車両は決勝レースをドライタイヤでスタートした後、ドライバー交代時に同時に4本のタイヤを交換しなければならない」との公式通知があり、無交換作戦が武器のJAF-GT勢やMC(マザーシャシー)勢は牙を抜かれる形になっていた。これによりGSRチームも、リスクを犯した無交換前提や片側2本交換のような奇襲が必要なく、スタート担当の片岡選手から全開勝負を挑む戦略を採った。
ここでもスタートに絶対の自信を持つ片岡選手は期待どおりの”劇場”を開演し、9番グリッドの52号車(埼玉トヨペットGB GR Supra GT)、7番グリッドの5号車(マッハ車検 GTNET MC86 マッハ号)と、開幕勝者と表彰台獲得マシンのJAF-GT&MC勢を仕留め、オープニングで8番手に躍進してコントロールラインを駆け抜けていく。
その後も、想定どおりの1分39~40秒台のペースで力強い走行を重ねた片岡選手は、10周目に360号車(RUNUP RIVAUX GT-R)もオーバーテイク。ドライバー交代の最低規定周回数付近である21周目に6番手までポジションを上げて、谷口選手にマシンを託す。
迅速なピット作業と、コース復帰直後から、谷口選手が1分38秒台を連発する快走したことから、ライバル陣営のピットインが一巡した28周目には、前半スティントで1度前に出られていた52号車を再びかわすことに成功した。谷口選手はそのまま更に前を行く56号車(リアライズ 日産自動車大学校 GT-R)の追撃体勢に入っていく。
しかし、7番手を走行していた44周目に思わぬ事態が発生する。前日の公式練習でもわずかにトラブルの兆候を見せていた左フロントタイヤが悲鳴を上げ、突然のスローパンクチャー。なんとかコントロールを失わずにマシンダメージを最小限に留めてピットへと運んだ谷口選手は、この緊急ピットインで22番手にまでポジションを下げてしまう。
それでも不屈の闘志を見せるグッドスマイル 初音ミク AMGは、トラックへ戻ると目の前にいた25号車(HOPPY Porsche)をすぐさまオーバーテイクし、47周目からは1分38秒675、38秒322、そして49周目にはこの日の自己ベスト、そしてGT300クラス最速のファステストラップとなる1分38秒215を叩き出す怒涛のチャージ。決して諦めない姿勢を見せつける。
しかし18号車(UPGARAGE NSX GT3)を追い詰めようとギャップを縮めたその矢先、53周目に再び左フロントタイヤにトラブルが発生、エアが完全に失われた状態に。なんとか自走でピットに戻るも、2度目の緊急ピットインを経てコースに戻った時には27番手にまで後退していた。残る周回数では挽回することも叶わず、そのまま無念のチェッカーとなってしまった。
6位入賞5ポイント獲得を想定した戦前の予想とは打って変わり、選手権ポイント獲得はならなかったGOODSMILE RACING & TeamUKYO。続く鈴鹿もWHは6kgの軽い条件で臨めるだけに、その逆境を逆手に取りコース特性の大きく異なるサーキットで、昨季のGSR史上”鈴鹿最上位”となる4位超えのリザルトを狙う。
■チーム関係者コメント
ウエイトハンデもあってのお話で我々が速くなったわけじゃないんですが、この短いインターバルの中でも富士対策は出来ていて『6位にはなれたな』と。週末はセカンドスティントの中盤まで誰もがノーミス。ピット作戦もタイヤ交換の作業を変更するなど見直して、作業速度もかなり早くなっていた。それを考えると……残念ですね。逃した魚は大きいですが、たとえ周囲がウエイトを積んでも鈴鹿はまだ早く、期待は次の富士(Rd.5)あたり。そこで大量ポイントを狙えるようにしたい。富士の左フロントは常に警戒しなくてはいけないんですが、パンクの心配をしだすと作戦が立てられないので、そこは気にせず。次も行くしかないですね。
開幕戦からはインターバルが短かったけれども、気温も上がってタイヤは機能する方向だったから、ペース自体は狙ったとおり悪くないしピット作業も順調だった。タイヤに関しては、兆候といってもレースでは心配していなかったんです。なのでタイヤの元気なところで前との差を詰めて、ポジションを上げて逆転入賞を狙っていました。規定変更も加味していつものように『無交換を想定して、2輪だけ』などのリスクもなく、その分(タイヤの)余裕もあるはずで『問題ないなぁ』と思ってたんですけどね……。ただ、それでも6位までしか狙えないなぁ、っていう苦しさはある。次はみんながウエイトを積んでくるから、そういうチャンス狙うしかないですね。
今回は予選Q1をなんとか通過して、それでも『ポジション10』という普通は喜べない順位なんですけど、現状の我々からしたらそこが精一杯。レース前半はスタートから片岡がいつものように順位を上げて頑張ってくれて、4本交換も含めてミニマムで入って、 早めに前に出て、すぐに苦しくなるだろうけど後は抑えるっていう作戦を採りたかった。でもバーストしてしまって、残念ですね……。コーナーで何度もステアリングを修正するので腰が痛いです。今はポイントを獲りたいってすごく低い目標になってますけど、しばし我慢です。終盤戦でみんなが丸々太ったところで、僕らがガリガリに痩せてたらいいなと。そのための今はダイエット作戦ですね。
仮にトラブルなくレースを終えていても、現状のパワーバランスどおりの順位にしかなっていない。ベストを尽くしても本当に良くて7~9位。予選での10番手とか、この辺りが精一杯。ベストを尽くしたレース運びはしてたんですが、前戦のレースからたびたび左フロントの問題があって、今回は決勝中に2回も出てしまった。せめて最後まで走りきって手堅くっていうレースしかできない中で、今回はその手堅さも実現できなかったので、応援してくれた方には申し訳ないというか……。鈴鹿はまた別の特性を持つサーキットになりますし、ターボ勢が速い富士と比べればその差は埋まる方向のはず。チャンスが来たときに行けるような準備をしておきたいです。