GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 2
2023 AUTOBACS SUPER GT Round2 FUJIMAKI GROUP FUJI GT 450km RACE
会期:2023年05月03日~04日
場所:富士スピードウェイ(静岡県)
観客:予選31,600人 : 決勝48,600人
予選:3位
決勝:リタイヤ
獲得ポイント:0Pt
シリーズ順位:16位(2Pt)
コロナ禍が終わりを迎える2023年のゴールデンウィーク、SUPER GT 2023第2戦が快晴の富士スピードウェイで満員の観客を迎えて開催された。長らく続いた各種の感染症対策が解かれた大型連休は、全国の観光地で多くの人出が予想されており、このレースも前売り券が完売となっていた。
今大会は前年度から採用されている450kmの耐久フォーマットが適用される。このフォーマットでは、決勝レース中に『最低2回の給油』(セーフティカー運用中の給油はカウントしない)を行い、2人のドライバーのいずれもレース距離の1/3以上を走行することを義務付けるルールとなっている。2回のピット作業をいつどんな内容で行うか、ドライバー交代はいつ行うか、ピットインの後にどのポジションで走ることを狙うかなど、幅広い視野で作戦を練る必要があり、耐久レースの醍醐味が詰まったフォーマットと言える。
このレースでのMercedes-AMG GT3のBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)は、車体側のBoP重量は開幕戦より15kg増の『50kg』、これによる総重量は1335kgとクラス最重量級となる。これに加えて4号車は、前戦で獲得した2ポイント分×3のサクセスウエイト(SW)6kgを搭載する。エンジン側は吸気リストリクター径が前戦の34.5mm×2から、同36mm×2へと拡大される。1.5kmの国内サーキット最長のホームストレートを誇る富士スピードウェイ恒例の措置で、他サーキットでのBoPに比べて加速力、最高速ともにMercedes-AMG GT3の戦闘力を発揮しやすいメニューだ。それでもクラス最速とはいかないものの、チームにとっては勝ちを狙えるレースになる。
5月3日(水・祝)【公式練習、公式予選】
天候:晴れ
コース:ドライ
気温/路面温度 GT300 Q1開始時20℃/32℃
Q2開始時20℃/36℃
Q2終了時19℃/35℃
予選日は春にしては珍しく、午後まで富士山がくっきりと見える快晴のコンディションとなった。
午前9時5分、公式練習が開始された。気温18℃、路面温度33℃。走り出しを担当する片岡選手はセッション開始とともにコースインし、連続周回へと入っていく。
片岡選手は持ち込みセットの感触やタイヤと路面のマッチングを見つつ、トップ5圏内の好タイムで周回を重ねていく。計測6週目にその時点で2番手となる1分36秒696を記録して一度ピットへと戻ると、異なるタイヤセットで再びコースへ向かう。そのアウトラップで5号車(マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号)がコース脇に止まったことで赤旗が掲示されるも、再開後の13周目には1分36秒395までタイムを更新していく。
ここからはロングランのペース確認を進め、車両バランスの微調整やタイヤ確認なども経て、1分38秒台の安定したラップを刻む。そのまま35周を走り切り、谷口選手に交代。
谷口選手はGT500車両を縫って早々に1分38秒台を記録し、毎ラップ順調にタイムアップを図る。GT300クラス占有枠突入後の自身計測7周目には1分37秒782の自己ベストをマーク。その後も1分37秒台後半を重ねて公式練習を終えた。
4号車は片岡選手が13周目に記録したタイムが自己ベストとなり6番手。ふたりの総周回数46ラップはクラス最多となるなど、精力的に走り込んだセッションとなった。
片岡選手は午前11時からのFCYテストで11周、同11時25分からの久々にGSRバスも復活したサーキットサファリ枠でも13周の周回を重ね、それぞれ1分37秒台の5番手、3番手タイムを記録して、午後の予選に期待を抱かせるパフォーマンスを披露した。
午後3時15分、公式予選Q1GT300クラスA組がはじまった。組み分けはランキング順に振り分られており、今回GSRはA組からの出走となる。気温は20℃まで上がるが、路面温度は32℃とわずかに下降気味のコンディション。片岡選手はセッション開始と同時にコースインし、最初のアタックラップで1分38秒466を記録して5番手へ飛び込む。続く計測5周目に大きくタイムを削って1分36秒183とし、コントロールライン通過時点で2番手へ。これでQ1突破は確実と思われたが、手綱を緩めない片岡選手は最後のチェッカーラップで1分35秒921を叩き出し、6号車(DOBOT Audi R8 LMS)を逆転。ライバルのタイムアップもあって最終的にグループ2位のままQ2進出を決めてみせた。
