GOODSMILE RACING & TeamUKYO RACE REPORT 6
2023 AUTOBACS SUPER GT Round6 SUGO GT 300km RACE
会期:2023年09月16日~17日
場所:スポーツランドSUGO(宮城県)
観客:予選9,400人 : 決勝18,500人
予選:10位
決勝5位
獲得ポイント:6Pt
シリーズ順位:14位(15Pt)
GOODSMILE RACING & TeamUKYOは、スポーツランドSUGOで2018年、2019年と2年連続で表彰台(3位/2位)を獲得した後、2020年のコロナ禍による開催中止を経て、2021年はレース中盤まで表彰台圏内で戦うもパンクにより23位、そして昨年2022年は谷口信輝選手が決勝前日の急病により入院した為、片岡選手が1人で走行できる上限まで走って26位完走と、直近2年は無念の結果に終わっている。
しかし、チームが使用するMercedes-AMG GT3は中高速コーナーの多いSUGOのようなサーキットを得意とする車輌であり、チームにとっても苦手なコースではない。しかも今シーズンはこの第6戦まで残念ながら表彰台無しで来ている事もあり、戦績によるサクセスウエイト(SW)はわずか27kg。100kgを積むマシンもある中、チームにとっては上位入賞のチャンスだ。
なお今レースの総距離は300kmで義務ピットストップは1回。またMercedes-AMG GT3に対するBoP(性能調整/バランス・オブ・パフォーマンス)は、車重は最低重量の1285kgにBoP重量の40kgを載せ1330kgで、エンジン性能はいつも通り34.5mmの吸気リストリクターが課されてパワーが制限されている。
9月16日(土)【公式練習、公式予選】
天候:曇り
コース:Q1 ウエット/ドライ、Q2 ドライ
気温/路面温度:
Q1開始時 26℃/29℃
Q2開始時 28℃/30℃、Q2終了時 27℃/30℃
予選日朝は9時15分より公式練習セッションが開始された。トラック上には前夜の雨によって濡れた個所が残っていた為、WET宣言が出されていた。
気温23℃、湿度は92%で、スポーツランドSUGO全体を霞が覆っていた。天気は悪くないのだが湿度が高すぎるせいか路面はなかなか乾かず、GT300、GT500クラスともピットで待機し様子を見るチームが複数見られた。路面温度は25℃。
そんな中、ウエットタイヤを装着した4号車グッドスマイル初音ミクAMGがコースインする。ステアリングを握る片岡選手は2周目に1分27秒142を記録し3番手とすると、ここから1分32~33秒台で連続周回、15周を走ってピットへと戻った。
コース上はドライアップが進み、10時前にはレコードライン上がほぼ乾いたため、片岡選手はここでスリックを装着する。コース復帰後の周回で1分20秒台に入れると、計測20周目には1分19秒743、続く21周目で1分19秒458まで詰めて自己ベストを更新。この時点で11番手につける。
ここから1~2周のショートランで車両バランスの微調整を繰り返した4号車だったが、混走時間帯終了を前に48号車(植毛ケーズフロンティア GT-R)がハイポイント手前のS字コーナー出口でクラッシュ。この車両回収とバリア修復作業のため赤旗が掲示される。
セッション再開はGT300占有走行開始の午前10時40分となり、ここで谷口選手にスイッチ。昨季の予選以来のSUGOとなったが「別に何かブランクだとか『久しぶり』って気持ちも 特になく。よく知ったSUGOを走って」タイヤのウォームアップが進んだところで1分19秒568までタイムアップ。ここからは午後の予選に向け最後のアタックシミュレーションを……という場面で、今度はSPアウトで31号車(apr LC500h GT)が姿勢を乱してバリアに衝突、そのままセッションは終了となった。4号車も前半の片岡選手のタイムにより16位で公式練習を終えた。
午後2時40分予選開始。今回もGT300の予選Q1はランキング順で2組に振り分けられ、GOODSMILE RACING & TeamUKYOはB組に出走する。公式練習の混走時間帯をドライブし、占有走行枠終了後のFCYテストでは3番手を記録していた片岡選手がQ1アタッカーを担当する。しかしQ1A組の走行開始直前、雨が降り始めた。
雨はすぐに止んだもののWET宣言が出されたため、A組では急なコンディション変化に対応しきれなかったチームが出ていたが、4号車は午後2時58分からのB組出走前にウエットタイヤを履き終えて落ち着いてコースへと向かって行った。
路面温度は29度。アウトラップで路面の状況を見極めた片岡選手は「すぐ判断できましたし、それは正解だったなと思います」と間髪入れずにスリックタイヤへの交換を決断。アウトインでロスタイムを最小限に留めた4号車は、4周目に1分20秒119、続く最終アタックで1分19秒340までタイムを縮め、5番手でQ2に進出した。
午後3時33分からのQ2に挑んだ谷口選手も、セッション開始と同時にコースに向かい、全体10台目でコースインすると、自身4周目の時点で全セクター自己ベストの1分18秒803を計時。ここから1分18秒739とタイムを上げてトップ10圏内に進出すると、チェッカーラップではセクター1とセクター3でさらにベストを刻み、1分18秒471まで詰め6番手に躍進する。
