GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 3
2020 AUTOBACS SUPER GT Round3 FUJIMAKI GROUP SUZUKA GT 300km RACE
会期:2020年08月22日~23日
場所:鈴鹿サーキット(三重県)
天候:晴
観客:無観客
予選:19位
決勝:8位
獲得ポイント:3P
シリーズ順位:13位(5P)
<Sat.>
■FreePractice_QF1-2
長かった梅雨が明けた後、替わってやってきた連日の晴天と猛烈な暑さが列島を覆う中、SUPER GTの2020年シーズン第3戦が8月22~23日に鈴鹿サーキットで開催された。
今シーズンのGOODSMILE RACING & TeamUKYOの谷口信輝選手/片岡龍也選手は、開幕戦で予選Q1落ちから決勝で9位を獲得して辛うじてシングルフィニッシュできたものの、同じく富士スピードウェイで開催された第2戦では決勝中に2度のタイヤバーストに見舞われてポイント圏外に終わり、苦しい戦いが続いていた。
今季の第3戦の場となった鈴鹿サーキットは、かねてからチームにとって鬼門とも言える”S”が付くサーキットの筆頭だったが、昨年この場でのチーム史上最上位となる4位を獲得した事もあり、好成績が期待される1戦となった。
この2020年より投入された新型Mercedes-AMG GT3は、高速サーキットの富士からこの鈴鹿に向けて性能調整が変更されていた。BoP(バランス・オブ・パフォーマンス)ウエイトは-10kgの55kgと若干有利になるも、エンジンの吸気量を決める重要パーツであるエアリストリクターのサイズは富士用に特別に拡大されていた36mm×2から本来のBOPとなる34.5mm×2へと絞られたため、トータルでの戦闘力はむしろ下げられていると思われる。折角の新型モデルの性能が充分に発揮できるのかとの心配を受けながら、土曜10時からの公式練習が始まった。
気温34度、路面温度44度の暑さをものともせず、セッション開始直後から精力的にショートランを繰り返した谷口選手は、2度のピットインを経て30分ほどを経過したところで2分00秒090のベストタイムをマーク。
しかし鈴鹿サーキットのキーポイントでもあるセクター1ではBoPによる性能低下が顕著に現れ、同じく2020年モデルのMercedes-AMG GT3である65号車(LEON PYRAMID AMG)ともどもクラス下位のタイムしか出せずに苦戦する。4号車グッドスマイル 初音ミク AMGはその上にタイヤのマッチングにも苦しみ、とくにコーナーからの脱出ではリヤがアウト側へ逃げていく様子も見て取れた。
そんな苦しい状況でも、なんとかマシンをねじ伏せる谷口選手は、難しい条件でも毎ラップのように寸分違わぬラインをトレースし、さすがのマシンコントロールでタイヤ評価やセットアップ確認を進めると、20周を走破したところで片岡選手へとバトンタッチする。
乗り換えてすぐレースペース確認のため連続周回へと入っていった片岡選手だが、走り始めて15分を過ぎた頃に赤旗中断で一旦ピットへ。再開後は2分02~03秒台のペースを確認し、そのまま10分間のGT300クラス専有走行へと向かうも、非常に高い路面温度のせいか、ほとんどのマシンがタイム更新ならず。予選シミュレーションでは2分00秒621のタイムを記録し、19番手で公式練習を終えている。
このセッションを経てチームは予選での苦戦を覚悟する。14時30分から行われる公式予選Q1アタッカーは、協議の結果第2戦に続いて谷口選手にQ1突破を託す事を決定した。
予選では、今回もここまでの2戦同様にQ1での組分け方式が採用され、4号車は前戦までの成績順で引き続きA組で出走する。
予選開始となる14時30分、気温は危険を感じる高さになっており、この頃には路面温度も48度まで上昇していた。セッション開始後、3台目でコースインした谷口選手はウォームアップを経た後、セッション残り1分30秒の時点で2分00秒405で8番手タイムを記録する。
しかし8番手は予選Q1通過のカットラインギリギリであり、予断を許さない状況だった為、谷口選手はそのまま連続アタックに入った。このラップでは、セクター1でコンマ4秒を削り取る激走ぶりで、結果は2分00秒246へとタイムアップするが、既に首位から上位9台が2分を切っていた為に10番手タイムとなり、開幕戦以来今季2度目となるQ1落ちとなってしまった。Q1予選A組の走行により路面コンディションが改善した事によって、Q1B組ではさらにタイムアップが見られた結果、日曜の決勝は19番グリッドからスタートするレースとなった。
