GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 7
2020 AUTOBACS SUPER GT Round7 FUJIMAKI GROUP MOTEGI GT 300km RACE
会期:2020年11月7日~8日
場所:ツインリンクもてぎ(栃木県)
天候:晴
観客:2万4900人(2日間)
予選:10位
決勝:2位
獲得ポイント:15P
シリーズ順位:8位(36P)
<Sat.>
■FreePractice_QF1-2
新型コロナ感染症対策の影響で7月に開幕した2020年シーズンも残すところあと2戦。シリーズ第7戦は11月7~8日に今季2度目となるツインリンクもてぎで開催された。
例年なら最終戦が開かれるこの時期のもてぎだが、今回は最終戦ひとつ前のラウンドとなった為、レギュレーションによりもてぎ恒例の『ノーウエイト250kmガチンコレース』ではなく、『ウエイトハンデ(WH)半分』を積載してのレースになった。レース距離も例年の250kmから前回同様に300kmとなる。
これにより32kgのWHを搭載することになった4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは、シリーズ前半の苦戦を挽回してシリーズチャンピオンの可能性を繋ぐべく、狙うはもちろん優勝、最低でも表彰台という意気込みでレースウィークを迎えた。ここまでシーズンを通してチームにとって不利だったBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)に目立った変化はなく、エンジンパワーが大幅に絞られている為ライバルに比べてストレートがとにかく遅い。それでも第3戦から4戦連続のシングルフィニッシュでポイント獲得を続ける谷口信輝選手/片岡龍也選手には、今回も粘り強い戦いが期待された。
土曜午前9時5分からの公式練習は、ここツインリンクもてぎを得意とする『もて岡(『もて』ぎが得意な片『岡』)』こと、片岡選手のドライブでスタート。ドイツ本国のAMGとオンラインで協調しながらマシンのセットアップ作業を進めていく。
片岡選手はコースイン直後の計測4周目に1分48秒673のタイムを記録して、そこからショートランを繰り返しながらセットアップを進める。しかしライバルが次々にタイムアップする中、それ以上のタイムが記録できない。セッション開始50分を過ぎて、GT500車両のトラブルによる赤旗中断を挟んだ後も、セットアップの煮詰め作業が続くがタイムは改善には至らない。片岡選手は10時30分からのGT300クラス占有走行枠直前、22周を走破した後、谷口選手にバトンタッチした。
ステアリングを引き継いだ谷口選手も、マシンの状態を確認しつつ1分49秒7を4週連続で安定して記録するが、順位を上げるタイムは記録できずにセッションを終了した。
Mercedes-AMG GT3とは相性が良く、チームにとって得意なはずのもてぎながら、このセッションのベストタイムはクラス25番手。このままでは午後の予選Q1突破は絶望的で、チームはセッション終了後もセッティングの見直し作業を続けた。
13時30分開始の予選Q1は今回も成績順による組み分け方式が採用され、グッドスマイル 初音ミク AMGは4戦連続Q1B組での出走に。セッティングに不安を残すマシンで、それでもQ1突破を果たすべくチームは片岡選手にすべてを託す。
気温19度、路面24度と、午前から大きく温度上昇したコンディションの中、とにかくQ1突破を狙ったというタイヤをチョイスし、13時48分からのB組セッション開始とほぼ同時にコースへ。片岡選手は慎重にタイヤへの熱入れを進めると、計測4周目のワンアタックで公式練習でのベストタイムを1秒以上上回る1分47秒416のタイムを記録。この時点でタイムボードの3番手に躍り出る。
その後、30号車(TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT)、244号車(たかのこの湯 RC F GT3)、25号車(HOPPY Porsche)、31号車(TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT)、そして18号車(UPGARAGE NSX GT3)が次々とタイムを更新して4号車を上回るタイムを記録していくが、それでも、グッドスマイル 初音ミク AMGはなんとかQ1突破カットライン上の8番手に留まり、Q2進出を果たした。
続いて15時23分からの予選Q2。谷口選手はできあがった路面の助けも借りて計測4周目に公式練習での自身のタイムを2秒以上縮める1分47秒437を記録すると、続くラップもアタックを続け、1分47秒363までタイムを削って、久々のトップ10圏内となる10番グリッドを確保した。