首位の96号車(K-tunes RC F GT3)から20号車(シェイドレーシング GR86 GT)、61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)とダンロップタイヤ勢がトップ3に並び、4番手にブリヂストン装着の52号車(埼玉トヨペットGB GR Supra GT)、そして前方にはSWが100kgの56号車(リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R)が居座るも、背後で同じく100kg搭載の18号車(UPGARAGE NSX GT3)には0.001秒差で競り勝った。
しかしコースイン直後にレースコントロールより「コースイン時のホワイトラインカット」を通達されていた為、そのペナルティによりベストタイムは抹消された。翌日はセカンドベストによる10番手で決勝スタートを迎えることとなった。
9月17日(日)【決勝】
天候:曇り
コース:ドライ
気温/路面温度:
スタート前(13:23)28℃/33℃
序盤(14:28)28℃/33℃
中盤(15:32)27℃/31℃
終盤(15:58)26℃/30℃
ゴール(16:24)25℃/30℃。
決勝日の前夜はふたたび雨が降り、朝チームがサーキット入りした後も小雨がぱらつくぐずついた天気となった。正午から始まったウォームアップ走行では路面状況とクルマのバランス確認が焦点に。ここで片岡選手は12周を走破し、1分21秒742で全体18番手で走行を終える。
スタート進行中のグリッドでも、ときおり雨粒が感じられる薄暗い空模様……。午後1時30分からの決勝では、この急な天候の変化と、それに伴う事故に起因したFCY(フルコースイエロー)やSC(セーフティカー)などのアクシデントが予想された。そうした偶発的な事態での正しい判断が求められるとともに、勝負権喪失を避ける意味でもドライバー当たりの最低走行義務となる『レース距離3分の1』を経て交代する”ミニマム”の戦略が基本線に据えられた。
パレード&フォーメーションラップを前に、気温28度ながら路面温度は33度と、この週末初の30度越えを記録するが、湿度は83%とやはり「いつ雨が来てもおかしくはない」条件となる。
レースがスタートするとファーストスティント担当の片岡選手は、2周目突入の1コーナーで仕掛け27号車(Yogibo NSX GT3)をオーバーテイク。早くもシングルの9番手に浮上していく。
ここから1分21~22秒と想定どおりのレースラップを重ねた4号車だが、次のターゲットの10号車(PONOS GAINER GT-R)に前を塞がれ、秒差圏内ながら耐える時間帯が続く。それでも片岡選手は相手のタイヤがドロップダウンする瞬間を待ち、プレッシャーを掛け続けながらも自身はタイヤのマネジメントに集中した。GT300クラスのピットウインドウが開く直前の21周目にオーバーテイクを決め、これで8番手に進出。背後にいた87号車(Bamboo Airways ランボルギーニ GT3)も、この動きに乗じて4号車に追随してくる。
その2周後には、上位を行く52号車がルーティンの作業に向かい7番手へ。さらに2周後には96号車も同様にピットレーンに飛び込み、これで4号車は6番手となる。チームは27周目完了で片岡選手を呼び戻し、ここでコースアウトサイドとなる車両左側の2本交換を決行。迅速な作業で送り出すとともに、谷口選手のマネジメントとレースラップにすべてを託す。
タイヤ交換2本分の時間短縮効果もあり61号車を出し抜くことに成功した4号車だが、アウトラップでは冷えたタイヤで最終コーナーイン側を20号車にこじ開けられ「インに行きたくても行けず。ダスティなゾーンに行って曲がれなくなり、大きくロスって順位を落とし」てしまう一幕も。
そんな復帰後の15番手から「いざ前を追わん」とした34周目。GT500クラスの車両がホームストレート上で他車と交錯し、グランドスタンド側のガードレールに大クラッシュ。車両が千切れるほどの衝撃で大破し、SC出動からすぐさまレッドフラッグに切り替わる。
FRO(ファースト・レスキュー・オペレーション)による救出作業の続くトラック上で、1コーナーに停車した隊列はそのまま約1時間の中断を経ることに。午後3時20分にSC先導でレースが再開され、そこから約5周を経た42周目にSCが退き勝負が再開される。ペースの遅い周回遅れ車両の影響で、目の前にいた10号車がS字コーナー入り口で減速したことで、谷口選手はアクセルを踏めず、さらに周回遅れ車両を避ける為に左2輪をアウト側のダートに落としながら走行させられる。その隙に後ろから今大会からBoP重量が増え、サクセスウェイトを69kgも積むがここSUGOでも無類の速さを見せる61号車に先行を許してしまう。
しかしセカンドスティントはまだ序盤。「それはそれで切り替えて。まだ長いし、前回の鈴鹿でもタイヤマネジメントしたら最後まで速く走れるとわかったから」と、谷口選手は左右でマイレージの異なるタイヤをケアしつつマネジメントに集中。56号車のペナルティで12番手にポジションを回復し、その後もトラフィックのなか1分22~23秒台を精度高く並べていく。