<Sun.>
■Race
日曜は事前の予報では雨の可能性が囁かれていたが、明けてみれば朝から快晴で酷暑のコンディションとなった。トラックは完全にドライ。正午前のウォームアップ走行では片岡選手のドライブでセッション開始から実に8ラップに渡って2分02秒台のレースペースを確認した。
この時点でヘアピンやスプーンを含む西コースでは、すでに路面温度が50度を超え、厳しかった前日よりも更に厳しい暑さとなっていた。このような中、片岡選手のいつもながらの精度の高いドライビングでコンディションを確かめたチームは、グリッド上で最後の確認を終えて、300km52周の決勝レースへと挑んだ。
今回もGSR安定のスターター片岡選手が前半スティントを担当する。決勝スタート後、オープニングラップから1~2コーナーの攻防で、目の前のグリッドにいた5号車(マッハ車検 GTNET MC86 マッハ号)を早々に仕留めていく。さらに16番手にいた30号車(TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT)がコースオフで戦列を離れた為、最初のコントロールライン通過時点での順位は17番手に浮上していた。
この30号車のアクシデントによりセーフティカー(SC)が導入され、5周目までセーフティーカーランが続く。セーフティーカーがピットに戻りレースが再スタートされると、片岡選手は想定どおりの2分02~03秒台のタイムを並べ始め、前をいく61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)を追走する。
しかし15周目にバックストレート上にGT500車両のパーツが落下した事を受けて、この日2度目のSCが導入されてレースは再びふりだしへ。片岡選手はその解除を狙って計画より少し早めの21周目にピットロードへ飛び込んだ。
谷口選手に交代し、4輪を交換してコースに復帰した際には、一時的に27番手まで下がった4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは、ここから粘りのレースを披露する。
前半スティントより1ポジション硬めのコンパウンドを選択した谷口選手のアウトラップ。目の前には、前戦勝者2号車(シンティアム・アップル・ロータス)が、同じくピットインを済ませたばかりでタイヤをあたためながら慎重に走っていた。
「それでアウトラップは、ちょっと頑張っちゃおっかなって」と、気合の入った谷口選手は即座にオーバーテイクを決めて前に出る。
するとこの日のポールシッター31号車(TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT)の追走を開始しながら、24周目には2分01秒554の自己ベストタイムを記録。周囲のライバル陣営がルーティンピットへ向かうのと合わせて、毎ラップのようにポジションを回復していく。
しかし、4号車が16番手まで浮上した27周目。S字コーナー手前でバトル中の接触からコースオフした21号車(Hitotsuyama Audi R8 LMS)がグラベルにスタックした事により、この日3度目のSC導入がコールされる。
32周目に再びSC解除でレースがリスタートされると、コース上でのギャップが詰まった上位勢や、ルーティンピット組が入り乱れて大きく戦況が動き来始める。4号車は33周目からは11番手、10番手、5号車のスローダウンにより9番手と、毎周のように順位を上げてトップ10圏内へと入っていく。
このあと一旦は2号車に先行されて順位を落としたものの、5番手からドロップしてきた25号車(HOPPY Porsche)をデグナーで捉えて、再び9番手を回復した谷口選手は、40周を過ぎた頃から0.5秒以内のギャップに迫ってきた背後の10号車(TANAX ITOCHU ENEX with IMPUL GT-R)とのドッグファイトを繰り広げる。
ここまで2分04秒台だったラップタイムを、43周目に2分02秒615へ入れるなど最後の死力を振り絞っての応戦を見せた谷口選手だったが、ニッサンGT-R NISMO GT3の圧倒的なパワーによる中間加速には抗えず、続く周にはオーバーテイクを許し、再び10番手となってしまう。