<Sun.>
■Race
今シーズンは、昨年まで当たり前のように実施され、SUPER GTの名物のだった”ピットウォーク”が一度も実施されていない。そこでこのレースでは、サーキットを訪れた1万6500人のファンの中から、抽選で選ばれた50名にピットレーンを自家用車で通過しながら各チームのピットを見学してもらう、”ドライブスルーピットウォーク”と呼ばれる新たなイベントが実施された。新しい生活様式を採り入れた新しい観戦スタイルに、50台の車に乗り込んだラッキーなファン達だけでなく、それを迎えるチームスタッフ達の表情もほころんだ。
今年が最後の実施とも言われる航空自衛隊松島基地所属のF-2B戦闘機によるウェルカムフライトの余韻が残るなか、チームは日曜午前11時40分からのウォームアップ走行に臨んだ。いつもどおりスタートを担当する片岡選手はこの20分間のセッションで8周を走行し、決勝に向けたマシンバランスの最終チェックを行う。1分50~51秒台のレースラップが期待できるペースを刻み、「ようやくそこそこのバランスが見つかった」と、前日の不安から一転、決勝レースへの期待が高まった。
13時、63周300kmの決勝レースがスタートする。片岡選手は、8番グリッドに着くはずだった5号車(マッハ5G GTNET MC86 マッハ車検)が直前のトラブルによりいなくなったスペースを使って、オープニングラップから果敢にアタックし、18号車と31号車を仕留め7番手でコントロールラインを通過していく。さらにフロントロウ2番グリッドからスタートした244号車が、前戦でのクラッシュに起因する車体交換によるペナルティストップ15秒を消化するためピットロードへ向かった事で、4号車は2周目に6番手へ浮上した。
路面温度は前日午後とほぼ同様の29度で、事前の想定どおりのコンディション。片岡選手は、12番手スタートから追い上げてきた55号車(ARTA NSX GT3)をしっかり抑えつつ、5周目に1分50秒466の自己ベストを刻みながら前を行く25号車を追う。
チームは過去、セーフティカー(SC)に泣かされ続けてきたこともあり、特に今シーズンは規定周回数到達と同時にピットインしてドライバー交代を行う”ミニマム”作戦を採り続けている。その結果、直前の第6戦でもSC出動タイミングによりレース結果に良い影響を受けることができた。今回も同様に”ミニマム”でピットインを行い、且つタイヤ無交換作戦が想定されるブリジストン勢に置いていかれないよう、できる限りピット作業時間を短く抑えるために左側2輪のみの交換を予定していた。
それを念頭に、左コーナーは徹底的に”頑張らない”走りでタイヤを労り続けた片岡選手は、それでも8周目の1コーナーで25号車をオーバーテイクして5番手へ。省エネモードながらポジションを稼ぐ、さすがの”もて岡”っぷりを披露する。
その後も安定したラップタイムで5番手を維持し、GT500クラスのピットウインドウが開いた21周時点、GT300クラスの19周目で早々とピットへ滑り込む。チームは作戦通り左2輪のタイヤ交換を済ませて谷口選手を26番手でコースへと送り出した。
その直後、V字コーナー進入右側に、スタート前からトラブルを抱えていた5号車がストップする。車両回収が必要との判断から、21周目にSC導入が宣言された。これでピットでのタイヤ交換とドライバー交代を終わらせた消化組と未消化組で勝負の明暗が大きく分かれる。ミニマム作戦を採って数少ない消化組に入った4号車グッドスマイル 初音ミク AMGは、その恩恵を最大限と言っていいほどに受け、実質首位に浮上しただけでなく、大半の未消化組チームに対して巨大なリードを築くことになる。
27周目のリスタート後、前方の車両が続々とピットへ向かうと、29周目に久しぶりのトップランを手にした谷口選手。未消化組はすでにコース半周以上も後方へと下がり、実質のトップ争いは同じくミニマム作戦を採って消化組に入っていた56号車(リアライズ 日産自動車大学校 GT-R)との一騎打ちとなる。56号車は今シーズンの性能調整で恩恵を受け、驚異的なストレートスピードを誇るNISSAN GT-R NISMO GT3。
谷口選手はこの時、「優勝争いの権利は2台。なんで2台なんだ、ウチだけで良かったのに(笑)」と内心で思いつつ、ストレートスピードでは勝ち目の無いGT-Rを抑え込む決意のもと、レースがまだ半分以上残っている状況ながらペースを上げる。しかし29周目に1分50秒270のベストタイムを記録した後、周回遅れ車両に行く手を遮られ、56号車に追いつかれてしまう。