GT300Q1B組、GT500Q1を挟み、午後4時08分にGT300クラスQ1A組B組の通過チーム全16台によるQ2が始まる。
谷口選手はコースオープン後すぐにコースへ向い、4周目の最初のアタックで1分38秒473をマークして3番手に躍り出る。続く計測5周目ではQ1のタイムを上回る1分35秒747を記録するが、ライバルのタイムアップに伴い10番手まで後退。続くアタックラップではセクター1、セクター2ともに自己ベストを更新できない。これが今日の限界か……と誰もが諦めかけた次の瞬間、谷口選手はセクター3を全体ベストで走り抜け、1分35秒277を記録して3番手まで浮上してチェッカーを受けた。チームはサーキットに詰めかけたファン達を大いに驚かせるパフォーマンスで、翌日の決勝に向けてセカンドロウスタートの権利を手に入れ予選日を終えた。
5月4日(木・祝)【決勝】
天候:晴れ
コース:ドライ
気温/路面温度 スタート前(13:30)22℃/38℃
中盤(14:30)22℃/39℃
終盤(15:30)20℃/34℃
ゴール時(16:15)19℃/29℃
前日続き青空に恵まれた富士スピードウェイ。朝9時からイベント広場で行われる予選トップ3ドライバートークショーでは、前日に驚異のタイムアタックショーを披露した谷口選手が登壇し、軽快なトークで会場を沸かせた。感染症対策の緩和により来場客だけでなく、チーム関係者もステージ前でトークショーを観覧することができた。
続くピットウォークでは、大勢のファンがGSRのピットに詰めかけてドライバーと監督によるサイン会に長蛇の列ができて、ここでもコロナ禍の終わりを改めて感じさせる風景となった。サイン会終了後には5月1日に誕生日を迎えた片岡選手にチームが恒例のバースデーケーキを用意し、ファンの前でお祝いした。
12時からのウォームアップ走行は、GSRスタート担当とも言える片岡選手がステアリングを握る。セッション中、他車の部品が路上に落下したことによるFCY(フルコースイエロー)が入ったが、前日のロングランペースと同様の1分38秒台でラップを重ねていく。
午後1時30分、気温22℃、路面温度38℃のコンディションの中、9台の白バイと4台のパトカーに先導されたパレードラップが始まる。続いてセーフティーカー先導のフォーメーションラップを経て、4万8000人の観客の前で、450kmのレースが始まった。
オープニングラップ、片岡選手はポジションアップを狙って1コーナーへ突入するがオーバーテイクには至らず3番手キープのまま走り抜けていく。続くダンロップコーナーで31号車(apr LC500h GT)とのギャップを詰め、最終コーナーをイン側から並んで立ち上がる。ストレートで加速のいい31号車に離されかけるが1コーナーのブレーキング勝負で鮮やかなオーバーテイクを披露。早くも2番手に浮上する。
その後は1分37秒~38秒台でラップを重ね、後続とのギャップを徐々に広げて行くが、首位を行く56号車(リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R)のラップペースは片岡選手を上回っていた。56号車とのギャップは10周目に5.930秒、12周目に6.320秒、14周目に6.483秒と、徐々にマージンを広げられていく。
この状況を受けたチームは、15周目に最初の義務給油とタイヤ交換のためピットインを指示。ドライバーは片岡選手のままでコースへと復帰させた。
3分を切る迅速なピットレーン・ロスタイムながら、スタート直後にスプラッシュアンドゴーでピットアウトしていた数台に前に出られ、ポジションは20番手まで下げることになった。しかし、コースに戻ったポジションの目の前はオールクリア。いわゆる”クリーンエア”の中で復帰することに成功し、ここから追い上げと逆転の期待を背負って片岡選手のスパートが始まる。
20周目、21周目には連続して1分37秒台を記録しつつ50号車(ANEST IWATA Racing RC F GT3)をオーバーテイクする。ライバル陣営のトラブルやルーティンピットインなどを受け、ひとつ、またひとつとポジションを回復していく。
28周目には48号車(植毛ケーズフロンティア GT-R)も仕留めて11番手、続く30周目にはいよいよトップ10圏内の8番手までカムバックする。