しかしGT300クラスの決勝は残り5周で大荒れの展開となり、46周目には2番手を争っていた56号車(リアライズ 日産自動車大学校 GT-R)と、55号車(ARTA NSX GT3)が接触。フロントを大破したままコース半周を走行した55号車はS字でマシンを止め、56号車はさらに他車とのアクシデントにより、ファイナルラップ目前にして、スプーンでレースを終えるなど、上位ライバル勢の脱落に助けられ、4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは8位でチェッカーを受けた。
予選19番手と苦しいポジションからの勝負ではあったが、レース中に11もポジションを上げ、ドライバーやチーム全員が「ノーミス」の週末を戦って、開幕戦に続くシングルフィニッシュを達成。貴重な3ポイントを得ることとなった。
この後も、車両の性能調整を筆頭に苦しい戦いが続くが、第4戦はシーズンの折り返しとなるツインリンクもてぎ戦が待ち受ける。
9月12~13日と例年の開催時期とは異なる残暑厳しいコンディションや、最終戦恒例のノーウエイト戦とは違い、ウエイトハンデ満載など、難しいシチュエーションでのレースが予想される。
こうした”異例”の条件でこそ強さを発揮するのが、3度のシリーズチャンピオンを経験するトップチームの底力。誰にもデータのない未知のレースでこそ、逆襲のリザルトを手にすることを期待したい。
■チーム関係者コメント
土曜の走行開始からなかなか手応えがありませんでした。鈴鹿は期待して来ていましたが、富士に比べるとBoP(性能調整)が不利で、タイヤ性能に頼る比率も自ずと増えるのですが、結果は苦しみました。レース中は今回もノーミスでしたし、ピットアウト後のアウトラップでちょっと飛ばしすぎた感はありますが(笑)、あそこで抜かなければレースにならないわけですから、天晴でしたね。予選結果を考えれば、いいレースだったと言えるでしょう。
次は暑くて重いもてぎですけど、みなさんそこは条件が一緒ですから。みんなが戸惑ったときの方がチャンスはある。タイヤの使い方なども再考して、どこかで高得点を狙って巻き返さないといけませんね。
土曜から理由のわからない状況が多くあって、一生懸命やっていい感じで来てるのに、タイムが出てないっていう。タイヤにも『グリップのピークが来にくい』とか、ストレート区間だけでも『他と比べてコンマ6秒ぐらい遅い』とかね。パワーサーキットの鈴鹿なのに厳しくて、その分だけコーナーで頑張らないといけないし、攻めるとタイヤの摩耗も進んで無理をする。そんな悪循環のなかで『頑張るしかないな』とは言っても、出口が見えないですね。ドライバーは頑張ってくれたし、ピットは良いタイミングで入れてミスなく出せて順位も上げたし、出来ることは全部やってるなあ、って。そういう状態なのが一番イヤな部分ですね。
後半を担当した決勝ではロングスティントになりましたが、セーフティカーがたくさん入ったから、その都度レースがリセットっぽくなったのは我々にとっては助けになりました。前半の片岡からはもうひとつだけ硬めのタイヤにして、アウトラップではライバルがいたのでまずは追い抜いて、目の前にいた予選トップの31号車についていく展開。でも3度目のセーフティカー明けの頃にはタイヤの元気もなくなり、リヤが厳しくて「前を抜ける感じじゃないな」と。ポイントを獲れたことに関しては、良かったなと思います。が、開幕戦と同じく我々が実力で獲った8位じゃない。なんかもう実力不足なんで、早く……勝負したいすね。
この短い期間で出来ることは限られ、本当に応援してくれてる人には申し訳ないですけど、今回も何もできないのが現実でした。スタートで1台を抜くことはできましたが、いつも最初の1~2周しかレースに参加できない。セーフティカーがなければもっと離されていたし、僕らにとっては恵みでした。鈴鹿ではもう少し戦えるような”幻想”を抱いていましたが、フタを開ければエンジンのパワー、重量、タイヤメーカーどおりの順番になる。淡々と走って周りの脱落を待つレースをするしかない。いつまで我慢をすれば自分たちに良い時が来るのか暗澹たる気持ちです。応援してくれる人は面白くないと思いますが、必ずなんとかしますので、ちょっと我慢して付き合ってください。