31周目、ダウンヒルストレートで56号車に並ばれサイド・バイ・サイドに。そのまま90度コーナーに進入し、セカンドアンダーブリッジから最終のビクトリーコーナーまでアウト側を並走してなんとか56号車の先行を食い止める。ボディをぶつけ合う熾烈なバトルでサーキットのファンやTVの視聴者を沸かせるも、ストレートスピードに勝るGT-Rはやはり抑えきれず、2コーナーの先で遂に先行を許してしまう。
2位にポジションを落とした後も、谷口選手はチェッカーまでの残り長いスティントを1分50~51秒台を外すことなく56号車を追い続けた。一旦は離された56号車に、残り数周となる56周目には1秒以内にまで詰め寄るも、GT500クラス車両との絡みもあってオーバーテイクまでには至らず、2位のまま60周のフィニッシュラインを通過した。
今季最上位となる2位を獲得して2戦連続で表彰台に上がった2人は、この結果ドライバーズポイント15点を得て、シリーズランキングで首位から20点差の8番手に浮上した。今シーズンのチャンピオン獲得の可能性を残すのは、56号車(56点)、65号車(51点)、11号車(43点)、52号車(41点)、61号車(41点)、55号車(41点、第7戦負傷欠場の高木選手は38点)、そして4号車(36点)の7台。4号車がチャンピオンを獲得するには、最終戦でポールポジション(1点)+優勝(20点)で、且つライバル勢は無得点という「首の皮も1mmぐらいの超薄皮(片山右京監督)」の、奇しくも昨年と同様の条件を満たす必要がある。しかしチームは3位、2位と来て、残すポディウムは真ん中だけという上り調子。大逆転チャンピオンを狙って最終戦の地、富士スピードウェイに乗り込む決意だ。
■チーム関係者コメント
課題はやっぱり予選ですね。今回の予選も本当にギリギリで、谷口も片岡もQ1は通れなさそうだからって譲り合ってました(苦笑)。でも開けてみたら見事にQ1を通過して10番グリッドが獲れて良かった。エンジンパワーの問題はすごく大きいけど、その中でもこの車の使い方にまだ良くできる余地が残っているのかもしれないです。決勝は、本当は無交換作戦で行きたかったけど我々にはタイヤ無交換はどうしても選べす、作戦は出来るだけタイヤを守りつつミニマムで入って、2本交換と決めていました。直線が遅くてオーバーテイクはできないから、ピット後にどれだけ良い場所で出すかがポイントでした。前にさえ出せれば、谷口選手が「死んでも守る」って言ってたので。結局不運もあって56号車は抑えきれなかったですけどね。でも、これで表彰台3位、2位と連続で獲れました。残るは1位だけ、ですよね。
予選ではシングルグリッドを狙いたかったけれど、どうにかQ1を通れた感じに。でもタイヤと気温も合っていたし、レースペースは前回のように良さそうだなとは思ってました。決勝は最低でも3位狙い。ペース良く追い上げられて、4番手、5番手のクルマが見えてきたところではあったけど、予定どおり早目でピットに入れたら今回もまたセーフティカーがラッキーで。周回遅れに引っかかったロスがなければ56号車も抑えられたのかなぁとも思うけど、ストレートスピードがあまりにも違うのでやっぱり厳しかったかな。でもとにかく、やっぱりあのふたりのドライバーは凄いですね。前半タイヤを持たせながら順位を上げてきた片岡も、後半56号車を追いかけ回した谷口も、本当に素晴らしかった。
今回も珍しくセーフティカーが良い方にどハマりしてくれて、56号車とサシの勝負に。僕が前にいたからなんとか抑えたかった……。その僕の譲りたくない気持ちがだいぶカメラに抜かれてたらしいけど(笑)、そもそもがラッキーで得た表彰台の位置なんだけれど、でも……やっぱり抑えたかった。この結果は、100のうち20嬉しくて、80は悔しいな。クルマのセットアップも方向性を変えてだんだんまとまってきたけど、アベレージはそこそこでも、相変わらず1発の速さが無い。レースで厳しいのは変わらないですね。今回の結果を受けてチャンピオン争いに辛うじて残れたけど、本当に首の皮一枚。最終戦はまずはポールポジション目指します。
公式練習は苦しみながらも、AMGとチームで力を合わせてセットアップを進めた。その結果、レースペースには自信を持てたけど、前の車を追い越すのはやっぱり難しいなと。今回は2本交換作戦だったので、僕のスティントは徹底的にタイヤ温存作戦で走ったんだけど、結果的にそんなに上手く行く事があるのかっていうタイミングでまたSCが出てくれた。実質同一ラップが2台しかいない、どう転んでも2位にはなる展開。でも2位にしかなれなかった(笑)。正直悔しいですけど、2戦連続で表彰台を獲ったことでチャンピオンの可能性を残して最終戦に行けるようになった。諦めずに頑張りたいなと思います。