30周目までピット作業もタイミングを引張った56号車は4号車の5秒前でコースに復帰。25号車(HOPPY Schatz GR Supra GT)を挟んで、コース上で目視できる位置関係に。相手のレースペースを考えれば一刻も早く背後に近づく必要がある……そう考えた矢先の39周目だった。
中継映像が捉えた4号車グッドスマイル初音ミクAMGは、コカ・コーラコーナーで明らかに不穏な挙動を見せてアウト側にコースオフ。最小限のタイムロスで100Rへ復帰したものの、直後よりMercedes-AMG GT3の車体からはうっすらと白煙が上がり始める。
「やりすぎました。あれはコカ・コーラコーナーの外側で壊してるんじゃなくて、内側で壊してる。(前日からコーナー内側の)ポールが無くなっていて、みんなどんどんショートカットしていた。こちらも『まだ行ける、まだ行ける』って、かなり深めに行ったときに縁石の段差でオイルパンを引っ掛けた。そこでジャンプして飛び出してしまって……」と、そのときの状況を振り返った片岡選手。
クラックから霧状にオイルが漏れ出している状況だったが、まだ油圧低下の警告もなく「ミラーを見ても液体は出ていないし……。走れるなら行こうと思ったけど、多分……だんだん圧が掛かって漏れる量が増えて来たんでしょう」と、40周目には1分39秒台へとペースダウン。42周目にピットへ戻り、ピット前でメカニックがクラックとダメージを確認した。チームはリタイヤを決断してレースを終えた。ただ”勝ちたい”という強過ぎる攻めの姿勢が招いた無念の結果であった。
■チーム関係者コメント
今回もいろいろな準備をして、段取りも良く、決勝前日もピット戦略を”存分に”話し合いました。どれだけクリアなところに送り出すかという瞬間的な判断や、新しいシステムが入ったことによって──もちろんエンジニアも優秀なので、それがビタッと決まったワケです。これで1ピット目はオールクリーンのところに出せていたし、状況も良かった。それだけに……惜しかったですね。結果的には縁石の跨ぎすぎで、オイルパンを割ってしまった。富士は性能調整的に速さも出しやすい、そういうコースだったので残念です。どこまで行っても最終的にはクルマに充分な速さが必要で、そこにもうひとつ速さがないと、今日も勝負権としてはギリギリだったかな、とは思っています。ただ、こうして積み重ねた仕組みそのものは同様に使えますから、次戦、頑張ります。
予選はドライバーの実力で出した結果。逆に苦しいのは分かっていたから、決勝も粘って作戦で良いポジションをキープしていた。結果に関しては、終わっちゃったことだから考えてもしょうがない。56号車が速かった分、ピットの作戦では一応、全部詰められましたけどね。それですぐ後ろに出て来れていた。そういう良いところもあったけれど、ちょっと反省点もあったので。今はチーム自身がいろんなツールを使って判断したりなんかして、どんどん良い方向に行っている。そこら辺はチーム自身は進化しているし、強くなっているかな。でもまだ何かは起きるから、そこを努力するしかないですよね。去年、鈴鹿で勝ったときには恥ずかしいけど、あんなに調子良くなるとは思ってなかったぐらいで。本当に何が起きるかわからないからね。
富士は勝負権のあるサーキット。周囲に対して有利……とは思わないけれど、ある程度は戦えるサーキットと思ってました。予選も3番手まで行けて。ライバルはもちろん速いだろうから、そう簡単に優勝なんて獲れるとも思っていないけれど、展開次第では『なくもないだろう』と。でもレースをやってみたら案の定、展開的には上位勢がやはり速くて。今、タラレバを言って生き残っても、4位、5位辺りなのかな、という気はします。狙いたかっただけに、落胆は大きい。上の3チームが鉄板の速さだったから、4位、5位ももちろん良いけれど、でもやっぱり欲しいのは優勝で。もちろん片岡も優勝を目指して頑張った結果。これもレースかなと。鈴鹿はまた性能調整が元に戻るし「優勝します!」とはとてもじゃないけど……。次の富士に期待したいなと思いますね。
ファンの皆さん、チームのみなさん「申し訳ございません」というのが正直な気持ちです。レース的にも、勝ちを意識するとスピードが足りなくて。25号車やその前にいる56号車のペースも見えるし、ちょっとでも詰められるところ……ということで、セクター3も含めてカット出来る縁石はすべて攻めていました。リスク負ってるところはキチンと差が詰まるし、こちらも(勝利に対し)イージーな気持ちはなかった。岡山でもドライブスルーがあり、今年は『頑張ろう、頑張ろう』が裏目に出ている。ただ気持ち的にもすごく乗れているし、パフォーマンスも……1番じゃないですけど、高いところにはいる。やはりチャンピオンが獲りたいという意識が、若干空回りしたこの2戦だったので、次の鈴鹿ではそのやる気をしっかり地面に伝えて、良い結果を出したいなと思います。