53周目には9号車(PACIFIC ぶいすぽっ NAC AMG)が、続く54周目には長らくルーティン作業を引っ張っていた暫定首位の87号車がピットに入り、ここで4号車はトップ10圏内にカムバック。その前方ではトップ5を争う集団が数珠繋ぎでの密集バトルを繰り広げる。
前方の集団に追いついてきた61周目に、GT500の集団に道を譲った際、最終コーナーでタイヤカスを拾って再びコースを飛び出しそうなったことで、再びギャップが開いてしまった。それでも、諦めずに前とのギャップを詰めた63周目に96号車を仕留めて9番手へ。さらに前を行く65号車(LEON PYRAMID AMG)や、11号車(GAINER TANAX GT-R)、10号車のGT-R陣営を交えた4車バトルに持ち込んでいく。67周目にブリヂストン装着の65号車をパスして8番手へ挙がると、2台のGT-Rに行く手を阻まれ一進一退の攻防となる。
70周目には、仕切り直しで65号車とのMercedes-AMG GT3対決を制し8番手に上がる。さらに大幅なドロップダウンを見せる11号車もパス。そして続くラップでは10号車も抜き去り、これで6番手まで進出していく。
レース終盤の72周目でも1分21秒台とクラス最速のレースペースを刻み続ける。谷口選手は、ファイナルラップの78周目にも1分22秒073として最後までラップタイムを落とすことなくチェッカーを受けた。さらにフィニッシュ後にもドラマは続き、大逆転勝利を飾ったかに見えた18号車が「最低地上高違反」で車検失格となり、4号車は繰り上がりの5位が正式結果に。
前回の鈴鹿はなんとも”くやしい”今季最上位となったが、今回は「やれることをやった」上で、幻となった予選グリッド位置をも上回る連続5位入賞となった。
■チーム関係者コメント
セッティングだとか戦略だとか、タイヤの使い方のような細かな積み上げに関しては、全体的に上手くいったと思います。ただ、このコースに関してのパフォーマンスは他に速いチームがいましたし、またFCYを活用したチームもいました。そこはちょっと「しょうがないかな」と思っていますが、今回も前進している手応えはありましたね。結果には結びついていないですが、後半の追い上げが叶ってるというのも、事前の準備ができていた証拠でもありますし。取り敢えず、予選順位(幻の6位)まで戻れて良かったかな(後に繰り上げ5位)。本当は表彰台に乗ると、チーム皆が少し「また気持ちが戻るな~」と思ってましたが……でもそれはちょっと欲張りさんでした(笑)。次のオートポリスもまた450kmと長いですし、長い方が我々は戦えそうなので。ご期待下さい。
今回もガチャガチャとありましたが、あらゆる歯車を上手く噛み合わせていたら……と。予選でも、僕らがもし雨に祟られたA組だったら……そのグリッドポジションはわからないから、その点は運だったかもしれないけど、決勝はニュータイヤでスタート出来たかな? とか。コースの特性もありますが、中盤は車両の特性的に厳しいクルマとの勝負にもなり、さらにチームでタッグを組んでのバトルでもあったから、その点でも”肉弾戦”になったみたいで。決勝は抜きづらいコースですし、FCYやSCなんなりを考えればアンダーカット的な作戦以外に取りづらい。とくに後方からだとアンダーカットするしかない。でも500の集団を注意して見ていたら、バラけていた300の集団に捕まった。そこも反省です。
まず予選からね……。僕がちょっとやらかしてしまって『W.L.C.(ホワイトラインカット)』で6番手がなくなってしまった。決勝は片岡が頑張って良い位置をキープして走ってくれましたし、チームも作戦として「2本交換でいきます」と、ピットからいい感じに送り出してくれた。ただ1周目の冷えたところに最終コーナーで20号車にインに入られ……。そこからは気持ちを切り換えて。タイヤも左2本は換えたけど、右側は中古のまま。マネジメントしながら我慢して、最後は周囲の皆が”ヘロってきた”ときに、何とか前にいるクルマだけ抜いて6番手まで上がれた。喜んでるチームもあれば、残念がってるチームもあって。我々もどっちかと言うと残念がってるチーム。なかなか運も流れも掴めてないっていうのが正直なところで、基本は勝てるほどのポテンシャルはなかったですね。
決勝は10番手からスタートしましたが、最初のスティントは終始エンジン特性的に抜きにくいクルマに引っ掛かり。ペースは良さそうだったので、やはりそのスタートが……ホワイトラインカットがなくて6番手から出られていれば(笑)、内容もだいぶ違ったんじゃないかなと。そこは後半スティントも同じだったと思います。結局、今は自分たちのレースを全部きちんとすれば、結果的に4位を軸にその前後ぐらいだったかなと。パフォーマンス自体は上がってきていたけれど、全体的に詰めが甘くなって、結果としては「なり」の結果に……。今週も悪くはなかったけれど、それを100%の結果には持っていけず、80点、85点のレースだった。その点で今季は1回もまだ「ちゃんとレースしてない」気がするので、次こそちゃんとレースをして、表彰台には乗りたいなと思います。